2015年6月30日火曜日

粉山椒

○粉山椒(こなさんしょう)

 ミカン科の落葉低木であるサンショウの実の皮を乾燥粉末にした製品。新緑の頃、サンショウの葉は緑鮮やかになり、和食の焼き物、煮物、特にタケノコに添えられる。未熟な果実は佃煮にして、縮緬雑魚と混ぜて食べられる。

【生 態】

 日本全国で栽培され、朝鮮半島にも分布している。「椒」の字は「芳しい」を意味することから、山の香り高い実ということで「山椒」の名がつけられたという。

【利用方法】

 鰻の蒲焼きの臭み消し、七味唐辛子の材料などに香辛料として利用される。

2015年6月29日月曜日

コーンスターチ

○コーンスターチ

 トウモロコシ澱粉のこと。乾燥させたトウモロコシの殻粒を亜硫酸液に数十時間浸けてやわらかくしてから、荒く砕いて胚芽を取り除く。乾燥して製造する。澱粉の中でも粒子が小さいため、工業用糊や水あめ、クッキー、バウムクーヘン、ソーセージ、水産加工練製品などに幅広く利用されている。

2015年6月28日日曜日

凍り豆腐

○凍り豆腐(こおりどうふ)

 豆腐を凍結、熟成、解凍、場合によっては膨軟加工した乾燥させた製品。凍り豆腐の材料である豆腐の歴史は古く、今から1200年前、最澄が中国から持ち帰ったといわれている。凍り豆腐の由来にはさまざまな説がある。

 鎌倉時代、紀州(和歌山県)の高野山に住む高僧が精進料理として食べていた豆腐が冬の厳しい寒さで凍ってしまい、翌朝それを溶かして食べたところ食感がおいしかったことからつくられるようになったという説がある。その高野山にちなんで関西地方では高野豆腐と呼ばれるようになったという。

 また、冬場の食材としてつくられていた「一夜凍り」の、吊るして自然に乾燥させる作り方が室町時代・安土桃山時代の頃に発見され定着し、保存食になったという説もある。長野県では凍ることを「凍(し)みる」という方言から凍み豆腐と呼ばれるようになった。武田信玄が農家につくらせ、信州佐久地方に兵糧食として広めたともいわれている。

 江戸時代に入ってからは飛騨(岐阜県)、信州、東北地方を経て松前(北海道)にいたる東日本各地で作られるようになり、現在ではおもに長野県で生産されている。

【名 称】

 凍り豆腐、高野豆腐などの名称で知られている。地域によって、呼び名は異なる。凍み豆腐、ちはや豆腐、連豆腐、一夜凍り、一夜氷とも呼ばれているが基本的には同じものである。日本農林規格(JAS)では、「凍り豆腐」とされている。

【製造方法】

 現在出回っている凍り豆腐は、主に次のような人口冷凍方法でつくられている。

1.ダイズを水に浸けてすりつぶし、煮てからおからを分離して豆乳をつくる。
2.豆乳ににがりを加え函のなかでかためる。この豆腐は一般的に市販されている豆腐よりややかためにつくる。
3.切断して急速凍結してから熟成する。
4.解凍後脱水してから温風で乾燥する。

 明治末期に工業化されて以降、よりやわらかい凍り豆腐に仕上げるために、さまざまな製法が開発されてきた。1925年に開発された、澱粉を配合してやわらかくする製法は今も活かされている。また、アンモニアガス加工法なども開発されたが、臭いが強いため、のちに開発された重炭酸ナトリウム(重曹)を加える膨軟化加工法にとってかわった。

 これらの発明の多くがみすず豆腐、旭松豆腐など長野県の企業人によって開発・改良された。長野県では、全国の凍り豆腐生産量の80%強が製造されている。

【主な種類】

●福島立子山凍み豆腐

 福島市郊外の立小山の冬は寒さが厳しく、農家の農閑期の収入源としてつくられたのをきっかけにして、凍み豆腐つくりが始まったといわれている。最盛期には60軒ほどの農家があったが現在は7軒と少なく、ネット販売が主である。

 豆腐を水切りして薄く切り、氷点下の夜に凍らせて稲わらで結び軒先に吊るす。吾妻連峰からの風で乾かして作っている。すべてが天然凍結、天然乾燥でつくられるため、機械で乾燥凍結されたものよりも風味がよく、なめらかな舌ざわりのため人気がある。

