2015年6月28日日曜日

凍り豆腐

○凍り豆腐(こおりどうふ)

 豆腐を凍結、熟成、解凍、場合によっては膨軟加工した乾燥させた製品。凍り豆腐の材料である豆腐の歴史は古く、今から1200年前、最澄が中国から持ち帰ったといわれている。凍り豆腐の由来にはさまざまな説がある。

 鎌倉時代、紀州(和歌山県)の高野山に住む高僧が精進料理として食べていた豆腐が冬の厳しい寒さで凍ってしまい、翌朝それを溶かして食べたところ食感がおいしかったことからつくられるようになったという説がある。その高野山にちなんで関西地方では高野豆腐と呼ばれるようになったという。

 また、冬場の食材としてつくられていた「一夜凍り」の、吊るして自然に乾燥させる作り方が室町時代・安土桃山時代の頃に発見され定着し、保存食になったという説もある。長野県では凍ることを「凍(し)みる」という方言から凍み豆腐と呼ばれるようになった。武田信玄が農家につくらせ、信州佐久地方に兵糧食として広めたともいわれている。

 江戸時代に入ってからは飛騨(岐阜県)、信州、東北地方を経て松前(北海道)にいたる東日本各地で作られるようになり、現在ではおもに長野県で生産されている。

【名 称】

 凍り豆腐、高野豆腐などの名称で知られている。地域によって、呼び名は異なる。凍み豆腐、ちはや豆腐、連豆腐、一夜凍り、一夜氷とも呼ばれているが基本的には同じものである。日本農林規格(JAS)では、「凍り豆腐」とされている。

【製造方法】

 現在出回っている凍り豆腐は、主に次のような人口冷凍方法でつくられている。

1.ダイズを水に浸けてすりつぶし、煮てからおからを分離して豆乳をつくる。
2.豆乳ににがりを加え函のなかでかためる。この豆腐は一般的に市販されている豆腐よりややかためにつくる。
3.切断して急速凍結してから熟成する。
4.解凍後脱水してから温風で乾燥する。

 明治末期に工業化されて以降、よりやわらかい凍り豆腐に仕上げるために、さまざまな製法が開発されてきた。1925年に開発された、澱粉を配合してやわらかくする製法は今も活かされている。また、アンモニアガス加工法なども開発されたが、臭いが強いため、のちに開発された重炭酸ナトリウム(重曹)を加える膨軟化加工法にとってかわった。

 これらの発明の多くがみすず豆腐、旭松豆腐など長野県の企業人によって開発・改良された。長野県では、全国の凍り豆腐生産量の80%強が製造されている。

【主な種類】

●福島立子山凍み豆腐

 福島市郊外の立小山の冬は寒さが厳しく、農家の農閑期の収入源としてつくられたのをきっかけにして、凍み豆腐つくりが始まったといわれている。最盛期には60軒ほどの農家があったが現在は7軒と少なく、ネット販売が主である。

 豆腐を水切りして薄く切り、氷点下の夜に凍らせて稲わらで結び軒先に吊るす。吾妻連峰からの風で乾かして作っている。すべてが天然凍結、天然乾燥でつくられるため、機械で乾燥凍結されたものよりも風味がよく、なめらかな舌ざわりのため人気がある。

●岩出山凍み豆腐

 宮城県大崎市岩出山産の「ミヤギシロメ大豆」を使った凍み豆腐。膨軟剤を使わない1840年頃の製法で製造しており、弾力のある食感が特徴である。

【栄養と機能性成分】

 タンパク質を50%、脂質を30%含んでいる。大豆タンパク質のレシチンによるコレステロール低下作用や、ペプチドによる血圧制御作用に注目が集まっている。また脂質が多く、不飽和脂肪酸のリノール酸が動脈硬化を予防するといわれている。

【品質の見分け方】

 褐色に変色しているものを避けて選ぶこと。脂質が多いため、陳列中に高温や強い光線に長時間さらされると脂肪酸が酸化してしまうので陳列環境に注意して購入すること。

【保存と利用方法】

 凍り豆腐は腐りにくく、賞味期限は6ヶ月ほどである。酸化を防ぐためには、買ってきたパッケージのまま光の当たらない涼しいところで保存し、空けたものは密封保管してなるべく早く使う。湿気を嫌い、カビなどが生えやすいのでポリ袋に入れて保存する。

 凍り豆腐をよく見ると無数の穴が開いているのがわかる。穴によって表面積が広がっている分、空気中の臭いが付着しやすいため、臭いの強いものと一緒に保管しないこと。

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