2015年10月2日金曜日

石蓴

○石蓴(あおさ)

 アオサ科の緑藻であるアオサを乾燥させた製品。太平洋沿岸や朝鮮半島をはじめ日本各地の沿岸に生育している。ヒトエグサ、またはバンドウアオとも一般的に呼ばれている。食用にされることは少ないが、養殖もされており、三重県の伊勢志摩地域での生産量は市販製品の75%を占めている。沖縄県では「アーサ」とも呼ばれている。

【生 態】

 浅瀬の岩場に付着して成長し、海水に浮遊した状態でも育つ。穴の開いた円形の平たい海藻である。そのまま食用とするにはかたいが、大量に採取できるため、乾燥させて粉末状に加工して青粉、ふりかけ、海苔の佃煮の原料として利用されている。

 晩秋から初春にかけて採取されるが、特に3月頃が多い。大量繁殖し、沿岸に漂着したアオサは飼料などに利用される。三重県の伊勢志摩湾、千葉県の夷隅川、沖縄県などが主な産地である。

【栄養と機能性成分】

 βカロチン、ビタミンB2、葉酸、カリウム、マグネシウムなどが他の海藻同様に多い。

【保存と利用方法】

 湿気を吸湿しやすく、また、変色もしやすいので開封後は冷蔵庫保管が望ましい。特有の味と香りをもっているので、そのままお好み焼き、ふりかけ、海苔佃煮、酢の物、味噌汁などに利用される。

2015年10月1日木曜日

蕨粉

○蕨粉(わらびこ)

 山野に自生するイノモトソウ科のシダであるワラビの根からとった澱粉のこと。岩手県、秋田県、岐阜県、高知県の山間部でごく少量生産されたが、現在はほとんど生産されていない。和菓子のわらび餅などに使う。

2015年9月27日日曜日

レンズ豆

○レンズ豆

 マメ科の一年草であるヒラマメの種子を乾燥させた製品。中米や南ヨーロッパ、イタリア、西アジアなど、さまざまな地域からの輸入品が多く赤レンズ豆と青レンズ豆がある。インドのほか、世界各地でスープの中に入れるなどして日常的に食べられている。

2015年9月24日木曜日

餅とり粉

○餅とり粉

 コーンスターチ、小麦粉澱粉、片栗粉などの澱粉を混合した製品。餅つきをするときなどに、餅が手につかないようにするために使う。

2015年9月22日火曜日

麦焦し

○麦焦し(むぎこがし)

 イネ科の越年草であるオオムギを煎ってから粉にした製品。関西では裸ムギで製造する。地域によって異なる呼び名があり、関西では「はったい粉」、日本海側では「こうせん」などと呼ぶ。砂糖を加えたそのまま食べたり、水またはお湯で練って食べる。

2015年9月16日水曜日

干し湯葉

○干し湯葉(ほしゆば)

 投入を煮立て、表面にできる薄い膜をすくいとったのが生湯葉で、乾燥させた製品が干し湯葉である。湯葉の歴史は古く、いまから1200年前、最澄が中国から持ち帰ったといわれている。

 日本に最初に湯葉が伝わったのは京都の比叡山の天台宗総本山延暦寺で、精進料理の材料として使われ、坊さんにとても好まれた。江戸時代の文献「豆腐百珍」(1782年)には湯葉料理が記載されており、いろいろな種類が作られ一般庶民にも広まった、とある。

 保存性が高く、精進料理や会席料理ならではの食材として大豆加工品の中でも最高級品である。近年は和食だけでなく、洋食などにも健康的な食材として利用されている。

【名 称】

 豆乳の表面がしわになり姥の顔に似ているので「うば」と呼ばれた。また、豆腐の「うわもの」の音が濁って「ゆば」になった、ともいわれている。

【製造方法】

①ダイズをひと晩水に浸けて戻す。
②水を注ぎながら挽く。
③大釜で煮て、布でこして豆乳を作る。
④深さ5~10cmくらいの木枠で仕切った鍋に移し、微調整された火にかけ熱を加えて、じっくりと皮膜を作り上げる。
⑤皮膜を竹串でそっと引き上げる。引き上げは湯葉の張り具合や火加減を見ながら、早からず遅からず絶妙なタイミングで1枚1枚ていねいにそっと引き上げる。職人技である。
⑥半乾燥のところを切り、成形してから温風乾燥する。

【主な種類】

 干し湯葉には、さまざまな形に加工した製品があり、以下に紹介する製品のほかにも、小巻湯葉、結び湯葉、竹湯葉、平湯葉などがある。

●大原木湯葉

 真ん中を昆布で結んだ京湯葉。湯葉と湯葉の間にだしがしみこんで旨味をひきだす。

●巻き湯葉

 湯葉を幾重にもまいてつくる。水分を含むと広がってボリューム感が出る。

●蝶々湯葉

 蝶々のようなかたちに成形した湯葉。料理の華添えになる。

●京湯葉

 京都周辺で生産される湯葉。仕上がりが平たいので板湯葉として多く加工され、寺院、京料理店や土産物として販売されている。

●日光湯葉

 日光周辺で生産される湯葉。京都で作られていた湯葉は、日光開山のときに修験者たちによって日光に持ち込まれ、その消化吸収と豊富な栄養から、貴重なタンパク源として江戸時代に二社一寺に供え物として納められたという。日光湯葉は「湯波」と書くことが多い。

【栄養と機能性成分】

 湯葉は、豆乳からつくるので大豆加工品と同じ栄養価があり、消化吸収がよく少量でも栄養価が高い。鉄分のほか、亜鉛、カリウム、ミネラルなどが豊富で子供や高齢者の栄養補給に適している。

【保存と利用方法】

 常温で3ヶ月くらいを目安に保存する。強い紫外線に当たると酸化してしまうので、冷暗所で保管する。乾燥したままお吸い物に直接入れたり、弱火でゆっくり火をとおせばよい。その際、湯葉が吸う分、煮汁をやや多めにする。強火で火をとおすと身がかたくなるので注意する。

2015年9月15日火曜日

干し大根

○干し大根(ほしだいこん)

 アブラナ科の二年草であるダイコンを千切り、あるいは薄切りにして乾燥させた製品。冬場につくり、冬の生野菜が不足する時期が最需要期となる。保存食として長年親しまれている製品で、北から南まで日本各地でつくられており、地方独特の作り方や食べ方がある。秋の台風や気候条件で生産量が大きく変わるため、年間の価格が大きく相場に反映される製品である。

 干し大根の中でも全国的に流通しているのは切り干し大根である。生産の中心は千葉県、愛知県の渥美半島、宮崎県と移動し、それにともない干し大根にむく青首大根も移植されてきた。切り干し大根は、江戸時代初期に凶作対策として開発された保存食であった。現在市販されているものは、宮崎県産が全体の90%を占めている。

【名 称】

 切り干し大根と関東地方では呼ぶが、千切り大根と呼ぶ地方もある。地方によって呼び名が異なる。

【生 態】

 大根は3世紀頃、中国から朝鮮半島を経て日本に持ち込まれたといわれている。中国の大根は大型で水分の多い華南系と、皮に色があり澱粉質が多く耐寒性のある華北系がある。この2系統とも日本に伝来し、時代とともに交雑が進み各地区の気候風土に合うさまざまな品種が誕生した。

 その中でも、干し大根に向くのは青首大根である。華北系の子孫であった愛知県の宮重大根を改良した品種であり、成長が早く病気に強い。また、澱粉質が多く水分が少なく、大根に鬆が入りにくいことから乾物加工に最適な品種である。乾物に加工する前の年の秋(8月後半~9月上旬)に畑を整地し、青首大根の種をまき、12月下旬~2月中旬頃に収穫する。

 宮崎県の北部地区、国富、西部、綾町、新富、宮崎市、尾鈴などで約80%生産されており、田野町、清武、木花地区でも約20%生産されている。山間部でも作付されているが、特に北部地区は平野部であるため作付面積が広く、風が強いため異物の混入が少ない。

 南部地区は切り干し大根以外につぼ漬大根も生産しており、材料であるダイコンの質が高いため干し大根の品質もよい。また、北部地区より約5℃前後気温が低いため乾燥作業の効率がよく、色が白く仕上がりダイコンの旨味が表面に出にくいため、よいものができる。

【製造方法】

 宮崎県で行われている天日干しの製造方法は次の通り。

①収穫したダイコンを洗い、青首と尾をカットする。
②千切りスライサーで3mmにカットする(地区によってサイズは異なる)。
③外気温が5℃前後の冬の寒い時期、霧島の寒風が吹く日に畑に木材を組んでその上にむしろを敷いてカットしたダイコンを広げ、日光と寒風で1~2日天日乾燥させて収穫する。

【おもな種類】

●ゆで干し大根

 ゆがき大根とも呼ばれる。長崎県の五島列島や西彼杵半島の西海市の特産品で、大蔵大根を太めの千切りにしてゆでて天日干しした製品。ソフトな食感と甘味があり、味、風味ともによく、保存性も高い。

●蒸し干し大根

 青首大根を蒸してから干した製品。ゆで干し大根同様、長崎県の五島列島や西彼杵半島の西海市で生産されている。

●花切り大根

 ダイコンを薄く銀杏形に切って干したもので、徳島県の特産品。

●割り干し大根

 ダイコンを太く縦に裂いて長く紐に吊るし、干した製品。岡山県では割り干し大根を小花切りにして、はりはり漬けなどに利用される。

●寒干し大根

 輪切りにしてゆでたダイコンを吊るし、干しあげた製品。寒い地域でのみ生産される。新潟県などでは薄い銀杏形に切って干したものを寒干し大根と呼んでいる。

●丸切り大根

 ダイコンを薄い輪切りにし、干した製品。西日本や瀬戸内などの特産品である。

●氷大根

 夜間氷点下になる地域で、縦に割るか輪切りにしたダイコンを軒下などに吊るし、凍らせて乾燥干しした製品。凍み大根とも呼ぶ。雪国独特の保存食品として、福島県や山形県、中部地方の山間部などでつくられている。

【栄養と機能性成分】

 生大根より水分が減った分、成分が凝縮されているので栄養価は高く、特にカルシウム、鉄分を多く含んでいる。また、現代人に不足気味の食物繊維、カリウムも豊富。乾燥によって独特の歯ごたえがうまれている。

【保存と利用方法】

 製造後長くおくと、褐色になってしまう。これは、ダイコンの成分であるアミノ酸(アルミノカルボニル)と糖が反応し酸化してしまうためである。梅雨時期や夏にかけて変質しやすいので家庭の冷蔵庫か冷凍庫などに保存する。また水戻ししたものをきつく絞って冷凍保存しておけば2ヶ月くらいはもつ。煮物も冷凍できる。切干し大根には独特の臭いがあるが、微生物が繁殖しているわけではなく、食べても害はない。

 干し大根は、水に軽く浸けるだけで簡単に戻る。ゆで干し大根や花切り大根は加熱してあるので、戻りも早く調理も簡単である。ほかの乾物とも相性がよく、一緒に煮炊きできる。干し大根に含まれる澱粉の甘味があるため、特にだし汁とあわせると汁のおいしさが増す。

2015年9月8日火曜日

干し薇

○干し薇(ほしぜんまい)

 ゼンマイ科のシダであるゼンマイの新芽を摘み取り、煮てから乾燥させた製品。雪解けの山間地ではいち早く芽を出す山菜として法事やおせちなどに人気があり、保存食としても利用される。得に山形県、福島県、新潟県、長野県産の製品が太くてやわらかいため良品とされている。

 ぜんまいは、わらびと同様、山菜の代表的食材で人気があるが、山から採って加工、乾燥と手間がかかるため、近年は国産が少なく中国からの輸入品が多い。ワラビは原林や平地に生えるため天然の収穫量は多いが、ゼンマイは山間地に生えるため天然の収穫量は少ない。人工栽培も行われているが、時間と手間がかかるため高価である。

【名 称】

 くるりと巻いた胞子葉が丸い銭のかたちに似ていることから、「ぜんまい」と呼ばれるようになったという説や、細いぜんまいを織物や手毬の芯に使ったことから「繊巻」と書くようになり、それがなまって「ぜんまい」になったという説などがある。

【生 態】

 おもに山形県、福島県などの東北地方や、新潟県、長野県などの雪国の山間地に自生する。四国地方は、気候の関係で成長が早いので細いものが多い。

【製造方法】

 国産のほとんどが天然物で人工栽培はごく少量である。山間地で人の手によって採られている。

①収穫後すぐに綿毛を取り、大きな鍋に入れてサッと煮る。
②急速に冷やしムシロに広げる。
③天日干ししながら手で何回も何回も揉み、水分をとばす。揉むことにより繊維質の部分がほぐれひねりが加わり独特の食感がうまれる。
④天日でよく乾燥する。

【おもな種類】

 乾燥の方法によって、赤干し、青干しに分けられる。赤干しの製造方法は前述の通り。青干しとは、ゆでたゼンマイを網に広げて薪や松葉を燃やした火にかざし、煙の上で揉みながら乾燥させた製品である。赤干しは天日干ししたもので、もっともおいしいとされている。

【栄養と機能性成分】

 赤血球の材料となる鉄分が豊富で、カロテン、ビタミンKが多い。最も期待できるのは食物繊維で、動脈硬化の予防が期待できるリグニンが含まれている。

【保存と利用方法】

 湿気を嫌うので缶や瓶に入れて保存する。調理する前日から水に浸して戻しておく。多めに戻したときは冷凍すれば数ヶ月は保存できる。利用する前には、大きめの鍋に入れ熱湯をたっぷり注ぎ、フタをして2~3時間おく。赤い水が出るので捨てる。こうすることであくが抜け、やわらかく戻る。

2015年9月3日木曜日

干し椎茸

○干し椎茸(ほししいたけ)

 マツタメ目キシメジ科に分類されるシイタケを干した製品(ヒラタケ科、ホウライタケ科、ツキヨタケ科、ハラタケ目キシメジ科という説もある)。干し椎茸は乾燥により生のシイタケよりも旨味が増すため、味や香りがよい。また、天日干しすることによって、エルゴステロールという物質がビタミンD2に変化し、栄養価も上がる。

 現在、中国での生産が盛んである。中国産の干し椎茸は、日本産にくらべ乾燥しており比重が軽く、香りも弱い。近年、不正に日本から持ち出された日本国内の優良品種の種駒(椎茸菌を培養した木片)で栽培されており、安価な輸入品が増えている。これに対し日本が2001年にセーフガードを発動するなど貿易摩擦が起きたこともある。

 生のシイタケは世界各地で親しまれており、英語、フランスなどでもそのまま日本語のshii-takeと呼ばれる。フランスでは生のシイタケが一般流通しており、比較的簡単に手に入る。近年ではオランダでも栽培するようになり、やはりshii-takeの名で販売されている。

【名 称】

 名前の由来は「椎の木に多く発生する茸」だといわれている。香りがよい菌ということでかつては「香茸」とも呼ばれていた。

【生 態】

 野生では、おもにナラ、カシ、シイ類などのブナ類の枯れ木に、春と秋に発生し、高地では夏に発生することも多い。短い円柱形の柄の先に傘を開く。枯れ木の側面に出ることも多く、その場合には柄が大きく曲がる。傘の表面は茶褐色で綿毛状の鱗片があり表面は白色で、細かい襞がある。

