2015年6月5日金曜日

小豆

小豆(あずき)

 マメ科の一年草であるアズキの種子を乾燥させた製品。昔はよく、農家が自家用に地豆としてアズキを栽培していた。いまは北海道が主産地であるが、ほかの雪国でも春の田植えが終わる頃にアズキの種をまき、秋の稲の収穫が終わる頃にアズキも収穫して「冬よ来い」と待ったものだった。

 瓢箪の中身をくり抜いて実と種を取り除き、囲炉裏で乾燥させて、その長い空洞の中にその年の種豆を入れて保存していた。そして、翌年の春にその種豆をまくのである。秋の収穫のときには、庭先にむしろを敷いて乾燥させていた。乾燥したら長い棹でたたいて莢と豆を分離し、唐箕にかけて風で豆と雑物を選別する。

 赤い小豆は祝の席には必ず登場する。正月の餡子餅、鏡開き、小正月の小豆粥のほか、田植えが終わると牡丹餅、お盆、秋の稲刈りが終わるとお萩、といったように小豆は一年中登場する。甘いものに不足していた時代に人々が心待ちにしていたのは餡子である。小豆がないときには金時豆で代用していたため、いまでもその名残りで、小豆を添えたカキ氷のメニューには金時の名がついている。

【生態】

 ダイズと同じく、昭和初期に北海道開拓政策の換金作物として奨励されたことにより栽培が盛んになった。北海道における畑作の主力作物として広まり、国内生産量の約75%以上が作られるようになった。北海道は、昼夜の寒暖の差が大きいためアズキの生育に適している。昼は温かく夜は冷涼であることから、アズキの糖分が高まり、その糖分が蓄えられるためである。

 豆類全般にいえることだが、連作ができないため輪作をする必要がある。3~4年の間栽培すると特定の害虫・病原体がつくため、収穫量が低下する。豆類の根には根粒菌が共生し、空気中の窒素を固定してアミノ酸や亜硫酸を植物に供給しているが、害虫・病原菌がこの根粒菌の働きを阻害することが収穫量低下の原因と考えられている。

 このような連作障害を防ぐため、イネ科の植物など豆類につく害虫が好まない作物の栽培を組み込んだ輪作が行われている。根粒菌の種類は豆によって異なり、ひとつの根粒菌が繁殖すると他の根粒菌は育たなくなる。そのため、ほかの豆類を育てることもできない。再びその土地で同じ種類の豆を作れるようになるまで採算が合いにくい。そのため広大な土地をもつ北海道が主産地となっている。地域によって異なるが5月中旬頃に種をまき、10月に収穫する。アズキは低温に弱いため開花時期の温度などによって収穫量が左右される。

【製造方法】
 完熟した種子を乾燥させたのち、唐箕にかけて風で石や雑物を除く。

【主な種類】

 粒の大きさによって、普通種と大納言に分けられる。大納言小豆という品種のもので各県農協で定めている自主規格を満たした製品のみが「大納言」の名で販売されている。

●普通小豆

 大納言小豆、白小豆以外の小豆のこと。寒さに強く、他の普通小豆に比べて粒が大きい北海道産のエリモショウズが最も多く生産されている。全国的に栽培されているが、北海道内で国内生産量の約70~80%が生産されている。餡や羊羹、赤飯に利用される。

●大納言小豆

 大粒でしっかりとした品種。北海道大納言や、兵庫県の丹波大納言などある。皮が破れにくく煮崩れしないため、それを生かして甘納豆やし鹿の子などの和菓子に利用される。

●白小豆

 種皮が白く高級白餡などに使われる。岡山県の「備中白小豆」などが少量であるが栽培されている。

●嫁小豆

 白い斑の入っている品種。福島県相馬市でのみ栽培されている。

【栄養と機能性成分】

 ダイズよりもタンパク質と脂肪が少なく、比較的炭水化物の占める割合が高い。インゲンマメと成分がほほ同じで、主成分は炭水化物であり、糖質、ビタミンB1などが含まれている。また、鉄、亜鉛のほか、アントシアニン、サポニンなどの機能性成分も豊富である。

【保存と使用方法】

 密閉容器に入れて涼しいところにおいて保存する。小豆は皮がかたいため長期保存にむいているが、2年目になると色が少し濃くなり渋みも少し強くなる。また、煮る時間も長くなるので、今年度製造された製品を選ぶ。

 小豆に火をかける前に、水につけて吸水させるのが基本だが、小豆は粒が小さく皮がかたいので吸水なしで、いきなりゆでてもよい。その場合は、吸水させた場合よりも20分ほど長く煮る必要がある。ただ新豆は皮が薄いので、吸水させたほうがゆっくり膨らみ皮が破れにくくなる。

 吸水の水温が高いと腐敗しやすいので、冷蔵庫などに入れて浸水するとよい。ゆでるときには鍋の中で豆が踊らないように、必ず落し蓋をする。沸騰したら水を取り替えて弱火にして、あくを取りながら煮るとすっきりと風味よく仕上がる。 

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