●岩出山凍み豆腐

 宮城県大崎市岩出山産の「ミヤギシロメ大豆」を使った凍み豆腐。膨軟剤を使わない1840年頃の製法で製造しており、弾力のある食感が特徴である。

【栄養と機能性成分】

 タンパク質を50%、脂質を30%含んでいる。大豆タンパク質のレシチンによるコレステロール低下作用や、ペプチドによる血圧制御作用に注目が集まっている。また脂質が多く、不飽和脂肪酸のリノール酸が動脈硬化を予防するといわれている。

【品質の見分け方】

 褐色に変色しているものを避けて選ぶこと。脂質が多いため、陳列中に高温や強い光線に長時間さらされると脂肪酸が酸化してしまうので陳列環境に注意して購入すること。

【保存と利用方法】

 凍り豆腐は腐りにくく、賞味期限は6ヶ月ほどである。酸化を防ぐためには、買ってきたパッケージのまま光の当たらない涼しいところで保存し、空けたものは密封保管してなるべく早く使う。湿気を嫌い、カビなどが生えやすいのでポリ袋に入れて保存する。

 凍り豆腐をよく見ると無数の穴が開いているのがわかる。穴によって表面積が広がっている分、空気中の臭いが付着しやすいため、臭いの強いものと一緒に保管しないこと。

2015年6月27日土曜日

凍り蒟蒻

○凍り蒟蒻(こおりこんにゃく)

 蒟蒻を凍らせて水分を抜き乾燥させた製品。最近では、洗顔用のスポンジとしても市販されている。蒟蒻の原料であるコンニャクイモは、東南アジアで栽培され、中国を経て日本に伝来されたものとされている。

 1858年(安政5)に常陸の国の中島藤衛門が製粉法を発明し、水戸藩の財政上から奨励され、全国に広がった。大阪乾物問屋の資料によると、氷豆腐より100年ほど早く取引が始まっていたという。現在、凍り豆腐は精進料理などで有名であるが、凍り蒟蒻は茨城県周辺での生産量が最も多く、ほかの地域ではほとんど生産されていない幻の食材である。

 日本で凍り蒟蒻がいつごろから生産されたのかは不明だが、江戸時代の頃から農閑期の副業として盛んに作られてきたという。現在の主な生産地は茨城県の山間地で、いずれも農閑期である冬の季節に農家によって製造されている。

【生 態】

 蒟蒻の原材料であるコンニャクイモはサトイモ科の多年草で、火山灰を含んだアルカリ性の土地でのみ育つ。蒟蒻の生産量が最も多いのは群馬県である。凍り蒟蒻の主な産地は茨城県常陸太田市で、特産品としてこの地区で数件の農家が生産している。

【製造方法】
1.蒟蒻を薄く切り石灰の水に浸ける。
2.田畑に藁を敷き詰め、約3mmの厚さでハガキ大に切った蒟蒻を丹念に並べ水をかける。
3.蒟蒻は夜から朝にかけて凍る。そののち、昼間の直射日光を当ててゆっくり解凍させて水をかける。
4.この作業を約20日間繰り返すうちに蒟蒻の水分が抜けスポンジ状になる。色も灰色から白色に変化する。
5.仕上げにしっかり乾燥させる。

【栄養と機能性成分】

 カロリーゼロで繊維質やカルシウムを多く含む食品である。

【保存と利用方法】

 水にぬらさず保存すれば50年経っても食べることができる。利用する前に水に浸け、やわらかくなったら石灰分が出るようによくもみ出し、水を搾っておく。醤油、砂糖、みりんなどで味付けをしたり、てんぷら、フライ、吸い物の具としても利用できる。

2015年6月26日金曜日

胡桃

○胡桃(くるみ)

 クルミ科の落葉高木であるクルミの実の核を乾燥させた製品。美しい肌と頭脳の持ち主であったという中国清朝時代の西太后の美と健康長寿の秘訣は胡桃のお汁粉だったという言い伝えがある。

 カロリーが高いため食べ過ぎもよくないので、1日2~3個を目安に食べるとよい。殻がかたいので日持ちするが古いものは油の臭いがする。酸化しているサインなので、食べるのは避ける。

【生 態】

 原産地はヨーロッパ西部からアジア西部とされ北半球の温帯地域に広く分布する。日本に自生しているクルミの大半は鬼胡桃という品種である。肉質の外果皮とゴツゴツとして堅い内果皮(核)のなかに子葉(可食部)があるため取り出しにくい。

