2015年7月3日金曜日

米粉

○米粉(こめこ)

 イネ科の一年草であるイネの種実を脱穀・精米し粉砕した製品。米を粒のまま主食として食べ、米の粉は菓子や副食などに加工する日本人にとって、米文化は知恵の結晶である。そのルーツは古代より伝来してきた文化でもある。古くから粉食がされており、精米を水に浸けてふやかし、杵でついて粉砕して丸めたものが「しとぎ」と呼ばれていた。平安時代には「神前に供える餅の古名」であったといわれている。

 諸外国では、しとぎは主食とされたが、日本では、奈良時代に唐から米粉を利用したさまざまな唐菓子が伝来されたのが始まりで、菓子として発展していった。干し米を油で煎り麦や米の粉を練って油で揚げて、果物や木の実を模したものであったが、平安時代からさらに発展して色も形も多彩になり、「粽」「草餅」「柏餅」など和菓子のルーツも多数登場した。

 鎌倉、室町時代には宋や元から禅宗とともに食にまつわるさまざまな文化が伝来した。軽食、喫茶の習慣が伝わるのと同時に、点心や茶菓子として饅頭や羊羹が伝えられた。

 農業の発達によって収穫量が増えるとともに、宋、明、琉球から砂糖の輸入も増加して甘い米粉菓子が増えていった応仁の乱ののち、中国の食習慣や食品が庶民の間にも広がることによって、桃の節句に草餅、端午の節句にちまきをつくるなど、年中行事の際につくられるようになった。

 安土・桃山時代になると、武家、公家、庶民の食生活の融合がすすみ、茶を飲んで菓子を食べる習慣が広まっていった。南蛮菓子、カステラなどが伝来されたのもこの頃である。このような変遷を経て、江戸時代で茶の湯に用いる「上菓子」が京都、江戸でつくられるようになり、米の粉を使った和菓子作りがどんどん発展していったのである。いまの和菓子と呼ばれる材料の米の粉の製法も、、江戸時代に出そろい、さまざまな製品が生まれた。

 農林水産省による食料自給率アップ推進運動の影響で、近年、米の粉を乾麺、生麺や小麦二次加工品に使ったパンやケーキなどが普及し始め、米粉の需要が高まってきている。米の粉の加工方法は大きく分けて2つあり、生の米を製粉する方法と、熱を加えてアルファー化してから製粉する方法がある。また、粘り気が少なく、そのまま主食として食べられている粳米と、粘り気が強く餅に加工されたりする餅米があり、米の用途によって使い分けられている。

 生育方法でも性質は変わり、畑で栽培される陸稲は、水田で栽培される水稲よりも粘り気が強くなるため、糯米作りに利用される。

【生 態】

 イネは最も古い作物のひとつであり、日本列島の北から南まで広く栽培されているが、主食だけに、味、香り、旨味と大変多くのこだわりがある食材である。縄文時代から栽培が始まり、以降、全国に広がるに当たってさまざまな品種改良が行われてきた。

 夏季に水と適度な温度を得ることができる日本は、水田稲作に向いている。苗の田植えが5月の中旬から始まり、稲刈りが9月下旬~10月上旬に北海道や東北地方から始まり、南の地域にいくにつれて時期が遅くなっていく。

 日本だけでなく中国東部、南部、台湾、朝鮮半島をはじめとして東南アジアでも欠くことのできない作物である。メコンデルタ、インドネシアなどでは連作によって年3回も収穫することができる。

【栄養と機能性成分】

 米の粉の栄養は米と同じである。炭水化物が主成分でビタミン、ミネラルなどはごくわずかである。

【主な種類】

●上新粉

 粳米を精米し糠を取り、水洗いしてから製粉した製品。米の粒子は細かい、かたいので製粉する前に水を吸わせてから製粉作業をする。水分が多いと変質しやすいため、普通は再度乾燥してから販売する。粒子が細かくかたい品は「上用粉」、粒子の大きい品を「新粉」、さらに粒の大きい品を「並新粉」と呼ぶ。「だんご」「ういろう」「かるかん」「草餅」「やせうま」などさまざまな和菓子に利用されている。

●白玉粉

 糯米を製粉した製品。糯米を精白し水を吸引させ、ふやけたところをすりつぶして水にさらし、圧縮脱水する。この段階で大きなかたまりになるので、細かく削り、乾燥機に入れて温風乾燥させる。原料とする糯米の質と、精白度により品質は左右される。精白度が高いほど外皮の成分が混じらず、澱粉の比率が多く仕上がるため上質とされる。

 ゆで上げるとやわらかさと弾力があり、冷やしてもかたくならないのが特徴。和菓子の食材として多く使われ、家庭では「白玉だんご」「ぎゅうひ」「おしるこ」「ゆで小豆だんご」「みつまめ」など利用範囲は広い。澱粉を加えたり寒中に晒した寒晒などもある。

●餅粉

 糯米を上新粉と同じく製粉した製品。餅つきをするときに表面にふりかけて、杵や手につかないよう打ち粉としても使う。白玉粉の製造過程との違いは、水浸け、晒しの工程がないので白玉粉より安く製造することが可能な点である。白玉粉より低コストの品として利用され大福、金鍔、桜餅などに利用される。

●団子粉

 上新粉に餅粉、澱粉を配合し、簡単に団子作りができるように考えられた製品。家庭用団子がある。「柏餅」に利用される。

●道明寺粉

 餅米を蒸してから乾燥させ、粉砕してふるいにかけて粒の大きさをそろえたもの。大阪府にある真言宗の尼寺、道明寺で仏前に供えた糒(ほしいい)を貧民に施したのが広く知れわたり、寺の名前から道明寺粉と呼ばれるようになったといわれる。原料は糯米で桜餅、椿餅、お萩、みぞれかんや京生菓子などに利用される。糒とも呼ぶ。

●新引粉

 餅米を蒸して乾燥のうえ砕いて砂煎りし、少々焦がして狐色にした製品。粒の大小によって、どのような和菓子の材料になるか決まってくる。真引粉とも書く。

●味甚粉

 糯米を蒸して作った餅を煎るなどしてアルファー化し、粉にした製品。「焼き味甚粉」「煎り味甚粉」と呼ぶ地方もある。

●寒梅粉

 味甚粉と同じ製法だが、餅を厚焼きにしたものを粉末にしている。寒梅の咲く頃に新米を粉にしたことからこの名がついた。

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