 子実体の発生時期は初夏と秋で、適温は10~25℃と幅があり菌株によって異なる。発生時期によって名称が異なり、冬の寒い時期に発生したものを寒子、春に発生したものを春子、秋に発生したものを秋子、梅雨に発生したものを梅雨子、藤の花の頃に発生したものを藤子と呼ぶ。

 シイタケは日本、中国、韓国などで食用に栽培されるほか、東南アジアの高山帯やニュージーランドにも分布する。日本では、大分県、徳島県、鳥取県、熊本県、宮崎県、群馬県、栃木、静岡県、長崎県、岩手県、秋田県などで栽培が盛んである。その中でも、干し椎茸の生産がとりわけ多いのは大分県と静岡県。

 中国では石膏賞、福建省・湖南省などを中心として全土で生産されている。シイタケは日本中どこでも生育可能だが、基本的な条件は次の通り。

①直射日光が当たらない場所。
②冷えすぎず、温まる場所(冬期や早春には木漏れ日が当たる場所を選ぶ)
③水はけがよい場所。
④通風のよい場所。

【栽培方法】

 次の2種類の栽培方法がある。

●原木栽培

 ナラ、クヌギなどの広葉樹を伐採して枯らしたものを原木として使用する。原木に穴を開けて種駒を打ち込み、適度に日の当たるスギ林や竹林に設置する。収穫時期は、種駒を打ち込んで2年半経ってから、原木が朽ち果てるまでの5~6年間である。毎年収穫できるが、3年目くらいがおいしいとされる。

●菌床栽培

 のこ屑にふすまや米糠などを混ぜてかためてから椎茸菌を植え、屋内で培養する方法。1990年(平成2)頃に開発された。5~6ヶ月で採取が可能で、温度、湿度の管理を人工的に調節することができるため、年間を通じて栽培することができる。

 菌床栽培が広まっているのは、原木の伐採や運搬に労力がかかるうえ、栽培期間の長い原木栽培に比べて手軽に栽培できるためである。しかし、菌床栽培で育った椎茸は原木栽培したものに比べて香りが乏しい。

【主な種類】

 シイタケは発生後、生長とともに大きく厚くなり、傘が開いていく。傘の開き具合によって呼び名が異なる。次にあげる冬菇、天白冬菇、香信、香冬、ばれ葉は傘の開き具合や育った環境が異なるのみで、厚木や菌、産地などは変わらない。

●冬菇

 七分開きにならないうちに採取したもの。気温が低くなる晩秋から早春にかけて育った秋子や寒子に多くみられる。肉厚椎茸。気温が低く乾燥した天候が続けば冬菇のまま大きくなる。

●天白冬菇

 冬菇の中でも、肉厚な傘の表面に白い亀裂が入っているもの。気温5~8℃、湿度35%以下の環境で、30日かけてゆっくりと育った冬菇。花が開いたように見えるため人気があり最高級品とされ花冬菇とも呼ばれる。

●香信

 傘が七分以上開いており肉厚なもの。2~5月に成長する春子に多い。気温が急に上がって雨が降ると、いっせいに傘が開いて香信になる。

●香菇

 七分開きになってから採取したもの。冬菇と香信の中間に位置する。肉厚で大ぶり。

●ばれ葉

 採取の遅れにより、傘が開きすぎて肉薄になったもの。気温が急に上がって雨が降ると、いっせいに傘が開いて香信になる。低価格で水戻しも早く、日常の料理に便利。

【製造方法】

 生シイタケは傷みやすいため、採取したらすぐに乾燥させる必要がある。乾燥は機械で人工的に行われている。少しでも水分があるとカビや虫が発生してしまうため、天日でゆっくり乾燥させているうちに傷んでしまう。そのため、江戸時代も天日ではなく炭火で乾燥させていたといわれている。

 現在は40~55℃で15~20時間かけて熱風乾燥したのち、遠赤外線乾燥機を使って内部温度を80℃にして仕上げる。「天日干し」の名で販売されている商品は、機械乾燥ののち、天日に1~3時間干した製品である。

【栄養と機能性成分】

 微生物の子実体であるキノコは、動植物にはない成分を含んでいることが多く、なかでもシイタケは特に多い。特に注目すべきなのは、エルゴステロールという成分である。

 エルゴステロールは、太陽光(紫外線)を受けるとシイタケの中でビタミンDに変わり、それを摂取するとカルシウムの腸からの吸収を促すといわれている。冬菇10個で、1日分のビタミンDの目安量がとれる。機械乾燥品は紫外線をあまり浴びていないのでビタミンDは期待できない。

 天日干ししたシイタケも空気にさらされることによって1ヵ月半ほど経つとビタミンDが半減してしまうという。しかし、利用する直前に傘の裏を上に向けて盆ざるなどに並べ天日干しすると、エルゴステロールがビタミンDに変化し、保存中に失われたビタミンDを回復することができる。生のシイタケを家庭で天日干しにしても同じ効果が得られるが、完全に乾燥させて干しシイタケを作るのは難しい。真夏の強い日差しに、乾燥した天候などの条件が揃ったところで数日干せばできるかもしれないが、乾燥する前に傷んでしまう可能性が高い。

 また、干し椎茸には100g中、41gもの食物繊維が含まれているので1枚(3g)5.5Kcalと低エネルギーである。食物繊維の大半は不溶性のセルロースやリグニンなどで、腸内の善玉細菌のエサとなってビタミンB2の生成を促し、免疫力を高める。

 そのほか、エリタデニンというシイタケ特有の成分があり、これは血中コレステロールを低下させる作用があるといわれている。加熱したり乾燥しても失われないが、干しシイタケを戻すとき、溶け出してしまうので、戻し汁も使うと摂取することができる。また、多糖類のひとつであるレンチナンも含んでいる。レンチナンは、がんなどの悪性腫瘍の発育を阻止する作用があるとされ、胃がんの治療薬に使われている。

【保存と利用方法】

 干し椎茸の賞味期限は約1年である。しかし、適切な環境で保存すれば2年ほどもつ。開封したら、湿気と直射日光を避け、密封できる容器に入れて冷暗所か冷蔵庫で保存すること。出し入れするときに湿気が入ってしまう可能性があるので、小さいパックにするとなおよい。ふくめ煮には冬菇だが薄切りにするなら香信でも十分。みじん切りにするならスライス製品でもよい。用途によって使い分ける。

 干し椎茸は水に浸けて戻してから調理する。芯までふっくら戻るまでにはひと晩かかる。戻している間に、栄養成分の上でも大きな変化がおきている。まず、シイタケに含まれている酵素が働き、香り成分であるレンチオニンと旨味成分のグアニル酸が生成される。そしてグルタミン酸、アラニンなど、旨味を増すアミノ酸がつくられる。急ぐ場合、電子レンジを使うとよいが、急激に加熱すると酵素の働きが失われてしまうため、香りや旨味が少なくなってしまう。

2015年9月1日火曜日

干し菊

○干し菊(ほしきく)

 食用キクの花の部分を蒸して海苔状にすいて乾燥した製品。菊海苔とも呼ばれる。現在食用とされているキクは60種。山形県では滋紅紫の「延命楽」、青森県では「阿房宮」という品種が生産されている。

【名 称】

 「延命楽」は「もってのほか」という通称でも親しまれる。

【生 態】

 青森県、岩手県、福島県、新潟県など東北北陸地方で栽培されており、青森県では主に「阿房宮」が生産されている。阿房宮という名前は、秦の始皇帝が長安北西に建立した宮殿の名前からとったもの。

 観賞用菊の「黄金球」からうまれた品種で、江戸時代に南部(青森県南部町)藩主が京都の九条家の庭に咲いている阿房宮を株分けし藩内に植えたのが、青森県での栽培の始まりだといわれている。南部町では10月中旬から霜の降りる11月中旬にかけて満開となり、収穫される。冷涼地で生産されたものは、特有の芳香、甘味、色彩が優れている。

【製造方法】

①キクの花を鎌で刈り取る。
②花びらをむしり、せいろの形に平均にならす。
③100℃近くの蒸気で蒸す。
④乾燥室に入れて約18時間乾燥する。

【主な種類】

 阿房宮は黄色の小輪種で八重咲きの品種。青森県、岩手県などが産地である。延命楽は明るい赤紫の中輪種で八重咲きの品種。山形県、新潟県などが産地である。

【栄養と機能性成分】

 食用キクはアルカリ性のため、コレステロールを除去するなど血液の流れをきれいにする作用がある。また、高血圧予防に効果があるといわれているカリウムも含んでいる。

【保存と利用方法】

 12月から春の彼岸頃が販売期であり、気温が高くなると変色し、虫がつくことがあるので乾燥した状態で保存する。さっと湯がくだけで鮮やかな彩りと味わいを取り戻す。酢の物はもちろん、大根なますとあわせて「菊なます」にしたり、刺身のつまの彩りとする。

2015年8月27日木曜日

干し芋

○干し芋(ほしいも)

 ヒルガオ科の多年草であるサツマイモを蒸して切り、乾燥した製品。干し芋の始まりは、1809年(文化6)頃に大藤村(静岡県盤田市)の大庭林蔵と稲垣甚八がサツマイモを蒸して厚切りにして乾燥させる製法を発明してからだといわれている。

 そののち、明治41年に茨城県那珂湊(ひたちなか市)での生産が始まった。茨城県に干し芋製造を導入したのは、せんべい屋の湯浅藤吉だといわれている。

 秋の味覚の代表であるサツマイモは糖質が多いが、体内に入ると糖質分解酵素が働く。皮の中は黄色をしており、カロチンとビタミンが多く熱に対しても強い。サツマイモを食べると胸焼けをおこしやすい人は、川ごと食べると体内での発酵が抑えられて胸焼けが起こりにくいという。茨城県ではサツマイモが学校給食にも使われている。

【名 称】

 乾燥いも、いも切り干しともいう。茨城県と静岡県がおもな産地だが、ほかの地域でも生産されており、呼び名が異なる。愛媛県宇和島では「東山」、長崎県では「かんころ」、熊本県や鹿児島県では芋をスライスする機械をコッパケズリ、コッパキリなどと呼ぶことから「コッパ」と呼ばれているが、いずれも干し芋である。

【生 態】

 サツマイモは繁殖力が強く、栽培方法も比較的簡単で収穫量の多い澱粉食品であったことから、各地で作られるようになった。春先親芋から芽が出て10cmほどになったら茎径を植える。夏が過ぎ秋になると収穫となる。

 茨城県ひたちなか市の那珂湊や阿字ヶ浦は土壌がサツマイモ栽培に適しており、冬に強い海風が吹く乾燥した気候も干し芋の生産に向いている。また、北海道や東北地方に出荷するのに地の利があることなどもあり、現在は有名な生産地となっている。

 干し芋の原料となっているサツマイモの品種は玉豊、いずみ種、玉乙女、紅まさりなどである。主力の玉豊は、他の品種と比べて大型で外皮、肉色とも白く、食感がネットリとしている。生では白いが、干すと飴色になる。

【製造方法】

 秋に収穫された原料芋は、土がついたまま寝かし保管する。干す作業に入るのは寒風の吹く11月後半から3月にかけてである。

①蒸す直前に芋をよく荒い、大きさ別に選別して、せいろに並べて蒸す。
②蒸した芋はひとつずつていねいに皮をむく。
③蒸して皮をむいた芋をつき台でスライスする。つき台にはピアノ線、ステンレスの針金を張り、平干し芋は9~12mm幅に、角きり芋は2cm角にスライスする。
④スライスした芋はすだれに並べ、天日で約1週間ほど乾燥する。丸干しの場合は20日ほどかかる。

【栄養と機能性成分】

 コレステロールを含まず、食物繊維が多い。ビタミンB1、ビタミンC、カリウムなどを豊富に含んでいる。

【保存と利用方法】

 乾燥しすぎるとかたくなり、乾燥が不十分だとカビが発生するので保存するときには湿度管理が重要である。強い直射日光を避け、水分が分離しないように低温保存するのが好ましい。冷凍すれば長期保存が可能である。

 かたくなった品は焼くとおいしく食べれるが、熱が冷めると再びかたくなる。最近はカビを防ぐために窒素ガスや脱酸素剤を封入した包装品がある。

2015年8月25日火曜日

干し杏

○干し杏(ほしあんず)

 バラ科の落葉中高木であるアンズの実から種を取り除き、乾燥した製品。乾燥果実として販売されている。

 アンズの原産地は中国北部、中央アジア、ヒマラヤ西北部である。中国では2000年前以上から種の中にある「杏仁」を収穫し、漢方薬として利用してきた。杏はそののち、中国からヨーロッパ、中東、アフリカに伝わり、18世紀頃にアメリカに渡ったとされている。日本に伝わった時期はわからないが、平安時代の書物に「カラモモ」という和名が記載されている。

 本格的に栽培されるようになったのは、ヨーロッパ品種が導入された大正時代からだと思われる。現在、日本で市販されている干し杏は輸入物が大半をしめ、一番多いのは中国産で、日本の品種よりサイズが大きい。

【生 態】

 日本で栽培される杏は和アンズ、日本アンズなどで、粒は小さく、色は褐色で時間が経つと黒くなってくる。味は酸味が強い。日本全国で栽培されるが、特に甲信越地方で多く栽培されている。長野県で春早くに花が咲き、6月下旬から7月にかけて実がなる。得に長野県千曲市郊外の森地区、長野市安茂里、倉科地区で栽培が盛んである。

【主な種類】

 日本で栽培されているアンズには、平和、昭和、信州大実などの品種があるが、これらはおもに生食用である。干し杏に向く品種は次のものである。

●山形三号

 山形県の原産品種で、昭和初期から長野県で栽培されてきた。果実は円形で黄色実がかった橙色をしており、酸味が強いので生食には向かないが、干しアンズやジャムの加工に利用される。

●新潟大実

 新潟県の原産品種で、酸味が強く干し杏やジャム、シロップ漬けの加工用として利用されている。円形淡橙色で果肉は40~60g前後である。

【栄養と機能性成分】

 βカロチン、カリウムなどを多く含み、高血圧、動脈硬化予防に効果があるといわれる。

【保存と利用方法】

 密閉容器かビニール袋、瓶などで保存し、ドライフルーツとして利用する。

2015年8月24日月曜日

朴の葉

○朴の葉(ほおのは)

【名 称】

 モクレン科の落葉高木であるホオの木の葉を乾燥させた製品。「ほお」は「包」の意味で、古くは大きな朴の葉に食べ物を盛ったことが由来とされている。飛騨高山(岐阜県)や富山県、新潟県、群馬県などでは、朴葉味噌などの郷土料理によく利用されている。

【生 態】

 ホオの木は、春先に白い花を咲ける。春から夏にかけて収穫し、乾燥保存しておく。

【保存と利用方法】

 湿気を嫌うので缶などに入れて保存する。利用する前には、乾燥した朴の葉を水に10分ほど浸けて戻しておく。七輪に金網を敷き、戻した朴の葉を味噌と山菜や肉を焼くと香ばしい香りと味が楽しめる。

