2015年7月27日月曜日

大豆

○大豆(だいず)

 マメ科の一年草であるダイズの種子を乾燥させた製品。豆類の中でもダイズほどさまざまな加工品へと変化する食材は珍しい。油を絞れば白絞油になり、脱脂大豆は加工用飼料となる。発酵させれば味噌、醤油、納豆になり、煮れば煮豆、炒れば黄粉、発芽させればもやし、搾れば豆乳になる。

 また、豆乳から湯葉、豆腐をつくることができ、豆腐を揚げれば油揚げ、がんもどきになる。さらに、乾燥豆乳は飲料、アイスクリームにも利用される。食の世界だけでなく、ダイズの持つ成分から抽出した医薬品も数知れずある。なんとも不思議な食材だ。

 もちろんダイズはそのままでも栄養豊富で、タンパク質、脂質、イソフラボン、サポニン、食物繊維などを含んでおり「畑の肉」といわれるほどである。しかし、輸入大豆の多くが除草剤や農薬の使用状況や、遺伝子組み換えか否かなど、わからない部分が多いのが残念である。

 歴史的に見ると、遺跡から炭化したダイズが見つかっており、日本には縄文時代あるいは弥生時代の頃に中国から伝わったことがうかがわれる。鎌倉時代になると新仏教の誕生によって肉食が禁じられたため、ダイズはタンパク質源として珍重された。

 また、兵糧食としての需要も高まり、西日本から東北地方にまで栽培地域が広がった。そののち、味噌や豆腐などの加工品や湯葉などの精進料理が普及したことによって庶民の生活に深く関わる食材となった。

【生 態】

 日本では、沖縄を除く全国で栽培されている。豆類は交配された品種が大変多く、また、栽培地域も広い。ダイズも品種によって粒の大きさ、色、油脂量などが異なり、利用方法に合わせて開発され、さまざまな分野で流通している。日本の主産地である北海道ではダイズの用途、目的に合わせて交配された品種が契約栽培によって計画的に生産されている。海外ではアメリカ、ブラジル、中国などの生産量が多い。

 品種や栽培地域によって作付け時期は異なる。青い状態で収穫し、枝豆として食べられる夏ダイズ型は、5月頃に種をまき夏頃収穫する。一方、乾物に加工される秋ダイズ型は、6月中旬~7月中旬にかけて種をまき秋に収穫する。比較的暖かい地域では、夏ダイズ型を4月上旬頃からまき始めることも可能である。他の豆類と同様に、連作ができないため輸作をする必要がある。

【主な種類】

●黄大豆

 種皮が黄色の品種。一般的な黄大豆は大粒種が好まれ、鶴の子という品種が最高級品として主力であったが、近年は鶴の子との交配により粒が大きくタンパク質の含有量が多い品種が開発されている。保水性が高いため味噌などの加工に利用されるトヨハルカ、豆乳加工に利用されるゆきぴりか、とよまさり、ユキホマレなどがある。

●黒大豆

 種皮が黒い品種。正月料理の中でも人気の高い黒豆だが、なかでも丹波種が人気がある。光沢のよい十勝黒、函館黒、青森の光黒、黒千石など数多くつくられている。

●丹波黒豆

 粒が大きく、種皮が黒い品種。兵庫県丹波篠山盆地で栽培されている丹波黒豆は、夏に昼夜の温度差が激しい気候風土や土壌の性質により、開花から成熟まで100日もかかるため、種子が養分を蓄積し極大粒の豆がなる。そのため、丹波黒豆は篠山盆地の特産品であり、ほかの地方で栽培してもなかなかうまくできない。

 12月に収穫を行う晩成種である。収穫期から販売期(正月需要)が短いため、乾燥不十分な状態で販売される場合もあり、カビが生えやすい。なかでも粒が大きい3Lサイズが人気で、「ふどう豆」や「飛切り」などの表示で販売されているが、収穫量は少ない。

●がんくい豆

 扁平系で中央にしわがある品種。しわが雁のついばんだあとに似ていることからこの名がついた。「平黒豆」とも呼ばれる。現在は岩手県など一部地域で栽培されている。

●青大豆

 種皮が緑色の品種。鶯豆や和菓子に利用されており、山形県、新潟県などで多く栽培される。岩手県、宮城県など東北地方では「ひたし豆」、山形県鶴岡城山地区では「だだちゃ豆」として市販されている。うぐいす黄粉の材料である。

●くらかけ豆

 種皮に黒い鉢巻の模様が入っている品種。馬の鞍に似ていることからこの名がついた。「けらかけ」とも呼ばれている。新潟県から長野県にかけて多く栽培されている。

【加工品】

●黄粉

 大豆を煎って粉砕した製品。和菓子の原料として欠くことのできない食材。黄粉を使った菓子は多く、五家宝、安倍川餅、信玄餅、わらび餅などがある。関東では黄色が好まれるため大豆の煎りが浅く、関西では香りが強いものが好まれるため、煎りの深い茶色の製品が販売されている。また近年は黒豆黄粉や、胡麻黄粉などの調理黄粉も多く出回っている。

●打ち豆

 生豆や大豆を石臼やかたい金属の上で小槌で叩き扁平型にした製品。収穫した大豆をつぶすことによってかたい殻が壊れるので、早く調理ができて味付けも簡単にできる。一度加工しているため打ち豆にしたら早めに調理すること。保存性は低い。特に東北地方、山形県、新潟県、長野県などで多く生産、利用されている。

 黄大豆も使われるが、東北地方では主に青大豆を使っており、郷土料理とされている。農作物の収穫が終わり一息入れる時期になると、煮物にして食卓にあがる。刻み昆布と車麩、打ち豆の似付けが煮物の中では代表的である。

【栄養と機能性成分】

 五大栄養素であるタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、無機質を豊富に含んでいる。なかでもタンパク質は良質。脂質は、動脈硬化を防ぐとされるレシチンや、肥満抑制効果が期待できるサポニンである。このほか、イソフラボン、ビタミンB群、カルシウム、鉄、オリゴ糖、食物繊維などを含んでいる栄養豊富な食材である。

【保存方法】

 長期保存するには、常温か冷蔵庫など湿気のないところで保存する。カビや虫が付くので、缶、瓶、プラスチック容器に入れるとよい。

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