2015年6月20日土曜日

干瓢

○干瓢(かんぴょう)

 ウリ科のユウガオを細く割いて干した製品。ユウガオは一般的に「瓢(ふくべ)」と呼ばれている。中国で古くから作られていた干瓢が日本に伝わったのは16世紀初頭のこと。日本で最初の産地は摂州(大阪府)の木津であったといわれている。

 1712年に、藩主鳥居忠秀が近江の国(滋賀県)の水口から下野国(栃木県)の壬生へ領地換えになったとき、ユウガオの種を取り寄せて壬生領内での栽培を奨励したため、栃木県で生産が盛んになったといわれている。

 昭和の末期から日本の農家がユウガオの種を中国に持ち込み、干瓢の生産が始まり1982年から中国産の輸入が許可された。現在では業務用を中心に中国の大連郊外などから多く輸入されている。

【生 態】

 ユウガオは同じウリ科のヒョウタンと近縁である。花が咲いてから30日ほどで丸型、あるいは長形の果実がなる。果実は直径が約30cmにも成長する。ヒョウタンは最古の栽培植物で、原産地はインド、北アフリカといわれている。

 一本の枝に雄・雌の両方がある雌雄同株のつる性植物で、初夏に咲く白い花は夕方咲いて朝しぼむのでミツバチや昆虫ではなく風で受粉する風媒花である。つるは竹竿に巻き付き、長さ1mにもなる。

 栃木県の壬生、石橋、上三上などの土壌は関東ローム層に覆われているため排水がよく、土が軽いため、浅根性で横に広がる性質のユウガオの栽培に適している。また、気候がユウガオの生育に適していることも、作付けが広まった要因である。現在、国産干瓢の95%が栃木県で生産されている。

【製造方法】

 ユウガオは加工の前日の夕方に収穫しておく。加工当日は、午前3時頃のまだ夜が明けない時間からユウガオをむき始める。まず、ユウガオのヘタを鎌で取り、芯の中心に鉄棒を刺し機械で表面の皮をむく。厚さ4cm、幅4~5cmくらいに細く長く実をむいていき、最終的に約2mくらいの長さになる。

 使える部分は表皮肉部分で、中心部は種が多いので使用できない。日が出たらすぐにビニールハウスの中に運び、干し始める。ユウガオの生の状態で重さ1個約6~7kgあるが、1個のユウガオから約150gの干瓢しか作ることができない。以前は農家の軒先などで天日乾燥したが現在はボイラーを使い徐々に除湿しながら乾燥する農家がほとんどである。

 干瓢は空気に触れて酸化すると褐色に変化する。そのため二酸化硫黄で薫蒸する。薫蒸することによって漂白・防腐・防カビ・防虫することができ、保存可能な期間も長くなる。

 二酸化硫黄の残存量は0.5ppm以下と決められている。二酸化硫黄は水に溶けやすい性質があり、干瓢を水で戻したときにはほとんど残存していないが、最近は無漂白干瓢が作られている。

【栄養と機能性成分】

カリウム、カルシウム、鉄、ミネラルなどを含むが、含有量は切干大根より少ない。食物繊維は多く、100g中30.1gある。

【品質の見分け方】

 栃木県の干瓢協同組合では自主検査規格を定めている。干瓢は、製品ごとに幅、筋の量、色、太さ、長さなどのばらつきがあり、また、雨に濡れて染みのついたもの、芯に近い種が付着したものなどが混じっている場合があるので、産地問屋での選別、保存状態などが信用取引において重要となる。等級は特等、一等、二等、ツルに選別される。

 ユウガオは収穫時期により品質が異なる。6月下旬から7月上旬に収穫される一番玉は、あくが強く色がやや黒っぽい。7月下旬から8月上旬に収穫される二番玉がもっとも上質である。収穫時期が遅くなるほど徐々に品質が落ち、かたくなる。収穫時期は9月中旬で終わる。収穫時期末期に収穫したものを末玉と呼ぶ。

 近年は中国大連郊外などで、日本の指導により干瓢を生産している。現在、日本で出回っている干瓢の多くは中国産である。その年の出来高で価格相場大きく動く。

【保存と利用方法】

 軽く水洗いし少量の塩を振って、両手で弾力の出るまで揉み洗いする。そののち、水かぬるま湯に5~10分浸して水気を切り、好みのかたさまでゆでる。保存は湿気が入らないよう、ポリ袋や缶などに入れて保存する。

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