 長野県などが生産日本一で菓子胡桃という品種が多く栽培されている。鬼胡桃のほか、姫胡桃などが存在する。近年は中国、アメリカのカリフォルニア州産のものが多く輸入されている。

【製造方法】

 クルミは、5~6月にかけて開花し、秋の刈り入れの頃に実をつける。そののち自然に落下する。あくが強いのでゴム手袋などを装着して拾い集める。収穫したら、畑の土に埋めて外果皮が腐るまでおき、これを水で洗い流し核を取り出し乾燥する。

 鬼胡桃や姫胡桃の殻は大変かたく割れないため、実を取り出すには専用の胡桃割り器かハンマーを用いる。菓子胡桃は核同士を縦筋に合わせて手のひらで握りつぶせば簡単に割れる。

【栄養と機能性成分】

 黒味はカロリーが高く、利用質なタンパク質、脂肪、ビタミンB1、B2、ビタミンC、ミネラルが豊富に含まれている。胡桃の脂肪にはコレステロールを取り除くリノール酸が多く、高血圧や動脈硬化を予防する。

【保存と利用方法】

 常温で湿気のないところで保存する。日本料理の胡桃和え、胡桃甘煮、和菓子、胡桃餅、胡桃汁、洋菓子などに多く利用される。

2015年6月25日木曜日

葛粉

○葛粉(くずこ)

 マメ科の一年草であるクズの根から採れる澱粉質を精製した粉。クズは秋の七草のひとつであるが、葛切り、葛素麺、葛餅などの葛粉を利用した製品は、その涼やかな口当たりから夏の冷たい和菓子などに多く用いられている。また、葛粉は澱粉類の中で、最高級とされている。

【名 称】

 葛芋(クズの根の部分)を12~3月頃に掘り出し、加工した製品を本葛粉と呼ぶ。葛粉は薬効をもち、多少の苦味がある。

【生 態】

 クズはつる性の植物である。30~50年の長きにわたり地下で育ったクズの根は、長さ1m、直径約20cmにもなる。本葛粉は生産量が少なく効果であるため、一般にはじゃがいも澱粉、薩摩芋澱粉、コーンスターチなどを混入したものが出回っている。

【製造方法】

1.クズの根を繊維状に粉砕する。
2.真水で洗い、その絞り汁から澱粉を沈殿させ、上水を捨てる。
3.真水を入れて攪拌し、下に沈んだ良質な部分だけを取り出す。
4.さらにあく抜きのために真水を入れて攪拌し、沈殿させて上水を捨てる。
5.以上のような精製作業を何回も繰り返したのち、絹ですくい上げて乾燥させる。

【主な種類】

 奈良県の吉野葛、三重の伊勢葛、福井県の若狭葛、福岡県筑前の秋月葛などが有名である。

【加工品】

●葛切り

 葛粉を水で攪拌して熱加えたのち、氷水に入れて冷やし、麺状にして乾燥させた製品。京都府や奈良県などの観光地では、夏の冷涼として黄粉や黒蜜などをつけて食べられており、精進料理やお茶漬けなどでも人気である。

 用途は春雨と同様だが、昔は葛切りのほうが多く食べられていた。葛澱粉を取り出す作業に手間がかかるため、葛切りは春雨より高価である。春雨の凍結製法と非凍結製法と同じ原理の製造方法を用いるが、糊化、温度、熟成時間、熟成方法、原料配合(混合比率)などは専用業者によって異なる。最高級品は「吉野本葛」とされている。

●葛素麺

 本来、葛粉を水でこねて沸いた湯の中に細く落としてゆでたものを乾燥させた製品である。しかし、現在販売されている製品は澱粉を煮て糊をつくり、その糊で澱粉をこねて生地を作り製麺機にかけて製麺したものや手延製法でつくりあげた手延葛素麺などである。

【栄養と機能性成分】

 葛粉はイソフラボンを含んでおり、体を温め血行をよくする。また更年期障害や骨粗鬆症、前立腺がんなどの改善効果があるとされている。

【品質の見分け方】

 本葛には原材料、原産地名の表示義務がないため、原材料表示をよく確認する。本葛、あるいは葛澱粉と記されたものが本葛であり、葛粉と表示されているものは、ほかの澱粉と混ぜた製品である。

【保存と利用方法】

 湿気を含むとかたまってしまうので、密閉容器や缶などに入れて保存する。中華料理のとろみ付けなどに利用すると料理が冷めにくくなる。冷えるとかたまるため和菓子や洋菓子など、いろいろな用途がある。