2015年8月21日金曜日

○麩(ふ)

 小麦粉に含まれているグルテンという植物性タンパク質を加工した製品。麩は、雪に閉ざされる東北地方などで冬の貴重な蛋白源として重宝されてきた。日本各地に、それぞれの生活からうまれたさまざまな色、形の麩があるが、大別すると現在製造されている麩は、焼き麩と生麩に分けられる。

 麩の伝来は不明だが、8~9世紀の中国の文献に「麺筋」と記述されているものが起源ではないかといわれている。当時は仏教の厳しい戒律から、禅僧たちは殺生、肉食を絶っていた。そのために肉に代わるタンパク源をダイズやコムギに求めて、麩をつくり珍重していたという。

 南北朝の時代、麩は禅寺の喫茶を楽しむときのお茶請けとして扱われており、一休和尚が麩の普及に尽くしたとも伝えられている。江戸時代初期には、隠元禅師が普茶料理を広め、さらに麩の製造業者もうまれて、庶民も麩を食すようになった。

 さらに1859年(安政6)の開港とともに精白小麦粉が日本に輸入され、生地が滑らかになり、初めて鉄板の上で焼く焼き麩が一般市民の食生活に受け入れられるようになった。

【製造方法】

①小麦粉に水または食塩水を加えて長時間練りながら上水を取り替え、澱粉質を洗い流し、ネバネバした弾力のあるグルテンを取り出す。
②グルテンに小麦粉や米粉を混ぜる。製品によって粉の種類や配合が異なる。
③よく練って熟成、細工、成型する。
④焼成する
⑤選別、検査、切断する。

【主な種類】

●車麩

 麩の生地を直火で焼成した製品。麩の生地を鉄棒にまきつけて焼く。新潟県のほか北陸、東北地方で生産されている。

●庄内麩

 麩の生地をバーナーで焼いて板状にした製品。岩手県、山形県、秋田県など日本海側で生産されている。

●南部板麩

 青森県、岩手県、宮城県の太平洋側で生産されている板状の麩。

●饅頭麩

 麩の生地をお饅頭のようなかたちに丸めて成型した製品。青森県、山形県、新潟県など日本海側で生産されている。

●案平麩

 麩の生地を丸餅のように大きくふっくらとしたかたちに成型して焼いた製品。山口県では、仏事の供え物として利用されている。

●手毬麩

 五色に紅染めした生麩を丸めて手毬のかたちにした製品。石川県、岐阜県、京都府で生産されている。

●餅麩

 グルテンに餅粉を加えてつくった製品。おもに京都府、滋賀県、大阪府で生産されている。

●松茸麩、丁子麩、花麩

 麩の生地を成型型に入れて焼いた製品。滋賀県、京都府などの西日本で生産されている。

●圧縮麩

 麩の生地を蒸して圧縮した製品。沖縄県や全国でチャンプルを作るときに利用されている。

●すだれ麩

 グルテンを蒸した状態の生麩をすだれに延ばして包んで、加熱してから乾燥した製品。石川県で生産されている。

 以上の麩はすべて材料をオーブンで焼成(蒸し焼き)するタイプの麩である。このほか小町麩、観世麩、卵麩、白玉麩などがおもに関東地方、東北地方、北海道で生産されている。また、京都府などでは生麩が精進料理に多く利用され、手まり、もみじ、桜花、よもぎなどに成形し、色付けしたものが各地で作られている。

【栄養と機能性成分】

 麩は植物性タンパク質とミネラルが豊富で、パンや乾麺などの2~3倍含まれており、脂質、塩分は少ない。麩はリジンの多いダイズ製品と組み合わせるとアミノ酸バランスがよくなるうえ、麩には少ないカルシウムも補える。

【保存は利用方法】

 湿気を嫌うので密閉容器などに入れて保存する。仙台麩のように油で揚げたものは酸化しやすいので早めに使うこと。麩は水に浸ければすぐに戻すことができる。お吸い物などに利用する場合は、戻さずに直接入れて使うことができるため利用範囲は広い。

 日本料理のほかにも中華料理や沖縄料理の炒め物の材料として、また黒砂糖を表面につけた麩坊や麩かりんとうなどのお菓子にも利用されている。

2015年8月20日木曜日

鶏児豆

○鶏児豆(ひよこまめ)

 マメ酢の一年草であるヒヨコマメの種子を乾燥させた製品。おもにインドやパキスタンなどで栽培されている。近年は、わずかではあるがカナダや日本でも栽培されている。

 スープやカレーに入れたり、煮豆、甘納豆、スナック菓子などに利用されている。ガルバンゾー(スペイン語)の名で呼ばれることも多い。

2015年8月18日火曜日

○稗(ひえ)

 イネ科の一年草であるヒエの種子を乾燥させた製品。日本では古くからキビ、アワなどと同様に重要な主食作物として作られてきた。米より短期間で収穫できるとともに、荒地でも育つことから、五穀豊穣作物として重要な役割を果たしてきた。宮中の新嘗祭にも献上される。また、アイヌでも神聖な穀物とされた。アイヌ語ではピパヤと呼ぶ。

【生 態】

 特に寒冷な土地や痩せた土地でもよく実り、ムギやダイズと輪作されてきた。茎は飼料として利用される。おかゆ、ねりもちとして主食として食べられ、ほかの雑穀と混ぜた五穀米などの需要がある。

【栄養と機能性成分】

 タンパク質は米やムギより良質でカルシウム、ビタミンB群を多く含んでいる。

【保存方法】

 開封した稗は、密閉容器に入れ冷暗保存する。

2015年8月15日土曜日

ビーフン

○ビーフン(米粉)

【名 称】

 糯米を原料とした麺状の製品。中国や台湾でおもに生産されている。台湾や中国福建省南部ではビーフン、北京語ではミーフエン、ベトナム語ではブン、タイ語ではセン・ミーなどと呼ぶ。東南アジアでは盛んに食されている。

 中国産のビーフンはもろく、折れやすいので、日本では原料の米の品種を変え、澱粉を配合して麺を強くし、食味を強くしたビーフンが作られるようになった。日本のビーフン市場の多くは神戸のケンミン食品株式会社が占めている。

【製造方法】

 台湾では新竹市がビーフンの生産地として有名である。新竹はビーフンを乾燥させるのに最適な、冷たく乾燥した季節風が吹くことから生産が盛んになり、アメリカや日本にビーフンを輸出している。中国の桂林が原産の「桂林米粉」は切り口が丸く、太い。平たいものは切粉チェーフンという。基本的な製造方法は次の通り。

①糯米を水につけてやわらかくしてから、粉砕し脱水する。
②蒸して細い穴から圧力をかけて押し出し麺状にする。
③押し出した麺をもう一度蒸してから乾燥させる。

【利用方法】

 肉などさまざまな具と混ぜて食べる。豚肉のスープを注ぎ入れた「湯粉」、炒めた「炒粉」のほか、シンガポール、ミャンマーなど地域によっていろいろな食べ方がある。日本では台湾や中国福建省と同様に野菜や肉類など具材と一緒に炒めた焼きビーブンが一般的である。

2015年8月12日水曜日

パン粉

○パン粉(ぱんこ)

 パンを細かく砕いて乾燥させた製品。生パン粉、ソフトパン粉、乾燥パン粉などの種類があるが、どれも水分量を調節したもので、乾物屋が扱っている。揚げ物の衣やハンバーグに練りこんで利用されている。

 パン粉を使った揚げ物は、オーストラリア料理のウインナシュニッツェルが始まりといわれており、日本では明治時代に「洋食」として、西洋文化とともに独自の発展をとげた。欧州ではかつて油が貴重品であったため、油で揚げる料理は少ない。ウインナシュニッツェルは牛肉を薄く延ばして砕いたパンにまぶし、油をひいた鍋で焼く料理である。これがビーフカツとなり、トンカツに発展したといわれている。

 明治時代、肉や魚にパン粉をつけて、てんぷらのように揚げたものが洋食店で出始めた。洋食店で揚げ物がよく作られるようになると、1907年(明治40)に丸山寅吉がパン粉専業の製造販売業者となったのを皮切りに、製造業者が増えていった。

 戦後は、食生活の洋風化にともない口当たりの軽いパン粉が作られるようになり、トンカツ、エビフライ、カキフライなどの衣として中身の素材を引き出す日本独特の洋食として代表的なものになった。そののち冷凍食品、調理加工食品、外食産業など多くの材料に使われるようになった。またハンバーグ、ミートボール、コロッケなどの練りこみ用に利用されている。

【製造方法】

 ①まずパンを焼く。小麦粉とイースト菌などの副材料を混合し、パン生地を作る。②生地を発酵させてから丸めて型に入れて焼く。焙焼式の場合、オーブンを使って火で焼くため、ふっくらとした焼き色が付く。電極式の場合、電気で焼くため、焼き色がなく蒸しパンのような仕上がりになる。③焼きあがったら冷蔵庫で冷やし、水分を均一化させる。④回転する粉砕機でパンを細かくする。

【主な種類】

●生パン粉

 パンを規定粒度に粉砕し、水分を30~35%含んでいる製品。食感のよさが好まれている。

●乾燥パン粉

 水分が11~13%のため、保存性、作業性が高い。

●カラーパン粉

 生地を作るときに着色料を添加して色を付けた製品。揚げ色がよくなり、長時間おいても揚げ色が変わらず退色しにくい。

●ミックスパン粉

 焼き目をつけずに仕上げた白パン粉とカラーパン粉を任意の割合でミックスした製品。

●プレッダーパン粉

 かための生地をロールで帯状に延ばして、オーブンと高周波で連続して過熱し焼成した、アメリカンタイプのクラッカーパン粉。

【保存と利用方法】

 乾燥パン粉は吸湿しやすいので、高温多湿の場所を避け乾燥した風通しのよいところで保存する。開封後は冷蔵庫で保存し、虫が付きやすい食品と同じ所におかない。パン粉は、家庭でも簡単に作ることができる。食パンの耳の部分を集めてフードプロセッサーやチーズおろし器などを使った粉にすればでき上がる。

2015年8月11日火曜日

春雨

○春雨(はるさめ)

【名 称】

 馬鈴薯澱粉や、マメ科の一年草であるリョクトウを加工し、加熱して麺状にしたものを凍結し、乾燥させた製品。白く透明な姿が春に降る細長い雨を連想させるため「春雨」と名付けられたといわれる。

 春雨は日本名で、中国では「粉状・粉絲」、韓国では「タンミョン」と呼ばれる。昭和初期には、「豆麺」という名で輸入されていた。そののち、サツマイモ、ジャガイモの澱粉を原料にして、奈良・三輪地区の素麺業者が、手延素麺の閑職期の副業として生産するようになった。

【生 態】

 リョクトウはインドで栽培されたのが始まりとされている。世界各地で栽培されており、日本では中国すら伝わって栽培が始まったが、現在ではほとんど栽培されていない。

【製造方法】

 薩摩芋澱粉、じゃがいも澱粉、コーンスターチなどを配合した製造する。

●凍結春雨

 日本で製造される春雨のほとんどは凍結春雨である。①原料を配合して熱を加え、澱粉をアルファー化する。②小さい穴から熱湯のなかにたらしこんで茹でる。③完全にアルファー化したら水で冷やし、水の中を泳がせながら棒にかけて引き上げる。④冷凍庫で保存する。⑤凍結した春雨を天日乾燥(室内乾燥)する。

●非凍結春雨

 中国で製造される春雨のほとんどは、リョクトウの澱粉を原料とした非凍結春雨である。細い形状は凍結春雨と同様だが、純白で透明、光沢があり、一定の太さで細いウェーブがある。代表的なブランドに「龍口春雨」がある。

 日本で市販されている「マロニー」はこれの一種である。①混合した澱粉乳をステンレスのベルトの上に流す。②薄い膜状にして熱を加えアルファー化する。③巻き取って数時間熟成させてから製麺機で麺状に裁断する。④乾燥させる。

 さらに透明感を出すときには、ソラマメの澱粉を20%くらい混入させることもある(スープ春雨用など)。韓国冷麺は馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉に蕎麦粉を入れた非凍結麺で、春雨ではない。

【保存と利用方法】

 春雨は濡らさない限り、カビ、害虫の発生はない。寒い季節には、かしわの水炊き、サブシャブなどの鍋料理に、そのほか、酢の物、サラダ、マーボー豆腐中華炒めに利用される。また夏に素麺のようにして食べられている。

2015年8月9日日曜日

唐辛子

○唐辛子(とうがらし)

 ナス科の一年草であるトウガラシの果実を乾燥させた製品。トウガラシは比較的どんな土壌にも適応し栽培が簡単なため、世界中で栽培され香辛料として多くの人に愛用されている。配合比率で利用目的も異なる。

 日本では東北地方、北陸地方、東海地方などの各地ではナンバンといい、岐阜県、島根県、京都府、九州地方ではコショウ、また福島県会津地方ではカラシなど呼び名が異なる。浅草寺や善光寺、清水寺など、寺院の門前には唐辛子屋があることが多い。これは昔、お参りに行くのにお金をかけてしまった人でも買えるほど、唐辛子が安価だったため、という言い伝えがある。

 長野県の代表的な観光地である善光寺は、「牛に引かれて善光寺参り」という言葉もあるように、週末ともなると全国から参拝者が訪れる。なかでも門前にある八幡礒五郎は七味唐辛子が有名で、参拝者たちにも人気の店である。八幡礒五郎の歴史は古く、長野市の郊外にある鬼無里村の商人がアサと和紙を江戸に運び、かさばらない七味唐辛子を持ち帰り、初代勘右衛門がその七味唐辛子を善光寺の境内で売り始めたのがはじまりといわれている。

 そののち、1707年(宝永4)に火災で焼失した善光寺の再建が行われ、冬の寒い中作業をする大工や作業員のべ20万人に七味唐辛子を入れた味噌汁を振舞ったところ、作業がはかどり七味唐辛子が耐寒食料としてよく売れるようになったという逸話が残っている。

 江戸の七味唐辛子は乾燥陳皮(ミカンの皮)、胡麻、山椒、麻の実、あぶり唐辛子、芥子の実、生唐辛子の7種類で作られていたが、八幡礒五郎は生唐辛子と芥子の実は使わず、生姜と青紫蘇を使い独特の味を作り出した。いまでは、信州蕎麦などの薬味に欠かせない香辛料となっている。

 また、唐辛子は、ペルーやメキシコの複数の遺跡から出土しており、紀元前から栽培されていたのではないかとみられている。そののち、コロンブスによってヨーロッパに持ち帰られ、17世紀にポルトガル人によってアジア、中国に伝えられたという。日本には同じ頃ポルトガル人によってタバコとともに伝えられたという説と、豊臣秀吉が朝鮮半島に出兵したときに持ち帰ったという説などがある。

【生 態】

 トウガラシはアメリカの熱帯地域が原産地といわれている。辛味種と甘味種に大別され、辛味種を欧米ではチリペッパーといい、日本では甘味種の一種をピーマンと呼んでいる。春先に種をまくか苗を植えて、晩秋に収穫する。

