2015年9月15日火曜日

干し大根

○干し大根(ほしだいこん)

 アブラナ科の二年草であるダイコンを千切り、あるいは薄切りにして乾燥させた製品。冬場につくり、冬の生野菜が不足する時期が最需要期となる。保存食として長年親しまれている製品で、北から南まで日本各地でつくられており、地方独特の作り方や食べ方がある。秋の台風や気候条件で生産量が大きく変わるため、年間の価格が大きく相場に反映される製品である。

 干し大根の中でも全国的に流通しているのは切り干し大根である。生産の中心は千葉県、愛知県の渥美半島、宮崎県と移動し、それにともない干し大根にむく青首大根も移植されてきた。切り干し大根は、江戸時代初期に凶作対策として開発された保存食であった。現在市販されているものは、宮崎県産が全体の90%を占めている。

【名 称】

 切り干し大根と関東地方では呼ぶが、千切り大根と呼ぶ地方もある。地方によって呼び名が異なる。

【生 態】

 大根は3世紀頃、中国から朝鮮半島を経て日本に持ち込まれたといわれている。中国の大根は大型で水分の多い華南系と、皮に色があり澱粉質が多く耐寒性のある華北系がある。この2系統とも日本に伝来し、時代とともに交雑が進み各地区の気候風土に合うさまざまな品種が誕生した。

 その中でも、干し大根に向くのは青首大根である。華北系の子孫であった愛知県の宮重大根を改良した品種であり、成長が早く病気に強い。また、澱粉質が多く水分が少なく、大根に鬆が入りにくいことから乾物加工に最適な品種である。乾物に加工する前の年の秋(8月後半~9月上旬)に畑を整地し、青首大根の種をまき、12月下旬~2月中旬頃に収穫する。

 宮崎県の北部地区、国富、西部、綾町、新富、宮崎市、尾鈴などで約80%生産されており、田野町、清武、木花地区でも約20%生産されている。山間部でも作付されているが、特に北部地区は平野部であるため作付面積が広く、風が強いため異物の混入が少ない。

 南部地区は切り干し大根以外につぼ漬大根も生産しており、材料であるダイコンの質が高いため干し大根の品質もよい。また、北部地区より約5℃前後気温が低いため乾燥作業の効率がよく、色が白く仕上がりダイコンの旨味が表面に出にくいため、よいものができる。

【製造方法】

 宮崎県で行われている天日干しの製造方法は次の通り。

①収穫したダイコンを洗い、青首と尾をカットする。
②千切りスライサーで3mmにカットする(地区によってサイズは異なる)。
③外気温が5℃前後の冬の寒い時期、霧島の寒風が吹く日に畑に木材を組んでその上にむしろを敷いてカットしたダイコンを広げ、日光と寒風で1~2日天日乾燥させて収穫する。

【おもな種類】

●ゆで干し大根

 ゆがき大根とも呼ばれる。長崎県の五島列島や西彼杵半島の西海市の特産品で、大蔵大根を太めの千切りにしてゆでて天日干しした製品。ソフトな食感と甘味があり、味、風味ともによく、保存性も高い。

●蒸し干し大根

 青首大根を蒸してから干した製品。ゆで干し大根同様、長崎県の五島列島や西彼杵半島の西海市で生産されている。

●花切り大根

 ダイコンを薄く銀杏形に切って干したもので、徳島県の特産品。

●割り干し大根

 ダイコンを太く縦に裂いて長く紐に吊るし、干した製品。岡山県では割り干し大根を小花切りにして、はりはり漬けなどに利用される。

●寒干し大根

 輪切りにしてゆでたダイコンを吊るし、干しあげた製品。寒い地域でのみ生産される。新潟県などでは薄い銀杏形に切って干したものを寒干し大根と呼んでいる。

●丸切り大根

 ダイコンを薄い輪切りにし、干した製品。西日本や瀬戸内などの特産品である。

●氷大根

 夜間氷点下になる地域で、縦に割るか輪切りにしたダイコンを軒下などに吊るし、凍らせて乾燥干しした製品。凍み大根とも呼ぶ。雪国独特の保存食品として、福島県や山形県、中部地方の山間部などでつくられている。

【栄養と機能性成分】

 生大根より水分が減った分、成分が凝縮されているので栄養価は高く、特にカルシウム、鉄分を多く含んでいる。また、現代人に不足気味の食物繊維、カリウムも豊富。乾燥によって独特の歯ごたえがうまれている。

【保存と利用方法】

 製造後長くおくと、褐色になってしまう。これは、ダイコンの成分であるアミノ酸(アルミノカルボニル)と糖が反応し酸化してしまうためである。梅雨時期や夏にかけて変質しやすいので家庭の冷蔵庫か冷凍庫などに保存する。また水戻ししたものをきつく絞って冷凍保存しておけば2ヶ月くらいはもつ。煮物も冷凍できる。切干し大根には独特の臭いがあるが、微生物が繁殖しているわけではなく、食べても害はない。

 干し大根は、水に軽く浸けるだけで簡単に戻る。ゆで干し大根や花切り大根は加熱してあるので、戻りも早く調理も簡単である。ほかの乾物とも相性がよく、一緒に煮炊きできる。干し大根に含まれる澱粉の甘味があるため、特にだし汁とあわせると汁のおいしさが増す。

0 件のコメント:

コメントを投稿