2015年6月24日水曜日

銀杏

○銀杏(ぎんなん)

 イチョウ科の落葉大高木であるイチョウの種子を乾燥させた製品。イチョウの原産地は中国といわれている。仏教の伝来とともに朝鮮半島を経て日本に伝来し、神社、寺院などに多数植えられるようになった。現在は街路樹などに多く見られる。

 ぎんなんは古くから食用として親しまれているが、外種皮に独特の臭いがある。外種皮の中に、かたく白い種皮(鬼皮)に包まれた種子(胚乳部分)が入っており、取り出すのに手間がかかる。

 秋高くなると、街路樹にされているイチョウの木などにもぎんなんの実がなり、気軽に拾うことができるが、直接実に触ると手がかゆくなるので必ずゴム手袋をしてから拾う。

 拾った実を数日間土の中に埋めておくか、川などで攪拌しながら表皮をむき、よく洗って乾燥させればあとは調理して食べることができる。店頭で選ぶ場合は、白く丸みがあり、つやのあるものを選ぶ。茶碗蒸しや鍋物などの料理の引き立て役になることが多い。あまり食べ過ぎると吐いたり、鼻血が出たりするので少しずつ食べるようにする。炒めたぎんなんは咳、痰、保湿効果があるといわれている。

【生 態】

 秋の早い時期から実がなり始め、11月過ぎに実が入ってくるので収穫する。イチョウの木は落葉樹で雌雄異株。4月に若葉と同時に花が咲き花粉が風に乗って雌花につき、秋になると精子を出して雌花の中で受精する。

【主な種類】

 東北地方から九州地方にかけて採取できるが、産地は秋田県、新潟県、愛知県、福岡権、大分県などが有名である。なかでも大分県産の丸ぎんなんは実が大きく人気がある。品種は金兵衛、久寿、藤九郎などがある。

【栄養と機能性成分】

 脂質、糖質、タンパク質、ビタミンA・B群、ビタミンC、鉄分、カリウムなどを含む。滋養強壮の薬膳として人気がある。

【保存と利用方法】

 乾物扱いではあるが、種子は水分が多いので高温になるとカビが生える。長期間経つと水分が蒸発してカラカラになるので、その前に加工する。殻のままビニール袋などに入れて冷暗所か冷蔵庫で保管する。

2015年6月23日火曜日

○黍(きび)

 イネ科の一年草である黍の種子を乾燥させた製品。岡山県名物の吉備団子は、桃太郎の話に出てくるごほうびの「きび団子」の名前でも親しまれている。きび団子はもともと黍を材料につくられていたが、いまは白玉粉(糯米の粉)やマキビを使ってつくられている。

【名 称】

 種子は淡黄色で大粒。粳黍と糯黍の2種類に分けられるが、中間的な品種が多い。糯黍のほうがよく食べられており、粳黍は小鳥の餌にされることが多い。原産地はアジア中央部から東部にかけてだといわれている。

 日本手には、米、麦、粟、稗などよりも少し遅れて中国から伝来したとされる。実が黄色いことから「黄実」となり、「きび」と呼ばれるようになったといわれている。五穀豊穣のひとつに数えられている作物である。

【生 態】

 イネより短期間で育ち、荒地などでも栽培ができることから昔は広く栽培されていた。しかし、近年はオーストラリアなどから一部輸入されている。ほかの穀物と合わせて五穀米として利用されている。

【栄養と機能性成分】

 タンパク質、鉄分、亜鉛が含まれており、米や麦に劣らず栄養がある。

【保存方法】

 開封した黍は、密閉容器に入れ冷暗所で保存する。

2015年6月22日月曜日

木耳

○木耳(きくらげ)

 キクラゲ科のキノコであるキクラゲを乾燥させ加工した製品。形が人の耳の形に似ていることから「木の耳」という意味で「木耳」の名になったといわれている。

【生 態】

 おもに中国、韓国で栽培されており、天然と菌床栽培がある。春先から梅雨時にかけてケヤキ、クワ、ブナなどの広葉樹の樹木や枯れ木に発生する。ゼラチン質で、乾燥すると軟骨質になる。

 食感が海のくらげに似ていて、こりこりとした歯ざわりが楽しめる。かたちは不規則で円錐形など変化に富む。表面は柔らか。最近では日本国内でも、群馬県、熊本県などで生産されているが量はわずかである。中国の吉林省、黒龍省などが多く輸入されている。