●鷹の爪

 日本の乾物店にある辛味唐辛子の代表。形状が鷹の爪に見えることから名づけられた。果実が3~4cmのものが多い。乾燥させて保存し、漬物や七味唐辛子などに幅広く利用されている。主な産地は栃木県である。

●八つ房唐辛子

 ひとつの房に10個もの実がまとまって、上を向いている。鷹の爪より太く長いが辛味はやや劣る。枝のまま乾燥した観賞用としても楽しめる。

●島唐辛子(キダチ唐辛子)

 沖縄補地方で栽培されている。泡盛などにつけて調味料として販売されている。

●伏見唐辛子

 京都の伏見地区の在来種で果肉は10~12cmくらい。細長いかたちをしている。丸ごと焼いたり、てんぷら、煮物などに利用される。

●万願寺唐辛子

 伏見唐辛子と大型ピーマンのカルフォルニア・ワンダーとの交配で、果実の大きさは15cm以上にもなる肉厚で美味しい甘味種。京都の舞鶴万願寺地区固有品種である。

●日光唐辛子

 果実は10~15cmと細長い。輪切りにして生食のほか、中華料理や加工用など、さまざまな場面で利用される便利な中辛唐辛子。

【加工品】

●七味唐辛子

 香辛料として各種珍味、薬味を配合したもので配合は各業者によって違いはあるが唐辛子粉、黒胡麻、山椒、芥子の実、麻の実、陳皮、青海苔など7種類を混合したものである。浅草の「やげん堀」、長野市の「八幡屋礒五郎」、京都府清水の「七味家本舗」などが有名。

●一味唐辛子

 七味唐辛子より辛い。さまざまな種類の唐辛子を配合した薬味で、用途は七味唐辛子にているが、キムチ漬けなどにも利用される。

【栄養と機能性成分】

 辛味成分であるカプサイシンがエネルギー代謝を活発にして、食欲増進・発汗作用をもたらすといわれている。発汗によって体温が下がるため、特に暖かい地方で好まれている。炭水化物の消化を助ける働きもあるという。

【保存と利用方法】

 長時間保存すると香気が抜け、害虫が発生するので、湿気を避けて瓶などに入れて保存する。和食のきんぴら、漬物、野菜炒めのほか、中華料理、韓国料理と利用範囲は広い。小さく切るほど辛味が増す。ぬるま湯に浸して戻すと刻みやすい。種の周りの内壁部分に強い辛味があるため、辛味を抑えたいときは種を抜いてから調理するとよい。

2015年8月5日水曜日

タピオカ澱粉

○タピオカ澱粉(たぴおかでんぷん)

 トウダイグサ科の低木であるキャッサバの根からとった澱粉のこと。キャッサバは、古くから中南米で栽培されてきた。特にインドネシアで多く栽培されている。葛粉や粉の代替品のほか、うどんやケーキ、パンに練りこむなどして利用されている。また、湿らせて小さい球形にして表面を半糊化させたタピオカパールは世界各国で菓子材料として人気がある。

2015年8月4日火曜日

竹の皮

○竹の皮(たけのかわ)

 イネ科タケ亜科の多年生常緑木質植物であるタケの皮を乾燥させた製品。竹の皮は保水力、殺菌性にすぐれ、包んだものが腐りにくく、乾燥、変色しにくいため中華粽やおにぎりの保存うってつけである。

【名 称】

 地下茎から出た若い芽はタケノコとして食用するが、タケの皮は食べ物の包装や傘、ぞうりの表などに利用されている。タケの皮は、葉鞘の発達したもので、成長すると自然に落ちる。竹の中でも大型のモウチクソウの皮が用いられることが多い。そのほか、マダケの皮は平滑で黒い斑紋があり、毛がなく滑らかなものが多いため、包装用に利用されることが多い。

【保存と利用方法】

 竹の皮にはフェノール物質の抗菌作用があるが、湿気があるとカビが生えてしまう。湿度に注意すれば数年使うことができる。また、電子レンジでそのまま加熱、解凍することもできる。乾燥しすぎても、10分くらい水に浸し、水分を適度に与えれば軟らかくなる。

2015年7月27日月曜日

大豆

○大豆(だいず)

 マメ科の一年草であるダイズの種子を乾燥させた製品。豆類の中でもダイズほどさまざまな加工品へと変化する食材は珍しい。油を絞れば白絞油になり、脱脂大豆は加工用飼料となる。発酵させれば味噌、醤油、納豆になり、煮れば煮豆、炒れば黄粉、発芽させればもやし、搾れば豆乳になる。

 また、豆乳から湯葉、豆腐をつくることができ、豆腐を揚げれば油揚げ、がんもどきになる。さらに、乾燥豆乳は飲料、アイスクリームにも利用される。食の世界だけでなく、ダイズの持つ成分から抽出した医薬品も数知れずある。なんとも不思議な食材だ。

 もちろんダイズはそのままでも栄養豊富で、タンパク質、脂質、イソフラボン、サポニン、食物繊維などを含んでおり「畑の肉」といわれるほどである。しかし、輸入大豆の多くが除草剤や農薬の使用状況や、遺伝子組み換えか否かなど、わからない部分が多いのが残念である。

 歴史的に見ると、遺跡から炭化したダイズが見つかっており、日本には縄文時代あるいは弥生時代の頃に中国から伝わったことがうかがわれる。鎌倉時代になると新仏教の誕生によって肉食が禁じられたため、ダイズはタンパク質源として珍重された。

 また、兵糧食としての需要も高まり、西日本から東北地方にまで栽培地域が広がった。そののち、味噌や豆腐などの加工品や湯葉などの精進料理が普及したことによって庶民の生活に深く関わる食材となった。

【生 態】

 日本では、沖縄を除く全国で栽培されている。豆類は交配された品種が大変多く、また、栽培地域も広い。ダイズも品種によって粒の大きさ、色、油脂量などが異なり、利用方法に合わせて開発され、さまざまな分野で流通している。日本の主産地である北海道ではダイズの用途、目的に合わせて交配された品種が契約栽培によって計画的に生産されている。海外ではアメリカ、ブラジル、中国などの生産量が多い。

 品種や栽培地域によって作付け時期は異なる。青い状態で収穫し、枝豆として食べられる夏ダイズ型は、5月頃に種をまき夏頃収穫する。一方、乾物に加工される秋ダイズ型は、6月中旬~7月中旬にかけて種をまき秋に収穫する。比較的暖かい地域では、夏ダイズ型を4月上旬頃からまき始めることも可能である。他の豆類と同様に、連作ができないため輸作をする必要がある。

【主な種類】

●黄大豆

 種皮が黄色の品種。一般的な黄大豆は大粒種が好まれ、鶴の子という品種が最高級品として主力であったが、近年は鶴の子との交配により粒が大きくタンパク質の含有量が多い品種が開発されている。保水性が高いため味噌などの加工に利用されるトヨハルカ、豆乳加工に利用されるゆきぴりか、とよまさり、ユキホマレなどがある。

●黒大豆

 種皮が黒い品種。正月料理の中でも人気の高い黒豆だが、なかでも丹波種が人気がある。光沢のよい十勝黒、函館黒、青森の光黒、黒千石など数多くつくられている。

●丹波黒豆

 粒が大きく、種皮が黒い品種。兵庫県丹波篠山盆地で栽培されている丹波黒豆は、夏に昼夜の温度差が激しい気候風土や土壌の性質により、開花から成熟まで100日もかかるため、種子が養分を蓄積し極大粒の豆がなる。そのため、丹波黒豆は篠山盆地の特産品であり、ほかの地方で栽培してもなかなかうまくできない。

 12月に収穫を行う晩成種である。収穫期から販売期(正月需要)が短いため、乾燥不十分な状態で販売される場合もあり、カビが生えやすい。なかでも粒が大きい3Lサイズが人気で、「ふどう豆」や「飛切り」などの表示で販売されているが、収穫量は少ない。

●がんくい豆

 扁平系で中央にしわがある品種。しわが雁のついばんだあとに似ていることからこの名がついた。「平黒豆」とも呼ばれる。現在は岩手県など一部地域で栽培されている。

●青大豆

 種皮が緑色の品種。鶯豆や和菓子に利用されており、山形県、新潟県などで多く栽培される。岩手県、宮城県など東北地方では「ひたし豆」、山形県鶴岡城山地区では「だだちゃ豆」として市販されている。うぐいす黄粉の材料である。

●くらかけ豆

 種皮に黒い鉢巻の模様が入っている品種。馬の鞍に似ていることからこの名がついた。「けらかけ」とも呼ばれている。新潟県から長野県にかけて多く栽培されている。

【加工品】

●黄粉

 大豆を煎って粉砕した製品。和菓子の原料として欠くことのできない食材。黄粉を使った菓子は多く、五家宝、安倍川餅、信玄餅、わらび餅などがある。関東では黄色が好まれるため大豆の煎りが浅く、関西では香りが強いものが好まれるため、煎りの深い茶色の製品が販売されている。また近年は黒豆黄粉や、胡麻黄粉などの調理黄粉も多く出回っている。

●打ち豆

 生豆や大豆を石臼やかたい金属の上で小槌で叩き扁平型にした製品。収穫した大豆をつぶすことによってかたい殻が壊れるので、早く調理ができて味付けも簡単にできる。一度加工しているため打ち豆にしたら早めに調理すること。保存性は低い。特に東北地方、山形県、新潟県、長野県などで多く生産、利用されている。

 黄大豆も使われるが、東北地方では主に青大豆を使っており、郷土料理とされている。農作物の収穫が終わり一息入れる時期になると、煮物にして食卓にあがる。刻み昆布と車麩、打ち豆の似付けが煮物の中では代表的である。

【栄養と機能性成分】

 五大栄養素であるタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、無機質を豊富に含んでいる。なかでもタンパク質は良質。脂質は、動脈硬化を防ぐとされるレシチンや、肥満抑制効果が期待できるサポニンである。このほか、イソフラボン、ビタミンB群、カルシウム、鉄、オリゴ糖、食物繊維などを含んでいる栄養豊富な食材である。

【保存方法】

 長期保存するには、常温か冷蔵庫など湿気のないところで保存する。カビや虫が付くので、缶、瓶、プラスチック容器に入れるとよい。

2015年7月14日火曜日

蕎麦

○蕎麦(そば)

 タデ科の一年草であるソバの実を粉砕したのち、製麺した製品。ソバは、アジア諸国で栽培され、ネパールや中国雲南省などから朝鮮半島を経て日本に麺文化として伝来したといわれている奈良時代より以前からあったとされる考えられるが、文献に登録するのは鎌倉時代頃からである。

 穀物の豊作の祝う五穀には入っていないことから、庶民の食べ物として特に珍重されていなかったと推測される。江戸時代になると夜鳴き蕎麦や振る舞い蕎麦として庶民の食べ物として定着した。蕎麦粉をそのまま加工した蕎麦団子、蕎麦がきなどもあるが、麺に加工された製品の消費がほとんどである。日本各地で祝蕎麦、門前蕎麦などさまざまな食べ方がある。

 一般的には、夏蕎麦と秋蕎麦があり、秋蕎麦の方が消費が多い。高原で朝霧が多く発生する信州の戸隠蕎麦などが有名である。特に、香り高い新蕎麦の需要は多い。

【生 態】

 ソバは、北は北海道から南は鹿児島まで、さまざまな地域で栽培されているが、生産量が多いのは北海道である。種をまいて最短75日で収穫できることから、開墾地で盛んに作られるようになった。弱アルカリ土がソバの栽培には適しているが、荒れた開墾地では酸性土であるため、焼畑を行うことによって灰で中和するなどしてきた。

【製造方法】

 蕎麦粉は、原料であるソバの実(玄蕎麦)を石臼挽きやロール挽きで製粉したものである。ソバの実は熱に弱いことから、水車挽きや石臼挽きで製粉したほうがよいが、現在では機械によるロール挽きがほとんどである。

 ソバの実は、外側から果皮、甘皮、胚乳、子葉になっており、製粉の段階で徐々に取れていく。芯に近い部分は粒子が軽いので、製粉後ふるいにかけたとき早く落ちる。これを一番粉といい、その次は二番粉、さらにその次は三番粉と呼ばれる。

 また玄蕎麦を石臼などで一本挽きにしたものを「挽きぐるみ」といい、ソバの実のすべての層が含まれていることから、これを製粉したものは「全層粉」ともは呼ばれる。甘皮も残っているため、色の黒い、荒い粉ができる。全層粉で作った蕎麦は風味があり、歯ごたえがよい仕上がりになるため、ぞくに田舎蕎麦とも呼ばれている。

【主な種類】

●更科蕎麦

 一番粉を主体に製麺した製品。粉の粒子がきめ細かいため、透明感のある白い色をしている。甘みがあるが香りは淡く、風味は繊細で上品である。御膳蕎麦とも呼ばれる。

●信州蕎麦

 二番粉を主体に製麺した製品。味、風味ともによく、色味は中間色である。

●藪蕎麦

 三番粉を主体に製麺した製品。胚芽、胚乳、甘皮などが入っているため、味、香りともに強い蕎麦で、やや色が黒い。

【栄養と機能性成分】

 タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが多く、毛細血管を強化し動脈硬化の予防になるといわれる、ルチンを含むため、需要は多い。

【保存と利用方法】

 素麺、冷麦、うどんなどほかの乾麺類と同じである。

2015年7月9日木曜日

じゃがいも澱粉

○じゃがいも澱粉(じゃがいもでんぷん)

 片栗粉の名で販売されていることが多い。ジャガイモから澱粉をとるようになったのは、1833年(天保4)に群馬県嬬恋村で製造されたのが最初で、その頃から「加多久利」と呼ばれていたといわれている。1870年(明治3)に千葉県の蘇我で十左衛門が製造し、「片栗粉」と呼ばれるようになったという。

 明治の頃から北海道産の安価な品が大量に出回るようになると、カタクリからとった本当の片栗粉は姿を消し、戦後は、北海道の斜里町や士幌の大規模工場で生産されるようになった。現在の生産量は年間約25000トンである。

【主な種類】

 生産量の60%は糖化用に、30%は片栗粉、春雨などに加工され、5%は水産練製品に利用される。片栗粉は、粒子の大きさによって次の2種類に分けられる。

●分級片栗粉

 ジャガイモのすりおろしを150℃の熱風で1時間ほどかけて一気に製品化したもの。分級し、大粒の粒子がそろえているため糊化が早く、粘性が強い。

●未粒つぶ片栗粉

 数時間かけ澱粉を自然に乾燥させて、70℃の低温で10時間かけて乾燥させた製品。ゆっくりと乾燥させることによって澱粉の粒子がこわれないため、粘性が高くとろみが安定しているのが特徴である。から揚げの衣に利用するとカラッと揚がるように品質改良された製品も出回っている。

2015年7月8日水曜日

薩摩芋澱粉

○薩摩芋澱粉(さつまいもでんぷん)

 サツマイモの栽培が広まった1836年(天保7)に、サツマイモの栽培の発祥の地でもある下総(千葉県)で澱粉の製造が始まったといわれている。そののち、九州などで生産が盛んになり、輸出もされるようになった。しかし現在日本における生産量は澱粉の全供給の2%にも満たない。

