2015年9月16日水曜日

干し湯葉

○干し湯葉(ほしゆば)

 投入を煮立て、表面にできる薄い膜をすくいとったのが生湯葉で、乾燥させた製品が干し湯葉である。湯葉の歴史は古く、いまから1200年前、最澄が中国から持ち帰ったといわれている。

 日本に最初に湯葉が伝わったのは京都の比叡山の天台宗総本山延暦寺で、精進料理の材料として使われ、坊さんにとても好まれた。江戸時代の文献「豆腐百珍」(1782年)には湯葉料理が記載されており、いろいろな種類が作られ一般庶民にも広まった、とある。

 保存性が高く、精進料理や会席料理ならではの食材として大豆加工品の中でも最高級品である。近年は和食だけでなく、洋食などにも健康的な食材として利用されている。

【名 称】

 豆乳の表面がしわになり姥の顔に似ているので「うば」と呼ばれた。また、豆腐の「うわもの」の音が濁って「ゆば」になった、ともいわれている。

【製造方法】

①ダイズをひと晩水に浸けて戻す。
②水を注ぎながら挽く。
③大釜で煮て、布でこして豆乳を作る。
④深さ5~10cmくらいの木枠で仕切った鍋に移し、微調整された火にかけ熱を加えて、じっくりと皮膜を作り上げる。
⑤皮膜を竹串でそっと引き上げる。引き上げは湯葉の張り具合や火加減を見ながら、早からず遅からず絶妙なタイミングで1枚1枚ていねいにそっと引き上げる。職人技である。
⑥半乾燥のところを切り、成形してから温風乾燥する。

【主な種類】

 干し湯葉には、さまざまな形に加工した製品があり、以下に紹介する製品のほかにも、小巻湯葉、結び湯葉、竹湯葉、平湯葉などがある。

●大原木湯葉

 真ん中を昆布で結んだ京湯葉。湯葉と湯葉の間にだしがしみこんで旨味をひきだす。

●巻き湯葉

 湯葉を幾重にもまいてつくる。水分を含むと広がってボリューム感が出る。

●蝶々湯葉

 蝶々のようなかたちに成形した湯葉。料理の華添えになる。

●京湯葉

 京都周辺で生産される湯葉。仕上がりが平たいので板湯葉として多く加工され、寺院、京料理店や土産物として販売されている。

●日光湯葉

 日光周辺で生産される湯葉。京都で作られていた湯葉は、日光開山のときに修験者たちによって日光に持ち込まれ、その消化吸収と豊富な栄養から、貴重なタンパク源として江戸時代に二社一寺に供え物として納められたという。日光湯葉は「湯波」と書くことが多い。

【栄養と機能性成分】

 湯葉は、豆乳からつくるので大豆加工品と同じ栄養価があり、消化吸収がよく少量でも栄養価が高い。鉄分のほか、亜鉛、カリウム、ミネラルなどが豊富で子供や高齢者の栄養補給に適している。

【保存と利用方法】

 常温で3ヶ月くらいを目安に保存する。強い紫外線に当たると酸化してしまうので、冷暗所で保管する。乾燥したままお吸い物に直接入れたり、弱火でゆっくり火をとおせばよい。その際、湯葉が吸う分、煮汁をやや多めにする。強火で火をとおすと身がかたくなるので注意する。

0 件のコメント:

コメントを投稿