2015年8月21日金曜日

○麩(ふ)

 小麦粉に含まれているグルテンという植物性タンパク質を加工した製品。麩は、雪に閉ざされる東北地方などで冬の貴重な蛋白源として重宝されてきた。日本各地に、それぞれの生活からうまれたさまざまな色、形の麩があるが、大別すると現在製造されている麩は、焼き麩と生麩に分けられる。

 麩の伝来は不明だが、8~9世紀の中国の文献に「麺筋」と記述されているものが起源ではないかといわれている。当時は仏教の厳しい戒律から、禅僧たちは殺生、肉食を絶っていた。そのために肉に代わるタンパク源をダイズやコムギに求めて、麩をつくり珍重していたという。

 南北朝の時代、麩は禅寺の喫茶を楽しむときのお茶請けとして扱われており、一休和尚が麩の普及に尽くしたとも伝えられている。江戸時代初期には、隠元禅師が普茶料理を広め、さらに麩の製造業者もうまれて、庶民も麩を食すようになった。

 さらに1859年(安政6)の開港とともに精白小麦粉が日本に輸入され、生地が滑らかになり、初めて鉄板の上で焼く焼き麩が一般市民の食生活に受け入れられるようになった。

【製造方法】

①小麦粉に水または食塩水を加えて長時間練りながら上水を取り替え、澱粉質を洗い流し、ネバネバした弾力のあるグルテンを取り出す。
②グルテンに小麦粉や米粉を混ぜる。製品によって粉の種類や配合が異なる。
③よく練って熟成、細工、成型する。
④焼成する
⑤選別、検査、切断する。

【主な種類】

●車麩

 麩の生地を直火で焼成した製品。麩の生地を鉄棒にまきつけて焼く。新潟県のほか北陸、東北地方で生産されている。

●庄内麩

 麩の生地をバーナーで焼いて板状にした製品。岩手県、山形県、秋田県など日本海側で生産されている。

●南部板麩

 青森県、岩手県、宮城県の太平洋側で生産されている板状の麩。

●饅頭麩

 麩の生地をお饅頭のようなかたちに丸めて成型した製品。青森県、山形県、新潟県など日本海側で生産されている。

●案平麩

 麩の生地を丸餅のように大きくふっくらとしたかたちに成型して焼いた製品。山口県では、仏事の供え物として利用されている。

●手毬麩

 五色に紅染めした生麩を丸めて手毬のかたちにした製品。石川県、岐阜県、京都府で生産されている。

●餅麩

 グルテンに餅粉を加えてつくった製品。おもに京都府、滋賀県、大阪府で生産されている。

●松茸麩、丁子麩、花麩

 麩の生地を成型型に入れて焼いた製品。滋賀県、京都府などの西日本で生産されている。

●圧縮麩

 麩の生地を蒸して圧縮した製品。沖縄県や全国でチャンプルを作るときに利用されている。

●すだれ麩

 グルテンを蒸した状態の生麩をすだれに延ばして包んで、加熱してから乾燥した製品。石川県で生産されている。

 以上の麩はすべて材料をオーブンで焼成(蒸し焼き)するタイプの麩である。このほか小町麩、観世麩、卵麩、白玉麩などがおもに関東地方、東北地方、北海道で生産されている。また、京都府などでは生麩が精進料理に多く利用され、手まり、もみじ、桜花、よもぎなどに成形し、色付けしたものが各地で作られている。

【栄養と機能性成分】

 麩は植物性タンパク質とミネラルが豊富で、パンや乾麺などの2~3倍含まれており、脂質、塩分は少ない。麩はリジンの多いダイズ製品と組み合わせるとアミノ酸バランスがよくなるうえ、麩には少ないカルシウムも補える。

【保存は利用方法】

 湿気を嫌うので密閉容器などに入れて保存する。仙台麩のように油で揚げたものは酸化しやすいので早めに使うこと。麩は水に浸ければすぐに戻すことができる。お吸い物などに利用する場合は、戻さずに直接入れて使うことができるため利用範囲は広い。

 日本料理のほかにも中華料理や沖縄料理の炒め物の材料として、また黒砂糖を表面につけた麩坊や麩かりんとうなどのお菓子にも利用されている。

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