 過熱すると麦芽糖を形成するため、80%が水飴などに加工され、糖化原料として利用されている。また、春雨や韓国冷麺に練りこまれることもある。

2015年7月7日火曜日

笹の葉

○笹の葉(ささのは)

 イネ科の笹の葉を煮沸し乾燥させた製品。7月7日の七夕になると笹の葉で笹粽をつくる家庭もあって、笹は季節を感じさせてくれる食材のひとつである。笹粽は、笹の葉を三角推の筒状にして、糯米を入れ蒸したものである。スゲを煮沸し乾燥させたものを紐にして結んで閉じる。笹の葉は保存性を高めるとともに、やわらかさと香りのよさを楽しむことができる。

【名 称】

 イネ科のタケのうち、小型のものを総称してササと呼ぶ。6~7月の頃の新葉を使用する。昔は乾燥笹を湯通しして使っていたが、近年は煮沸したのみの状態で包装真空パックになったものが市販されている。

 一般的には笹の中でも熊笹を使用する。おもな産地は北海道、新潟県、長野県などで、雪国に多く分布している。防腐作用があるため、古くから饅頭、水大福、笹団子、葛餅、粽など夏の冷菓の包装に利用されている。

【保存と利用方法】

 よく水洗いしてから水で戻して使用する。水で戻したものは、ラップで包めば冷凍保存することができる。笹の葉自体は食べることができない。代表的な菓子に笹粽がある。

2015年7月5日日曜日

豇豆

○豇豆(ささげ)

 マメ科の一年草であるササゲの種子を乾燥させた製品。原産地はアフリカである。見た目、栄養成分ともに小豆に似ている。小豆より皮がかたくて煮崩れしないことから、おもに赤飯などに使われる。小豆よりも長い時間似る必要がある。

 関東以西で古くから栽培されており、16ささげ(三尺ささげ)、不老ささげなどの品種がある。なかでも、種子を横から見るとだるまの横顔に似ていることから命名された、岡山県産の「備中だるま」が有名である。北海道で仏事用黒飯に利用される黒ささげも、少量だが栽培されている。

2015年7月4日土曜日

桜の葉

○桜の葉(さくらのは)

 バラ科の落葉高木、または低木である桜の葉を乾燥させた製品。桃の節句(雛祭り、3月3日)によくつくられる桜餅の材料として欠かせない。静岡県の松崎を中心に伊豆地方で生産されている。桜餅は江戸時代から庶民の間で親しまれてきたが、桃の節句のとき添えられるようになったのは比較最近のことである。

【生 態】

 どの桜の葉でも食用にすることはできるが、伊豆半島や伊豆諸島、房総半島に自生する大島桜という品種の葉が大きいため、食用に使用されることが多い。3~4月にかけて、白色の花を咲かすのと同時に若葉がしげる。

【製造方法】

 桜の葉は5~9月にかけて摘み取られ、スギの樽に塩漬けされる。スギの樽を使うことによってあくが吸い取られ、きれいな別甲色に仕上がる。

【保存と利用方法】

 桜の葉の香の主成分はクマリンである。クマリンは生のサクラの葉が糖と結合し、塩水に浸かって加水分解することでうまれる、また、スギの樽に生育している微生物なども影響を与え、独特の風味がうまれる。近年は桜の葉の乾物はあまり出回っていない。

2015年7月3日金曜日

米粉

○米粉(こめこ)

 イネ科の一年草であるイネの種実を脱穀・精米し粉砕した製品。米を粒のまま主食として食べ、米の粉は菓子や副食などに加工する日本人にとって、米文化は知恵の結晶である。そのルーツは古代より伝来してきた文化でもある。古くから粉食がされており、精米を水に浸けてふやかし、杵でついて粉砕して丸めたものが「しとぎ」と呼ばれていた。平安時代には「神前に供える餅の古名」であったといわれている。

 諸外国では、しとぎは主食とされたが、日本では、奈良時代に唐から米粉を利用したさまざまな唐菓子が伝来されたのが始まりで、菓子として発展していった。干し米を油で煎り麦や米の粉を練って油で揚げて、果物や木の実を模したものであったが、平安時代からさらに発展して色も形も多彩になり、「粽」「草餅」「柏餅」など和菓子のルーツも多数登場した。

 鎌倉、室町時代には宋や元から禅宗とともに食にまつわるさまざまな文化が伝来した。軽食、喫茶の習慣が伝わるのと同時に、点心や茶菓子として饅頭や羊羹が伝えられた。

 農業の発達によって収穫量が増えるとともに、宋、明、琉球から砂糖の輸入も増加して甘い米粉菓子が増えていった応仁の乱ののち、中国の食習慣や食品が庶民の間にも広がることによって、桃の節句に草餅、端午の節句にちまきをつくるなど、年中行事の際につくられるようになった。

 安土・桃山時代になると、武家、公家、庶民の食生活の融合がすすみ、茶を飲んで菓子を食べる習慣が広まっていった。南蛮菓子、カステラなどが伝来されたのもこの頃である。このような変遷を経て、江戸時代で茶の湯に用いる「上菓子」が京都、江戸でつくられるようになり、米の粉を使った和菓子作りがどんどん発展していったのである。いまの和菓子と呼ばれる材料の米の粉の製法も、、江戸時代に出そろい、さまざまな製品が生まれた。

 農林水産省による食料自給率アップ推進運動の影響で、近年、米の粉を乾麺、生麺や小麦二次加工品に使ったパンやケーキなどが普及し始め、米粉の需要が高まってきている。米の粉の加工方法は大きく分けて2つあり、生の米を製粉する方法と、熱を加えてアルファー化してから製粉する方法がある。また、粘り気が少なく、そのまま主食として食べられている粳米と、粘り気が強く餅に加工されたりする餅米があり、米の用途によって使い分けられている。

 生育方法でも性質は変わり、畑で栽培される陸稲は、水田で栽培される水稲よりも粘り気が強くなるため、糯米作りに利用される。

【生 態】

 イネは最も古い作物のひとつであり、日本列島の北から南まで広く栽培されているが、主食だけに、味、香り、旨味と大変多くのこだわりがある食材である。縄文時代から栽培が始まり、以降、全国に広がるに当たってさまざまな品種改良が行われてきた。

 夏季に水と適度な温度を得ることができる日本は、水田稲作に向いている。苗の田植えが5月の中旬から始まり、稲刈りが9月下旬~10月上旬に北海道や東北地方から始まり、南の地域にいくにつれて時期が遅くなっていく。

 日本だけでなく中国東部、南部、台湾、朝鮮半島をはじめとして東南アジアでも欠くことのできない作物である。メコンデルタ、インドネシアなどでは連作によって年3回も収穫することができる。

【栄養と機能性成分】

 米の粉の栄養は米と同じである。炭水化物が主成分でビタミン、ミネラルなどはごくわずかである。

【主な種類】

●上新粉

 粳米を精米し糠を取り、水洗いしてから製粉した製品。米の粒子は細かい、かたいので製粉する前に水を吸わせてから製粉作業をする。水分が多いと変質しやすいため、普通は再度乾燥してから販売する。粒子が細かくかたい品は「上用粉」、粒子の大きい品を「新粉」、さらに粒の大きい品を「並新粉」と呼ぶ。「だんご」「ういろう」「かるかん」「草餅」「やせうま」などさまざまな和菓子に利用されている。

●白玉粉

 糯米を製粉した製品。糯米を精白し水を吸引させ、ふやけたところをすりつぶして水にさらし、圧縮脱水する。この段階で大きなかたまりになるので、細かく削り、乾燥機に入れて温風乾燥させる。原料とする糯米の質と、精白度により品質は左右される。精白度が高いほど外皮の成分が混じらず、澱粉の比率が多く仕上がるため上質とされる。

 ゆで上げるとやわらかさと弾力があり、冷やしてもかたくならないのが特徴。和菓子の食材として多く使われ、家庭では「白玉だんご」「ぎゅうひ」「おしるこ」「ゆで小豆だんご」「みつまめ」など利用範囲は広い。澱粉を加えたり寒中に晒した寒晒などもある。

●餅粉

 糯米を上新粉と同じく製粉した製品。餅つきをするときに表面にふりかけて、杵や手につかないよう打ち粉としても使う。白玉粉の製造過程との違いは、水浸け、晒しの工程がないので白玉粉より安く製造することが可能な点である。白玉粉より低コストの品として利用され大福、金鍔、桜餅などに利用される。

●団子粉

 上新粉に餅粉、澱粉を配合し、簡単に団子作りができるように考えられた製品。家庭用団子がある。「柏餅」に利用される。

●道明寺粉

 餅米を蒸してから乾燥させ、粉砕してふるいにかけて粒の大きさをそろえたもの。大阪府にある真言宗の尼寺、道明寺で仏前に供えた糒(ほしいい)を貧民に施したのが広く知れわたり、寺の名前から道明寺粉と呼ばれるようになったといわれる。原料は糯米で桜餅、椿餅、お萩、みぞれかんや京生菓子などに利用される。糒とも呼ぶ。

●新引粉

 餅米を蒸して乾燥のうえ砕いて砂煎りし、少々焦がして狐色にした製品。粒の大小によって、どのような和菓子の材料になるか決まってくる。真引粉とも書く。

●味甚粉

 糯米を蒸して作った餅を煎るなどしてアルファー化し、粉にした製品。「焼き味甚粉」「煎り味甚粉」と呼ぶ地方もある。

●寒梅粉

 味甚粉と同じ製法だが、餅を厚焼きにしたものを粉末にしている。寒梅の咲く頃に新米を粉にしたことからこの名がついた。

2015年7月2日木曜日

粉山葵

○粉山葵(こなわさび)

 アブラナ科の多年草であるセイヨウワサビの根茎を乾燥粉末にして、添加物で香りや色付けをした製品。セイヨウワサビはワサビダイコンとも呼ばれ、英語名はホースラディッシュである。生の状態のものをすり下ろして食べる、一般的に「本わさび」と呼ばれるワサビとは異なる。

 ワサビは日本独特の香辛料で、冷涼な気候を好み全国各地の山間部に自生したり、渓流、石垣、ワサビ田で栽培されているが、セイヨウワサビは日本では主に北海道で生産されている。中国やカナダからの輸入が多い。

 チューブ入りで市販されている練わさびはセイヨウワサビの粉末を練ったものや、クロロフィル、澱粉、セイヨウカラシなどを混合したものが多い。練りわさびよりは水で溶いた粉わさびのほうが風味、味ともにまさる。

【栄養と機能性成分】

 セイヨウワサビの辛味の成分はアリルイソチオシアネートで、ワサビやマスタードの辛味と同じ成分である。

【保存方法】

 缶入りが市販されているが、業務用は袋に入っているため湿気のないところに密閉して保存する。

2015年7月1日水曜日

芥子の実

○芥子の実(けしのみ)

 ケシ科の一年草であるケシの実を乾燥させて煎った製品。室町時代の日明貿易によってもたらされた。種子を煎ると香ばしい香りがあり、あんぱんやケーキの上に少量ふりかけたり、七味唐辛子の薬味などに混ぜて利用されている。麻薬の原料となることから日本では阿片法で栽培が禁止されている。

2015年6月30日火曜日

粉山椒

○粉山椒(こなさんしょう)

 ミカン科の落葉低木であるサンショウの実の皮を乾燥粉末にした製品。新緑の頃、サンショウの葉は緑鮮やかになり、和食の焼き物、煮物、特にタケノコに添えられる。未熟な果実は佃煮にして、縮緬雑魚と混ぜて食べられる。

【生 態】

 日本全国で栽培され、朝鮮半島にも分布している。「椒」の字は「芳しい」を意味することから、山の香り高い実ということで「山椒」の名がつけられたという。

【利用方法】

 鰻の蒲焼きの臭み消し、七味唐辛子の材料などに香辛料として利用される。

2015年6月29日月曜日

コーンスターチ

○コーンスターチ

 トウモロコシ澱粉のこと。乾燥させたトウモロコシの殻粒を亜硫酸液に数十時間浸けてやわらかくしてから、荒く砕いて胚芽を取り除く。乾燥して製造する。澱粉の中でも粒子が小さいため、工業用糊や水あめ、クッキー、バウムクーヘン、ソーセージ、水産加工練製品などに幅広く利用されている。

2015年6月28日日曜日

凍り豆腐

○凍り豆腐(こおりどうふ)

 豆腐を凍結、熟成、解凍、場合によっては膨軟加工した乾燥させた製品。凍り豆腐の材料である豆腐の歴史は古く、今から1200年前、最澄が中国から持ち帰ったといわれている。凍り豆腐の由来にはさまざまな説がある。

 鎌倉時代、紀州(和歌山県)の高野山に住む高僧が精進料理として食べていた豆腐が冬の厳しい寒さで凍ってしまい、翌朝それを溶かして食べたところ食感がおいしかったことからつくられるようになったという説がある。その高野山にちなんで関西地方では高野豆腐と呼ばれるようになったという。

 また、冬場の食材としてつくられていた「一夜凍り」の、吊るして自然に乾燥させる作り方が室町時代・安土桃山時代の頃に発見され定着し、保存食になったという説もある。長野県では凍ることを「凍(し)みる」という方言から凍み豆腐と呼ばれるようになった。武田信玄が農家につくらせ、信州佐久地方に兵糧食として広めたともいわれている。

 江戸時代に入ってからは飛騨(岐阜県)、信州、東北地方を経て松前(北海道)にいたる東日本各地で作られるようになり、現在ではおもに長野県で生産されている。

【名 称】

 凍り豆腐、高野豆腐などの名称で知られている。地域によって、呼び名は異なる。凍み豆腐、ちはや豆腐、連豆腐、一夜凍り、一夜氷とも呼ばれているが基本的には同じものである。日本農林規格(JAS)では、「凍り豆腐」とされている。

【製造方法】

 現在出回っている凍り豆腐は、主に次のような人口冷凍方法でつくられている。

1.ダイズを水に浸けてすりつぶし、煮てからおからを分離して豆乳をつくる。
2.豆乳ににがりを加え函のなかでかためる。この豆腐は一般的に市販されている豆腐よりややかためにつくる。
3.切断して急速凍結してから熟成する。
4.解凍後脱水してから温風で乾燥する。

 明治末期に工業化されて以降、よりやわらかい凍り豆腐に仕上げるために、さまざまな製法が開発されてきた。1925年に開発された、澱粉を配合してやわらかくする製法は今も活かされている。また、アンモニアガス加工法なども開発されたが、臭いが強いため、のちに開発された重炭酸ナトリウム(重曹)を加える膨軟化加工法にとってかわった。

 これらの発明の多くがみすず豆腐、旭松豆腐など長野県の企業人によって開発・改良された。長野県では、全国の凍り豆腐生産量の80%強が製造されている。

【主な種類】

●福島立子山凍み豆腐

 福島市郊外の立小山の冬は寒さが厳しく、農家の農閑期の収入源としてつくられたのをきっかけにして、凍み豆腐つくりが始まったといわれている。最盛期には60軒ほどの農家があったが現在は7軒と少なく、ネット販売が主である。

 豆腐を水切りして薄く切り、氷点下の夜に凍らせて稲わらで結び軒先に吊るす。吾妻連峰からの風で乾かして作っている。すべてが天然凍結、天然乾燥でつくられるため、機械で乾燥凍結されたものよりも風味がよく、なめらかな舌ざわりのため人気がある。