【主な種類】

●黒きくらげ

 一般的なきくらげで中華料理、野菜炒めなどに利用されている。セミとも呼ぶ。中国産が多く、等級も一等から三等まで区別されている。

●裏白きくらげ

 黒きくらげより大きく、表面は黒色で、裏面にビロードのように白い毛が生えている。おもに台湾など暖かい地方で平地に生育する。

●白きくらげ

 シロキクラゲ科のキノコで、クヌギの木に発生する白色のきくらげ。昔から漢方薬の材料として珍重されていたが、最近ではデザートとしてシロップなどをかけて食べられている。中国の四川省などで生産されており、デザートとして利用されるようになってからは、年間を通して販売量が安定するようになった。

【栄養価と機能性成分】

 ビタミンD、鉄分、カルシウム、食物繊維などが豊富に含まれている。

【品質の見分け方】

 肉厚でよく乾燥しており、異物混入がなく、かび臭くないものを選ぶ。

【保存と利用方法】

 高温多湿を避け、瓶などに保管する。精進料理や中華料理、ラーメンの具材のほか、最近では酢の物、チゲ、ナムルなどの韓国料理にも幅広く利用されている。調理前には水で洗ったのち10分以上水に浸けておく。

2015年6月21日日曜日

乾麺類

○乾麺類(かんめんるい)

 ここでは、「干し麺」として市場に出回っている麺を総称して乾麺と呼ぶ。麺の歴史は古く、奈良時代に中国のさまざまな大陸文化とともに、日本に伝来した。当時の書物に、中国の麺をさす「索餅」の名で登場している。

 索餅は小麦粉と米粉を練って、縄のようにねじったものだったといわれている。和名は「麦縄」であり、鎌倉時代の文献にはこの麦縄の名で登場している。「索」は縄を、「餅」は小麦粉を使った食品であることから、索餅と麦縄は同じものだったとみられており、そののち、索餅が「索麺」「素麺」と変化して素麺の名が定着したのではないかとされている。

 また、索餅は伝来した当初、宮中儀式用の供え物として利用されていた唐菓子の一種であったという説もある。平安時代から旧暦の7月7日の七夕のとき、宮中の儀式の供え物にされていたといたといわれている。全国乾麺協同組合では、これにちなんで7月7日を「そうめんの日」と定めて消費拡大を図っている。

【定 義】

 日本農林規格による乾麺類の定義は次の通り。

1.小麦粉または蕎麦粉に食塩、やまのいも、抹茶、卵などを加えて練り合わせたのち、製麺し、乾燥したもの
2.1に調味料、やくみなどを添付したもの。

【主な種類】

 素麺、冷麦、うどんがあるが、これらの違いは基本的に原料ではなく太さの違いである。日本人は特に麺類好きの国民であり、全国にまたがり産地ブランドがある。日本列島は南北に長く、地域により気候が大きく異なるとともに四季がある。

 こうした環境から、麺は多くの食べ方や嗜好の違い、食文化、行事、風習などが顕著に表れている食材であるといえるだろう。よい小麦が収穫できること、よい水があること、そしてよい塩があることがおいしい麺の生まれる大きな要因である。

【製造方法】

 製麺業者により異なるが次の製法が一般的である。

1.小麦または蕎麦粉に食塩を加えてミキサーで混合しこねる(加水率は30~50%)。
2.フィダーをとおして粒状になった生地をろーるに押し込んで麺帯をつくり成型する。
3.さらにグルテンの形成を整えるため2枚の生地をあわせる。
4.熟成させる。熟成時間は製品によって異なり、うどん、冷麦などは長く、蕎麦は短い。
5.麺帯を圧延ローラーにかけて徐々に薄く延ばしていく。
6.切り刃でそれぞれの商品の幅に切り出す。
7.自然乾燥、あるいは扇風機などで除湿乾燥する。
8.麺の特長により長さを調整して裁断する。

【栄養と機能性成分】

 素麺やうどんは小麦粉と塩で作られているので澱粉とタンパク質が多い。ほかの野菜の精進揚げや、三つ葉、かまぼこ、鶏肉、てんぷらなどと組み合わせてバランスよく食べるのがよい。

【保存と利用方法】

 全国乾麺協同組合連合会は乾麺の賞味期間を、手延素麺は製造から3年半、手延冷麦は1年半、手延うどんは1年以内を目安にしている。しかし、保存方法や管理状態で賞味期限は変化する。とりわけ手延べの場合は、製造工程において油を使うため、保存方法によっては変質する可能性が高い。機械製造乾麺の場合の賞味期限は、うどん、きし麺は1年以内、冷麦、蕎麦は1年半、素麺は2年を目安として判断している。

