2015年8月27日木曜日

干し芋

○干し芋(ほしいも)

 ヒルガオ科の多年草であるサツマイモを蒸して切り、乾燥した製品。干し芋の始まりは、1809年(文化6)頃に大藤村(静岡県盤田市)の大庭林蔵と稲垣甚八がサツマイモを蒸して厚切りにして乾燥させる製法を発明してからだといわれている。

 そののち、明治41年に茨城県那珂湊(ひたちなか市)での生産が始まった。茨城県に干し芋製造を導入したのは、せんべい屋の湯浅藤吉だといわれている。

 秋の味覚の代表であるサツマイモは糖質が多いが、体内に入ると糖質分解酵素が働く。皮の中は黄色をしており、カロチンとビタミンが多く熱に対しても強い。サツマイモを食べると胸焼けをおこしやすい人は、川ごと食べると体内での発酵が抑えられて胸焼けが起こりにくいという。茨城県ではサツマイモが学校給食にも使われている。

【名 称】

 乾燥いも、いも切り干しともいう。茨城県と静岡県がおもな産地だが、ほかの地域でも生産されており、呼び名が異なる。愛媛県宇和島では「東山」、長崎県では「かんころ」、熊本県や鹿児島県では芋をスライスする機械をコッパケズリ、コッパキリなどと呼ぶことから「コッパ」と呼ばれているが、いずれも干し芋である。

【生 態】

 サツマイモは繁殖力が強く、栽培方法も比較的簡単で収穫量の多い澱粉食品であったことから、各地で作られるようになった。春先親芋から芽が出て10cmほどになったら茎径を植える。夏が過ぎ秋になると収穫となる。

 茨城県ひたちなか市の那珂湊や阿字ヶ浦は土壌がサツマイモ栽培に適しており、冬に強い海風が吹く乾燥した気候も干し芋の生産に向いている。また、北海道や東北地方に出荷するのに地の利があることなどもあり、現在は有名な生産地となっている。

 干し芋の原料となっているサツマイモの品種は玉豊、いずみ種、玉乙女、紅まさりなどである。主力の玉豊は、他の品種と比べて大型で外皮、肉色とも白く、食感がネットリとしている。生では白いが、干すと飴色になる。

【製造方法】

 秋に収穫された原料芋は、土がついたまま寝かし保管する。干す作業に入るのは寒風の吹く11月後半から3月にかけてである。

①蒸す直前に芋をよく荒い、大きさ別に選別して、せいろに並べて蒸す。
②蒸した芋はひとつずつていねいに皮をむく。
③蒸して皮をむいた芋をつき台でスライスする。つき台にはピアノ線、ステンレスの針金を張り、平干し芋は9~12mm幅に、角きり芋は2cm角にスライスする。
④スライスした芋はすだれに並べ、天日で約1週間ほど乾燥する。丸干しの場合は20日ほどかかる。

【栄養と機能性成分】

 コレステロールを含まず、食物繊維が多い。ビタミンB1、ビタミンC、カリウムなどを豊富に含んでいる。

【保存と利用方法】

 乾燥しすぎるとかたくなり、乾燥が不十分だとカビが発生するので保存するときには湿度管理が重要である。強い直射日光を避け、水分が分離しないように低温保存するのが好ましい。冷凍すれば長期保存が可能である。

 かたくなった品は焼くとおいしく食べれるが、熱が冷めると再びかたくなる。最近はカビを防ぐために窒素ガスや脱酸素剤を封入した包装品がある。

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