●岩出山凍み豆腐

 宮城県大崎市岩出山産の「ミヤギシロメ大豆」を使った凍み豆腐。膨軟剤を使わない1840年頃の製法で製造しており、弾力のある食感が特徴である。

【栄養と機能性成分】

 タンパク質を50%、脂質を30%含んでいる。大豆タンパク質のレシチンによるコレステロール低下作用や、ペプチドによる血圧制御作用に注目が集まっている。また脂質が多く、不飽和脂肪酸のリノール酸が動脈硬化を予防するといわれている。

【品質の見分け方】

 褐色に変色しているものを避けて選ぶこと。脂質が多いため、陳列中に高温や強い光線に長時間さらされると脂肪酸が酸化してしまうので陳列環境に注意して購入すること。

【保存と利用方法】

 凍り豆腐は腐りにくく、賞味期限は6ヶ月ほどである。酸化を防ぐためには、買ってきたパッケージのまま光の当たらない涼しいところで保存し、空けたものは密封保管してなるべく早く使う。湿気を嫌い、カビなどが生えやすいのでポリ袋に入れて保存する。

 凍り豆腐をよく見ると無数の穴が開いているのがわかる。穴によって表面積が広がっている分、空気中の臭いが付着しやすいため、臭いの強いものと一緒に保管しないこと。

2015年6月27日土曜日

凍り蒟蒻

○凍り蒟蒻(こおりこんにゃく)

 蒟蒻を凍らせて水分を抜き乾燥させた製品。最近では、洗顔用のスポンジとしても市販されている。蒟蒻の原料であるコンニャクイモは、東南アジアで栽培され、中国を経て日本に伝来されたものとされている。

 1858年(安政5)に常陸の国の中島藤衛門が製粉法を発明し、水戸藩の財政上から奨励され、全国に広がった。大阪乾物問屋の資料によると、氷豆腐より100年ほど早く取引が始まっていたという。現在、凍り豆腐は精進料理などで有名であるが、凍り蒟蒻は茨城県周辺での生産量が最も多く、ほかの地域ではほとんど生産されていない幻の食材である。

 日本で凍り蒟蒻がいつごろから生産されたのかは不明だが、江戸時代の頃から農閑期の副業として盛んに作られてきたという。現在の主な生産地は茨城県の山間地で、いずれも農閑期である冬の季節に農家によって製造されている。

【生 態】

 蒟蒻の原材料であるコンニャクイモはサトイモ科の多年草で、火山灰を含んだアルカリ性の土地でのみ育つ。蒟蒻の生産量が最も多いのは群馬県である。凍り蒟蒻の主な産地は茨城県常陸太田市で、特産品としてこの地区で数件の農家が生産している。

【製造方法】
1.蒟蒻を薄く切り石灰の水に浸ける。
2.田畑に藁を敷き詰め、約3mmの厚さでハガキ大に切った蒟蒻を丹念に並べ水をかける。
3.蒟蒻は夜から朝にかけて凍る。そののち、昼間の直射日光を当ててゆっくり解凍させて水をかける。
4.この作業を約20日間繰り返すうちに蒟蒻の水分が抜けスポンジ状になる。色も灰色から白色に変化する。
5.仕上げにしっかり乾燥させる。

【栄養と機能性成分】

 カロリーゼロで繊維質やカルシウムを多く含む食品である。

【保存と利用方法】

 水にぬらさず保存すれば50年経っても食べることができる。利用する前に水に浸け、やわらかくなったら石灰分が出るようによくもみ出し、水を搾っておく。醤油、砂糖、みりんなどで味付けをしたり、てんぷら、フライ、吸い物の具としても利用できる。

2015年6月26日金曜日

胡桃

○胡桃(くるみ)

 クルミ科の落葉高木であるクルミの実の核を乾燥させた製品。美しい肌と頭脳の持ち主であったという中国清朝時代の西太后の美と健康長寿の秘訣は胡桃のお汁粉だったという言い伝えがある。

 カロリーが高いため食べ過ぎもよくないので、1日2~3個を目安に食べるとよい。殻がかたいので日持ちするが古いものは油の臭いがする。酸化しているサインなので、食べるのは避ける。

【生 態】

 原産地はヨーロッパ西部からアジア西部とされ北半球の温帯地域に広く分布する。日本に自生しているクルミの大半は鬼胡桃という品種である。肉質の外果皮とゴツゴツとして堅い内果皮(核)のなかに子葉(可食部)があるため取り出しにくい。

 長野県などが生産日本一で菓子胡桃という品種が多く栽培されている。鬼胡桃のほか、姫胡桃などが存在する。近年は中国、アメリカのカリフォルニア州産のものが多く輸入されている。

【製造方法】

 クルミは、5~6月にかけて開花し、秋の刈り入れの頃に実をつける。そののち自然に落下する。あくが強いのでゴム手袋などを装着して拾い集める。収穫したら、畑の土に埋めて外果皮が腐るまでおき、これを水で洗い流し核を取り出し乾燥する。

 鬼胡桃や姫胡桃の殻は大変かたく割れないため、実を取り出すには専用の胡桃割り器かハンマーを用いる。菓子胡桃は核同士を縦筋に合わせて手のひらで握りつぶせば簡単に割れる。

【栄養と機能性成分】

 黒味はカロリーが高く、利用質なタンパク質、脂肪、ビタミンB1、B2、ビタミンC、ミネラルが豊富に含まれている。胡桃の脂肪にはコレステロールを取り除くリノール酸が多く、高血圧や動脈硬化を予防する。

【保存と利用方法】

 常温で湿気のないところで保存する。日本料理の胡桃和え、胡桃甘煮、和菓子、胡桃餅、胡桃汁、洋菓子などに多く利用される。

2015年6月25日木曜日

葛粉

○葛粉(くずこ)

 マメ科の一年草であるクズの根から採れる澱粉質を精製した粉。クズは秋の七草のひとつであるが、葛切り、葛素麺、葛餅などの葛粉を利用した製品は、その涼やかな口当たりから夏の冷たい和菓子などに多く用いられている。また、葛粉は澱粉類の中で、最高級とされている。

【名 称】

 葛芋(クズの根の部分)を12~3月頃に掘り出し、加工した製品を本葛粉と呼ぶ。葛粉は薬効をもち、多少の苦味がある。

【生 態】

 クズはつる性の植物である。30~50年の長きにわたり地下で育ったクズの根は、長さ1m、直径約20cmにもなる。本葛粉は生産量が少なく効果であるため、一般にはじゃがいも澱粉、薩摩芋澱粉、コーンスターチなどを混入したものが出回っている。

【製造方法】

1.クズの根を繊維状に粉砕する。
2.真水で洗い、その絞り汁から澱粉を沈殿させ、上水を捨てる。
3.真水を入れて攪拌し、下に沈んだ良質な部分だけを取り出す。
4.さらにあく抜きのために真水を入れて攪拌し、沈殿させて上水を捨てる。
5.以上のような精製作業を何回も繰り返したのち、絹ですくい上げて乾燥させる。

【主な種類】

 奈良県の吉野葛、三重の伊勢葛、福井県の若狭葛、福岡県筑前の秋月葛などが有名である。

【加工品】

●葛切り

 葛粉を水で攪拌して熱加えたのち、氷水に入れて冷やし、麺状にして乾燥させた製品。京都府や奈良県などの観光地では、夏の冷涼として黄粉や黒蜜などをつけて食べられており、精進料理やお茶漬けなどでも人気である。

 用途は春雨と同様だが、昔は葛切りのほうが多く食べられていた。葛澱粉を取り出す作業に手間がかかるため、葛切りは春雨より高価である。春雨の凍結製法と非凍結製法と同じ原理の製造方法を用いるが、糊化、温度、熟成時間、熟成方法、原料配合(混合比率)などは専用業者によって異なる。最高級品は「吉野本葛」とされている。

●葛素麺

 本来、葛粉を水でこねて沸いた湯の中に細く落としてゆでたものを乾燥させた製品である。しかし、現在販売されている製品は澱粉を煮て糊をつくり、その糊で澱粉をこねて生地を作り製麺機にかけて製麺したものや手延製法でつくりあげた手延葛素麺などである。

【栄養と機能性成分】

 葛粉はイソフラボンを含んでおり、体を温め血行をよくする。また更年期障害や骨粗鬆症、前立腺がんなどの改善効果があるとされている。

【品質の見分け方】

 本葛には原材料、原産地名の表示義務がないため、原材料表示をよく確認する。本葛、あるいは葛澱粉と記されたものが本葛であり、葛粉と表示されているものは、ほかの澱粉と混ぜた製品である。

【保存と利用方法】

 湿気を含むとかたまってしまうので、密閉容器や缶などに入れて保存する。中華料理のとろみ付けなどに利用すると料理が冷めにくくなる。冷えるとかたまるため和菓子や洋菓子など、いろいろな用途がある。

2015年6月24日水曜日

銀杏

○銀杏(ぎんなん)

 イチョウ科の落葉大高木であるイチョウの種子を乾燥させた製品。イチョウの原産地は中国といわれている。仏教の伝来とともに朝鮮半島を経て日本に伝来し、神社、寺院などに多数植えられるようになった。現在は街路樹などに多く見られる。

 ぎんなんは古くから食用として親しまれているが、外種皮に独特の臭いがある。外種皮の中に、かたく白い種皮(鬼皮)に包まれた種子(胚乳部分)が入っており、取り出すのに手間がかかる。

 秋高くなると、街路樹にされているイチョウの木などにもぎんなんの実がなり、気軽に拾うことができるが、直接実に触ると手がかゆくなるので必ずゴム手袋をしてから拾う。

 拾った実を数日間土の中に埋めておくか、川などで攪拌しながら表皮をむき、よく洗って乾燥させればあとは調理して食べることができる。店頭で選ぶ場合は、白く丸みがあり、つやのあるものを選ぶ。茶碗蒸しや鍋物などの料理の引き立て役になることが多い。あまり食べ過ぎると吐いたり、鼻血が出たりするので少しずつ食べるようにする。炒めたぎんなんは咳、痰、保湿効果があるといわれている。

【生 態】

 秋の早い時期から実がなり始め、11月過ぎに実が入ってくるので収穫する。イチョウの木は落葉樹で雌雄異株。4月に若葉と同時に花が咲き花粉が風に乗って雌花につき、秋になると精子を出して雌花の中で受精する。

【主な種類】

 東北地方から九州地方にかけて採取できるが、産地は秋田県、新潟県、愛知県、福岡権、大分県などが有名である。なかでも大分県産の丸ぎんなんは実が大きく人気がある。品種は金兵衛、久寿、藤九郎などがある。

【栄養と機能性成分】

 脂質、糖質、タンパク質、ビタミンA・B群、ビタミンC、鉄分、カリウムなどを含む。滋養強壮の薬膳として人気がある。

【保存と利用方法】

 乾物扱いではあるが、種子は水分が多いので高温になるとカビが生える。長期間経つと水分が蒸発してカラカラになるので、その前に加工する。殻のままビニール袋などに入れて冷暗所か冷蔵庫で保管する。

2015年6月23日火曜日

○黍(きび)

 イネ科の一年草である黍の種子を乾燥させた製品。岡山県名物の吉備団子は、桃太郎の話に出てくるごほうびの「きび団子」の名前でも親しまれている。きび団子はもともと黍を材料につくられていたが、いまは白玉粉(糯米の粉)やマキビを使ってつくられている。

【名 称】

 種子は淡黄色で大粒。粳黍と糯黍の2種類に分けられるが、中間的な品種が多い。糯黍のほうがよく食べられており、粳黍は小鳥の餌にされることが多い。原産地はアジア中央部から東部にかけてだといわれている。

 日本手には、米、麦、粟、稗などよりも少し遅れて中国から伝来したとされる。実が黄色いことから「黄実」となり、「きび」と呼ばれるようになったといわれている。五穀豊穣のひとつに数えられている作物である。

【生 態】

 イネより短期間で育ち、荒地などでも栽培ができることから昔は広く栽培されていた。しかし、近年はオーストラリアなどから一部輸入されている。ほかの穀物と合わせて五穀米として利用されている。

【栄養と機能性成分】

 タンパク質、鉄分、亜鉛が含まれており、米や麦に劣らず栄養がある。

【保存方法】

 開封した黍は、密閉容器に入れ冷暗所で保存する。

2015年6月22日月曜日

木耳

○木耳(きくらげ)

 キクラゲ科のキノコであるキクラゲを乾燥させ加工した製品。形が人の耳の形に似ていることから「木の耳」という意味で「木耳」の名になったといわれている。

【生 態】

 おもに中国、韓国で栽培されており、天然と菌床栽培がある。春先から梅雨時にかけてケヤキ、クワ、ブナなどの広葉樹の樹木や枯れ木に発生する。ゼラチン質で、乾燥すると軟骨質になる。

 食感が海のくらげに似ていて、こりこりとした歯ざわりが楽しめる。かたちは不規則で円錐形など変化に富む。表面は柔らか。最近では日本国内でも、群馬県、熊本県などで生産されているが量はわずかである。中国の吉林省、黒龍省などが多く輸入されている。

【主な種類】

●黒きくらげ

 一般的なきくらげで中華料理、野菜炒めなどに利用されている。セミとも呼ぶ。中国産が多く、等級も一等から三等まで区別されている。

●裏白きくらげ

 黒きくらげより大きく、表面は黒色で、裏面にビロードのように白い毛が生えている。おもに台湾など暖かい地方で平地に生育する。

●白きくらげ

 シロキクラゲ科のキノコで、クヌギの木に発生する白色のきくらげ。昔から漢方薬の材料として珍重されていたが、最近ではデザートとしてシロップなどをかけて食べられている。中国の四川省などで生産されており、デザートとして利用されるようになってからは、年間を通して販売量が安定するようになった。

【栄養価と機能性成分】

 ビタミンD、鉄分、カルシウム、食物繊維などが豊富に含まれている。

【品質の見分け方】

 肉厚でよく乾燥しており、異物混入がなく、かび臭くないものを選ぶ。

【保存と利用方法】

 高温多湿を避け、瓶などに保管する。精進料理や中華料理、ラーメンの具材のほか、最近では酢の物、チゲ、ナムルなどの韓国料理にも幅広く利用されている。調理前には水で洗ったのち10分以上水に浸けておく。

2015年6月21日日曜日

乾麺類

○乾麺類(かんめんるい)

 ここでは、「干し麺」として市場に出回っている麺を総称して乾麺と呼ぶ。麺の歴史は古く、奈良時代に中国のさまざまな大陸文化とともに、日本に伝来した。当時の書物に、中国の麺をさす「索餅」の名で登場している。

 索餅は小麦粉と米粉を練って、縄のようにねじったものだったといわれている。和名は「麦縄」であり、鎌倉時代の文献にはこの麦縄の名で登場している。「索」は縄を、「餅」は小麦粉を使った食品であることから、索餅と麦縄は同じものだったとみられており、そののち、索餅が「索麺」「素麺」と変化して素麺の名が定着したのではないかとされている。

 また、索餅は伝来した当初、宮中儀式用の供え物として利用されていた唐菓子の一種であったという説もある。平安時代から旧暦の7月7日の七夕のとき、宮中の儀式の供え物にされていたといたといわれている。全国乾麺協同組合では、これにちなんで7月7日を「そうめんの日」と定めて消費拡大を図っている。

【定 義】

 日本農林規格による乾麺類の定義は次の通り。

1.小麦粉または蕎麦粉に食塩、やまのいも、抹茶、卵などを加えて練り合わせたのち、製麺し、乾燥したもの
2.1に調味料、やくみなどを添付したもの。

【主な種類】

 素麺、冷麦、うどんがあるが、これらの違いは基本的に原料ではなく太さの違いである。日本人は特に麺類好きの国民であり、全国にまたがり産地ブランドがある。日本列島は南北に長く、地域により気候が大きく異なるとともに四季がある。

 こうした環境から、麺は多くの食べ方や嗜好の違い、食文化、行事、風習などが顕著に表れている食材であるといえるだろう。よい小麦が収穫できること、よい水があること、そしてよい塩があることがおいしい麺の生まれる大きな要因である。

【製造方法】

 製麺業者により異なるが次の製法が一般的である。

1.小麦または蕎麦粉に食塩を加えてミキサーで混合しこねる(加水率は30~50%)。
2.フィダーをとおして粒状になった生地をろーるに押し込んで麺帯をつくり成型する。
3.さらにグルテンの形成を整えるため2枚の生地をあわせる。
4.熟成させる。熟成時間は製品によって異なり、うどん、冷麦などは長く、蕎麦は短い。
5.麺帯を圧延ローラーにかけて徐々に薄く延ばしていく。
6.切り刃でそれぞれの商品の幅に切り出す。
7.自然乾燥、あるいは扇風機などで除湿乾燥する。
8.麺の特長により長さを調整して裁断する。

【栄養と機能性成分】

 素麺やうどんは小麦粉と塩で作られているので澱粉とタンパク質が多い。ほかの野菜の精進揚げや、三つ葉、かまぼこ、鶏肉、てんぷらなどと組み合わせてバランスよく食べるのがよい。

【保存と利用方法】

 全国乾麺協同組合連合会は乾麺の賞味期間を、手延素麺は製造から3年半、手延冷麦は1年半、手延うどんは1年以内を目安にしている。しかし、保存方法や管理状態で賞味期限は変化する。とりわけ手延べの場合は、製造工程において油を使うため、保存方法によっては変質する可能性が高い。機械製造乾麺の場合の賞味期限は、うどん、きし麺は1年以内、冷麦、蕎麦は1年半、素麺は2年を目安として判断している。

 また、手延麺を湿度管理された場所で保管した場合、「古品」として希少性が高くなる。通常、麺類は秋から冬の寒い時期に製造され、梅雨をこして出荷する。古品は、これを木箱や紙箱に入れて除湿管理して1年以上保管された製品。麺が熟成されるとともに、油返しの臭いがとれてシャキッとした食感がうまれることからギフトなどに人気がある。

2015年6月20日土曜日

干瓢

○干瓢(かんぴょう)

 ウリ科のユウガオを細く割いて干した製品。ユウガオは一般的に「瓢(ふくべ)」と呼ばれている。中国で古くから作られていた干瓢が日本に伝わったのは16世紀初頭のこと。日本で最初の産地は摂州(大阪府)の木津であったといわれている。

 1712年に、藩主鳥居忠秀が近江の国(滋賀県)の水口から下野国(栃木県)の壬生へ領地換えになったとき、ユウガオの種を取り寄せて壬生領内での栽培を奨励したため、栃木県で生産が盛んになったといわれている。

 昭和の末期から日本の農家がユウガオの種を中国に持ち込み、干瓢の生産が始まり1982年から中国産の輸入が許可された。現在では業務用を中心に中国の大連郊外などから多く輸入されている。

【生 態】

 ユウガオは同じウリ科のヒョウタンと近縁である。花が咲いてから30日ほどで丸型、あるいは長形の果実がなる。果実は直径が約30cmにも成長する。ヒョウタンは最古の栽培植物で、原産地はインド、北アフリカといわれている。

 一本の枝に雄・雌の両方がある雌雄同株のつる性植物で、初夏に咲く白い花は夕方咲いて朝しぼむのでミツバチや昆虫ではなく風で受粉する風媒花である。つるは竹竿に巻き付き、長さ1mにもなる。

 栃木県の壬生、石橋、上三上などの土壌は関東ローム層に覆われているため排水がよく、土が軽いため、浅根性で横に広がる性質のユウガオの栽培に適している。また、気候がユウガオの生育に適していることも、作付けが広まった要因である。現在、国産干瓢の95%が栃木県で生産されている。

【製造方法】

 ユウガオは加工の前日の夕方に収穫しておく。加工当日は、午前3時頃のまだ夜が明けない時間からユウガオをむき始める。まず、ユウガオのヘタを鎌で取り、芯の中心に鉄棒を刺し機械で表面の皮をむく。厚さ4cm、幅4~5cmくらいに細く長く実をむいていき、最終的に約2mくらいの長さになる。

 使える部分は表皮肉部分で、中心部は種が多いので使用できない。日が出たらすぐにビニールハウスの中に運び、干し始める。ユウガオの生の状態で重さ1個約6~7kgあるが、1個のユウガオから約150gの干瓢しか作ることができない。以前は農家の軒先などで天日乾燥したが現在はボイラーを使い徐々に除湿しながら乾燥する農家がほとんどである。

 干瓢は空気に触れて酸化すると褐色に変化する。そのため二酸化硫黄で薫蒸する。薫蒸することによって漂白・防腐・防カビ・防虫することができ、保存可能な期間も長くなる。

 二酸化硫黄の残存量は0.5ppm以下と決められている。二酸化硫黄は水に溶けやすい性質があり、干瓢を水で戻したときにはほとんど残存していないが、最近は無漂白干瓢が作られている。

【栄養と機能性成分】

カリウム、カルシウム、鉄、ミネラルなどを含むが、含有量は切干大根より少ない。食物繊維は多く、100g中30.1gある。

【品質の見分け方】

 栃木県の干瓢協同組合では自主検査規格を定めている。干瓢は、製品ごとに幅、筋の量、色、太さ、長さなどのばらつきがあり、また、雨に濡れて染みのついたもの、芯に近い種が付着したものなどが混じっている場合があるので、産地問屋での選別、保存状態などが信用取引において重要となる。等級は特等、一等、二等、ツルに選別される。

 ユウガオは収穫時期により品質が異なる。6月下旬から7月上旬に収穫される一番玉は、あくが強く色がやや黒っぽい。7月下旬から8月上旬に収穫される二番玉がもっとも上質である。収穫時期が遅くなるほど徐々に品質が落ち、かたくなる。収穫時期は9月中旬で終わる。収穫時期末期に収穫したものを末玉と呼ぶ。

 近年は中国大連郊外などで、日本の指導により干瓢を生産している。現在、日本で出回っている干瓢の多くは中国産である。その年の出来高で価格相場大きく動く。

【保存と利用方法】

 軽く水洗いし少量の塩を振って、両手で弾力の出るまで揉み洗いする。そののち、水かぬるま湯に5~10分浸して水気を切り、好みのかたさまでゆでる。保存は湿気が入らないよう、ポリ袋や缶などに入れて保存する。

2015年6月19日金曜日

乾燥舞茸

○乾燥舞茸(かんそうまいたけ)

 サルノコシカケ科のキノコであるマイタケを乾燥し加工した製品。生のマイタケと比べて栄養価は変わらないが、保存性は高まる。冬の鍋物などの具材として利用されている。

【生 態】

 天然のマイタケはマツタケに次ぐ高級品で、おもに秋田県などで採取される。現在では菌床栽培した製品が主流で、特に新潟県で栽培が盛んである。

2015年6月18日木曜日

芥子粉

○芥子粉(からしこ)

 香辛料の芥子粉には「和からし」と「洋からし」がある。ブラックマスタードの種を粉末にした「黒からし」が「和からし」とされてきたが、最近はカラシナの種を粉末にしたものを「和からし」と呼び、それを水で練ったものが「練りからし」として市販されている。

 「洋からし」はホワイトマスタードの種を粉末にしたもので、これに水や酢、小麦粉を加えたものがマスタードとして市販されている。天然の色素であるウコンを使用して鮮やかな黄色に着色している。

【生 態】

 カラシナはアブラナ科の越年草である。中央アジア原産といわれ、インド・中国を経て日本に伝わってきた。日本では北海道や東北地方で栽培されている。

【栄養と機能性成分】

 カリウムを多く含みカルシウム、リン、鉄などが豊富である。

【保存と利用方法】

 湿気を嫌うので缶に入れて保管する。ぬるま湯を加えてよく練り、10分ほどおいてから利用する。春野菜のおひたし、おでん、納豆などに利用できる。料理の範囲は広い。

2015年6月17日水曜日

勝栗

○勝栗(かちぐり:搗栗)

 ブナ科の栗の実を殻のまま干して、殻と渋皮を取り除いた製品。岩手県の一部では押栗とも呼ばれる。小ぶりなシバグリで作られることが多い。

 「勝ち」に通じることから出陣や勝利の祝い、正月の祝儀などに用いられてきた。現代では選挙、受験、競技などのときの演技担ぎなどに人気がある。

 日本では野生のシバグリが多くみられる岩手県、長野県、宮崎県などが主産地であるが、中国、韓国からの輸入も多い。

【製造方法】

 クリを生のまま天日で乾燥し、臼でついて砕き甘皮と渋皮を取り除く。

【保存と利用方法】

 湿気のないところで、袋か瓶で常温保存する。利用するときは、重曹を少々溶かした水に2~3時間浸けて、中火で豆と同じように煮る。

2015年6月16日火曜日

片栗粉

○片栗粉(かたくりこ)

 本来は、山野に自生するユリ科の多年草であるカタクリの地下茎からとった澱粉のこと。しかし、現在は、カタクリの地下茎が細く澱粉の抽出に手間がかかるため、生産は難しく、効率的でないのでほとんどが作られていない。ジャガイモの澱粉を片栗粉という名前で販売してもよいように商標登録されている。

2015年6月15日月曜日

柏の葉

○柏の葉(かしわのは)

 ブナ科の落葉高木であるカシワの葉をゆでてあく抜きした製品。新粉餅で餡を包んで蒸したものを、柏の葉でくるんだ「柏餅」は端午の節句(5月5日)につくられる供え物である。カシワはブナ科の植物で、新芽が出るまで古い葉が落ちないことから「子孫繁栄」、「子供が生まれるまで親は死なない」といういわれがあり、端午の節句以外の祝い事でも利用される。

 餅に柏の葉を使用するのは東北、信越、関東地方が多い。山地は長野県から青森県に移動し、近年は韓国、中国などから輸入されている。収穫時期は春。関西、四国地方などでカシワが自生していない地域では、サルトリイバラ科の葉を代用しているところもある。

【保存と利用方法】

 利用前に下準備をする。水に浸してからゆでてあく抜きする。近年は利便性から塩漬けしたものや、ビニールでパックしたものが輸入されている。季節時だけ売れることから販売期間が短く、夏は気温が高くなるため、害虫が発生しやすくなる。葉は食べられないことはないが、おいしくないので食べない。

2015年6月14日日曜日

豌豆豆

○豌豆豆(えんどうまめ)

 マメ科の一、二年草であるエンドウの種子を乾燥させた製品。エンドウには、未熟なさやをサヤエンドウとして食べる品種もあるが、種子を乾物に加工する場合は乾燥実子用の品種を使用する。

【生 態】

 原産地が中近東地域で、冬に雨が多い地中海性気候であったことから、秋に種をまき、翌春に収穫される。夏は成長期ではない冬の寒さが厳しい東北地方や北海道では春まきして、初夏に収穫する。連作障害をおこしやすく、酸性土壌にも弱い。

【主な種類】

●青えんどう

 缶詰や煎り豆などの豆菓子。甘煮のうぐいす餡などに利用される。生のまま、あるいはゆでた上体で流通する場合はグリーンピースの名で呼ばれている。

●赤えんどう

 塩ゆでしたものがおつまみとして人気があったが、現在ではみつまめなどに使われるが需要はわずかである。

2015年6月13日土曜日

荏胡麻

○荏胡麻(えごま)

 シソ科の一年草であるエゴマの実を乾燥させて煎った製品。近年の健康志向の高まりにともない、リノール酸やオレイン酸を豊富に含んでいるとして、エゴマの種子から搾った荏油が注目されている。

 町おこしとして福島県、長野県などで製造販売しているが、生産量が少なく高価なため、まだ多くは普及していない。名前からしてゴマの仲間だと思われがちであるがゴマではなく、シソの近縁である。

【生 態】

 インド・中国の原産とされてる。「荏」、「十念」と呼ぶ地域もある。煎ってそのまま飾りとして利用したり、油をとるために栽培されている。韓国では葉を焼肉と一緒に食べるのが一般的である。長野県、岐阜県などでは、種をすりつぶし「荏胡麻味噌」として五平餅に塗って食べられている。ゴマと同様に使えるが、皮がかたいので煎ってから調理する。

2015年6月12日金曜日

浮粉

○浮粉(うきこ)

 小麦粉澱粉のこと。小麦粉に水と食塩を加えながら揉むとタンパク質はかたまり、小麦粉に含まれるデンプンは水と一緒に流れ出る。それをふるいで水と分離し乾燥させると、本葛粉に似たかたまりになる。これを製粉機で粉にしたものが浮粉である。葛餅などの和菓子のほか、関西ではかまぼこの増粘剤として利用されている。

2015年6月11日木曜日

隠元豆

○隠元豆(いんげんまめ)

 マメ科の一年草であるインゲン豆の種子を乾燥させた製品。原産地は中南米一帯で、紀元前から栽培が始まりメキシコを中心として広まっていったとされている。江戸時代初期に、明の隠元禅師が日本に渡来しもたらしたという逸話が命名のもとになったが、隠元禅師が実際になんの豆を持ち込んだのかは定かではない。

【生 態】

 非常に品種が多く、日本全国でそれぞれの土地に合う適正品種を選んで栽培している。得に北海道の生産量が多く、現在は国内生産量の約90%を生産している。

 また、豆類の中では大豆の次に輸入量が多く、輸入品は甘納豆や菓子に利用される。比較的成長が早く、年に3回も収穫できることから場所によっては三度豆などの呼び名もある。

【主な種類】

●大福豆

 白いんげん豆の一種。粒大きく味もよいことから需要が多く、最高級品とされている。甘納豆や煮豆、きんとんなどに利用される。

●手亡豆(てぼうまめ)

 白いんげん豆の一種。つる(手)がなく、枝に直接実るため「手亡」と呼ばれる。豆の大きさによって大手亡、中手亡、小手亡と呼び分けられてる。白餡の原料として利用される。

●金時豆

 種皮が濃い赤色の品種。いんげん豆の中で国内栽培量が最も多い。「福勝金時」「丹頂金時」など、さまざまな新種が開発されているが、北海道帯広の大正町で量産が始まったことからその名がついた「大正金時」が有名である。おもに甘納豆、煮豆などに利用される。

●うずら豆

 灰褐色の種皮に茶褐色の斑点模様がある品種。鳥のウズラの卵に似ていることからこの名がついた。本長、中長、丸長など、さまざまなかたちの種類がある。

●虎豆

 白い種皮に虎の皮に似た斑点がある品種。アメリカから伝来した。澱粉の粒子が細かく粘りがあるため、煮豆に最適とされている。

●紫花豆

 赤紫の種皮に黒い斑点がある品種。インゲンマメと同属だが、ベニバナインゲンというマメ科の多年生つる草の種子である。日本では江戸時末期に伝来した。赤い美しい花をつけるため、当初は観賞用に栽培されていた。大粒で食べ応えがあるため、甘納豆や煮豆に利用される。

 東北地方などの涼しい地域や、長野県や群馬県などの標高が高く冷涼に地域で栽培された紫花豆は「高原花豆」の名前で販売されていることが多い。

●白花豆

 ベニバナインゲンの一種。種皮や花が白く、白インゲン豆などと呼ばれることもある。

●紅絞り豆

 虎豆と金時豆の交配種。紅白の模様から縁起物として珍重されている。煮豆やスープなどの料理に利用され、煮るとピンクになる。生産量は少ない。

 このほか、パンダ豆、キドニービーンズ、ビルマ豆、カナリオビーン、カリオカ豆、クランベリービーンなど輸入品を含め数多くの種類がある。

【栄養と機能性成分】

 大豆に比べるとタンパク質と脂質が少なく、炭水化物が多い。ミネラルやビタミンB群、食物繊維が豊富である。

2015年6月10日水曜日

煎り糠

○煎り糠(いりぬか)

 生糠を煎った製品。玄米を精米するときに生じる副産物である生糠は、そのままだと雑菌が多く、発酵してしまったりするので保存性が悪い。これを煎ることで利便性を高めたのが煎り糠である。

 玄米を白米にすると約10%の生糠が出る。生糠は非常に脂肪分が多いため、抽出精製し米油として、あるいは化粧品などに利用されている。日本の漬物に欠かせない「糠床」や飼料用、キノコの栽培などに利用されている。

【製造方法】

 市販されている家庭用の煎り糠は、干し椎茸の粉、唐辛子、芥子粉、昆布などを配合して「味付け糠」として販売されている。また、糠独特の臭みを取るためにビール酵母菌などを配合したものもある。

【栄養と機能性成分】

 タンパク質やビタミンB1、ミネラルなどの栄養の宝庫だが、直接食べるものではないため、多く摂取することは期待できない。

【保存方法】

 糠を煎ったものではあるが、虫などが発生しやすいので缶に封入するが、早めに使うようにする。

2015年6月9日火曜日

芋茎

○芋茎(いもがら)

 サトイモ科の多年草であるサトイモの葉柄(茎)を乾燥させた製品。山形県、福島県、新潟県などで需要が多い。冬場の乾燥野菜として利用される製品である。葉柄の表皮をむいてから乾燥させることが多いが、表皮をむかずにそのまま荒縄でしばり軒先などに干して乾燥させたいもがらもある。

 サトイモは東南アジア、マレー半島などが原産地といわれており、中国を経て日本に伝来し、江戸時代には各地で栽培されるようになった。熊本城を築城するときに籠城を予見し畳の芯になる畳床として用いたことや、太平洋戦争のとき乾パンの原料に用いたという逸話がある。

【名 称】

 生の葉柄を「ずいき」と呼ぶが、いもがらのことを「ずいき」と呼ぶこともある。葉柄が緑色のカラドリイモやハスイモ(葉柄専用種)などでつくった「青がら」、葉柄が赤紫色のヤツガシラやトウノイモなどでつくった「赤がら」がある。

 また、いもがらの葉茎を2~3つに割いて乾燥したものを割菜と呼ぶ。割菜は、生のまま湯がいて熱いうちに酢をかけて食べられている。

【生 態】

 サトイモは高温多湿を好むが、土質に適応性があるた青森県以南の全国各地でつくられており、それぞれの土地に適した品種が多い。11月頃から霜の降りる12月が収穫期であり、東北地方や徳島県、高知県、和歌山県、熊本県などが産地である。表皮をむくときにあくが出るため、下処理や干し作業など加工に手間がかかる。

【主な種類】

 特別な産地銘柄はなく、どの品種も製造が可能。よく原材料となるのは京都産のエビイモ、ハスイモ、カラドリイモなどである。

【栄養と機能性成分】

 血圧を下げる効果があるといわれるカリウムのほか、カルシウムや食物繊維が豊富。脂肪をほとんど含まない低エネルギー食品である。

【保存と利用方法】

 5月を過ぎるとカビや害虫が発生するので缶や密閉容器に入れて保存する。生でも食べられるので戻し方は簡単。よく洗い水に2~3分浸けるだけでよい。多少のえぐ味があるのを好む人もいるが、えぐ味をとるのは熱湯に浸けて、冷めたら水を取り替えるか煮るとよい。

 味噌汁やほかの野菜などと一緒に煮物や油いために利用する。また干瓢の代わりに紐のように結んだり、海苔巻きなどにする。

2015年6月8日月曜日

餡粉

○餡粉(あんこな)

 餡を乾燥させた粉末状の製品。昔は、米や麦の粉でつくった生地の中に包んだ中身を全て「餡」といった。いまでいう肉まんの中身をさしていたようだが、仏教で肉食が避けられ代わりに豆類が使われるようになっても、そのまま餡といわれたと伝えられている。

 豆は、吸水し、過熱されることで澱粉粒子をタンパク質が薄く包み、なめらかな餡状になる。したがって豆をそのまま乾燥したり、煎って粉にしても餡粉にはならない。豆に砂糖を加えて煮た餡は日本独特の食品であり、さまざまな菓子の食材として利用されている。

【製造方法】

 製造方法によって、さらし餡とこし餡にわけられる。さらし餡は灰汁の少ない味なので、高級菓子に使われる。こし餡は水さらしをしないため、小豆の濃い味が残っている。

●さらし餡

1.小豆を煮てすりつぶし、布で漉す
2.表皮を取り除く
3.水さらしをして水を切り、乾燥する

●こし餡

1.小豆を煮てすりつぶし、布で漉す
2.表皮を取り除く
3.水を切り、乾燥する

【主な種類】

●赤餡

 小豆や、そのほかの赤色の豆(金時豆、うずら豆、いんげん豆など)を原料として、赤色に仕上げた製品。

●白餡

 大手亡豆などの白色の豆(白小豆、大手亡、大正白金時豆など)を原料に白色に仕上げた製品。

【栄養と機能性成分】

 餡の原料は小豆である。

【保存と利用方法】

 水分は6%以下なので、包装資材に傷がなければ1年以上経過しても変化しない。しかし、白餡の豆は脂肪分が比較的多いので、1年以上経つと油臭くなる。湿気のない容器に保存すること。練り餡や生餡はそのまま使えるが、餡粉は鍋に水を加えてかき混ぜてから約30分間静かにおき、水を充分吸って生餡の状態に戻してから砂糖などを混ぜて加熱してから利用する。

2015年6月7日日曜日

○粟(あわ)

 イネ科の一年草であるアワの穂になる果実を乾燥させた製品。日本における五穀のひとつである。現在ではあまり食べられていないが、前後の食料不足に時は粟だけ炊いて粥にしたり、米に混ぜるなどして日常的に食べられていた。

【生態】

 東アジア原産で、穂は黄色く熟し垂れ下がる。生育期間が3~5ヶ月と短いため、ヒエとともに古くから庶民にとって重要な作物だった。日本には、縄文時代に渡来したと考えられている。温暖で乾燥した風土を好み高地でも栽培が可能な作物である。

 粳種と糯種があり、粟餅などの原料となるのは糯種、小鳥の餌などで市販されているのは粳種である。産地は熊本県、鹿児島県などが多く、ほかに長野県、青森県、岩手県、福島県、北海道などでも栽培されている。

【栄養と機能性成分】

 タンパク質、ビタミンB1、鉄分、ミネラルが豊富である。ほかの雑穀と比べてパントテン酸が多い。近年は健康志向から他の雑穀と合わせて五穀米、十穀米として市販されている。

2015年6月6日土曜日

アマランサス

○アマランサス

 ヒユ科の一年草であるアマランサス(ハゲイトウ)の種子を乾燥させた製品。近年の健康食品ブームから実を粉にして小麦粉と混ぜてパン、クッキー、うどんなどに使われたり、煎ってはぜさせたあと、牛乳や糖蜜を混ぜるなどして食べられている。

【生態】

 アマランサスは、約800種があるが、観賞用、野菜用、穀物用に栽培されているのはおよそ10種である。晩夏から初秋にかけて色付く。際゛はいの歴史は古く、紀元前5000年~紀元前3000年頃にアンデス南部でアステカ族が種子を食用とするために栽培していたとされている。それ以降、13世紀のインカ帝国に至るまで、トウモロコシや豆類に匹敵する重要な作物だったという。

 日本には、江戸時代に主に観賞用として伝来した。東北地方では小規模ではあるがアカアワの名前で栽培されるようになった。やがて全国に栽培が広まり、水田転換作物として九州地方などでも栽培され始めた。

【栄養と機能性成分】

 ほかの穀物に比べてタンパク質、カルシウム、脂質、鉄分などを豊富に含み繊維、カルシウム、リン、カリウムなどが多い。栄養価の高い食品である。また、必須アミノ酸も多く含んでいる。葉はクセがないのでおひたしにしたり、てんぷらにもできる。葉は野菜、種子は穀物、花は観賞用と三拍子揃っている。

2015年6月5日金曜日

小豆

小豆(あずき)

 マメ科の一年草であるアズキの種子を乾燥させた製品。昔はよく、農家が自家用に地豆としてアズキを栽培していた。いまは北海道が主産地であるが、ほかの雪国でも春の田植えが終わる頃にアズキの種をまき、秋の稲の収穫が終わる頃にアズキも収穫して「冬よ来い」と待ったものだった。

 瓢箪の中身をくり抜いて実と種を取り除き、囲炉裏で乾燥させて、その長い空洞の中にその年の種豆を入れて保存していた。そして、翌年の春にその種豆をまくのである。秋の収穫のときには、庭先にむしろを敷いて乾燥させていた。乾燥したら長い棹でたたいて莢と豆を分離し、唐箕にかけて風で豆と雑物を選別する。

 赤い小豆は祝の席には必ず登場する。正月の餡子餅、鏡開き、小正月の小豆粥のほか、田植えが終わると牡丹餅、お盆、秋の稲刈りが終わるとお萩、といったように小豆は一年中登場する。甘いものに不足していた時代に人々が心待ちにしていたのは餡子である。小豆がないときには金時豆で代用していたため、いまでもその名残りで、小豆を添えたカキ氷のメニューには金時の名がついている。

【生態】

 ダイズと同じく、昭和初期に北海道開拓政策の換金作物として奨励されたことにより栽培が盛んになった。北海道における畑作の主力作物として広まり、国内生産量の約75%以上が作られるようになった。北海道は、昼夜の寒暖の差が大きいためアズキの生育に適している。昼は温かく夜は冷涼であることから、アズキの糖分が高まり、その糖分が蓄えられるためである。

 豆類全般にいえることだが、連作ができないため輪作をする必要がある。3~4年の間栽培すると特定の害虫・病原体がつくため、収穫量が低下する。豆類の根には根粒菌が共生し、空気中の窒素を固定してアミノ酸や亜硫酸を植物に供給しているが、害虫・病原菌がこの根粒菌の働きを阻害することが収穫量低下の原因と考えられている。

 このような連作障害を防ぐため、イネ科の植物など豆類につく害虫が好まない作物の栽培を組み込んだ輪作が行われている。根粒菌の種類は豆によって異なり、ひとつの根粒菌が繁殖すると他の根粒菌は育たなくなる。そのため、ほかの豆類を育てることもできない。再びその土地で同じ種類の豆を作れるようになるまで採算が合いにくい。そのため広大な土地をもつ北海道が主産地となっている。地域によって異なるが5月中旬頃に種をまき、10月に収穫する。アズキは低温に弱いため開花時期の温度などによって収穫量が左右される。

【製造方法】
 完熟した種子を乾燥させたのち、唐箕にかけて風で石や雑物を除く。

【主な種類】

 粒の大きさによって、普通種と大納言に分けられる。大納言小豆という品種のもので各県農協で定めている自主規格を満たした製品のみが「大納言」の名で販売されている。

●普通小豆

 大納言小豆、白小豆以外の小豆のこと。寒さに強く、他の普通小豆に比べて粒が大きい北海道産のエリモショウズが最も多く生産されている。全国的に栽培されているが、北海道内で国内生産量の約70~80%が生産されている。餡や羊羹、赤飯に利用される。

●大納言小豆

 大粒でしっかりとした品種。北海道大納言や、兵庫県の丹波大納言などある。皮が破れにくく煮崩れしないため、それを生かして甘納豆やし鹿の子などの和菓子に利用される。

●白小豆

 種皮が白く高級白餡などに使われる。岡山県の「備中白小豆」などが少量であるが栽培されている。

●嫁小豆

 白い斑の入っている品種。福島県相馬市でのみ栽培されている。

【栄養と機能性成分】

 ダイズよりもタンパク質と脂肪が少なく、比較的炭水化物の占める割合が高い。インゲンマメと成分がほほ同じで、主成分は炭水化物であり、糖質、ビタミンB1などが含まれている。また、鉄、亜鉛のほか、アントシアニン、サポニンなどの機能性成分も豊富である。

【保存と使用方法】

 密閉容器に入れて涼しいところにおいて保存する。小豆は皮がかたいため長期保存にむいているが、2年目になると色が少し濃くなり渋みも少し強くなる。また、煮る時間も長くなるので、今年度製造された製品を選ぶ。

 小豆に火をかける前に、水につけて吸水させるのが基本だが、小豆は粒が小さく皮がかたいので吸水なしで、いきなりゆでてもよい。その場合は、吸水させた場合よりも20分ほど長く煮る必要がある。ただ新豆は皮が薄いので、吸水させたほうがゆっくり膨らみ皮が破れにくくなる。

 吸水の水温が高いと腐敗しやすいので、冷蔵庫などに入れて浸水するとよい。ゆでるときには鍋の中で豆が踊らないように、必ず落し蓋をする。沸騰したら水を取り替えて弱火にして、あくを取りながら煮るとすっきりと風味よく仕上がる。 

2015年6月4日木曜日

麻の実

○麻の実(あさのみ)

 アサ科の一年草であるアサの実を乾燥させて炒った製品。七味唐辛子やがんもどきを食べたとき、プツンと歯に当たる種が麻の実である。最近はがんもどきなどに入っていることは少なく、懐かしい食品のひとつである。

【生態】

 原産国は中央および西アジアである。アサはおもに繊維をとるために栽培されているが、実は食用にもされる。そのまま噛むと独特の香りがあり、軽く焼くとより香ばしくなる。実には少量の麻酔性物質があるため、日本ではアサの栽培をすることは禁止されており、販売されているものは発芽しないように炒ってある。近年はほとんどが輸入品である。