 また、手延麺を湿度管理された場所で保管した場合、「古品」として希少性が高くなる。通常、麺類は秋から冬の寒い時期に製造され、梅雨をこして出荷する。古品は、これを木箱や紙箱に入れて除湿管理して1年以上保管された製品。麺が熟成されるとともに、油返しの臭いがとれてシャキッとした食感がうまれることからギフトなどに人気がある。

2015年6月20日土曜日

干瓢

○干瓢(かんぴょう)

 ウリ科のユウガオを細く割いて干した製品。ユウガオは一般的に「瓢(ふくべ)」と呼ばれている。中国で古くから作られていた干瓢が日本に伝わったのは16世紀初頭のこと。日本で最初の産地は摂州(大阪府)の木津であったといわれている。

 1712年に、藩主鳥居忠秀が近江の国(滋賀県)の水口から下野国(栃木県)の壬生へ領地換えになったとき、ユウガオの種を取り寄せて壬生領内での栽培を奨励したため、栃木県で生産が盛んになったといわれている。

 昭和の末期から日本の農家がユウガオの種を中国に持ち込み、干瓢の生産が始まり1982年から中国産の輸入が許可された。現在では業務用を中心に中国の大連郊外などから多く輸入されている。

【生 態】

 ユウガオは同じウリ科のヒョウタンと近縁である。花が咲いてから30日ほどで丸型、あるいは長形の果実がなる。果実は直径が約30cmにも成長する。ヒョウタンは最古の栽培植物で、原産地はインド、北アフリカといわれている。

 一本の枝に雄・雌の両方がある雌雄同株のつる性植物で、初夏に咲く白い花は夕方咲いて朝しぼむのでミツバチや昆虫ではなく風で受粉する風媒花である。つるは竹竿に巻き付き、長さ1mにもなる。

 栃木県の壬生、石橋、上三上などの土壌は関東ローム層に覆われているため排水がよく、土が軽いため、浅根性で横に広がる性質のユウガオの栽培に適している。また、気候がユウガオの生育に適していることも、作付けが広まった要因である。現在、国産干瓢の95%が栃木県で生産されている。

【製造方法】

 ユウガオは加工の前日の夕方に収穫しておく。加工当日は、午前3時頃のまだ夜が明けない時間からユウガオをむき始める。まず、ユウガオのヘタを鎌で取り、芯の中心に鉄棒を刺し機械で表面の皮をむく。厚さ4cm、幅4~5cmくらいに細く長く実をむいていき、最終的に約2mくらいの長さになる。

 使える部分は表皮肉部分で、中心部は種が多いので使用できない。日が出たらすぐにビニールハウスの中に運び、干し始める。ユウガオの生の状態で重さ1個約6~7kgあるが、1個のユウガオから約150gの干瓢しか作ることができない。以前は農家の軒先などで天日乾燥したが現在はボイラーを使い徐々に除湿しながら乾燥する農家がほとんどである。

 干瓢は空気に触れて酸化すると褐色に変化する。そのため二酸化硫黄で薫蒸する。薫蒸することによって漂白・防腐・防カビ・防虫することができ、保存可能な期間も長くなる。

 二酸化硫黄の残存量は0.5ppm以下と決められている。二酸化硫黄は水に溶けやすい性質があり、干瓢を水で戻したときにはほとんど残存していないが、最近は無漂白干瓢が作られている。

【栄養と機能性成分】

カリウム、カルシウム、鉄、ミネラルなどを含むが、含有量は切干大根より少ない。食物繊維は多く、100g中30.1gある。

【品質の見分け方】

 栃木県の干瓢協同組合では自主検査規格を定めている。干瓢は、製品ごとに幅、筋の量、色、太さ、長さなどのばらつきがあり、また、雨に濡れて染みのついたもの、芯に近い種が付着したものなどが混じっている場合があるので、産地問屋での選別、保存状態などが信用取引において重要となる。等級は特等、一等、二等、ツルに選別される。

 ユウガオは収穫時期により品質が異なる。6月下旬から7月上旬に収穫される一番玉は、あくが強く色がやや黒っぽい。7月下旬から8月上旬に収穫される二番玉がもっとも上質である。収穫時期が遅くなるほど徐々に品質が落ち、かたくなる。収穫時期は9月中旬で終わる。収穫時期末期に収穫したものを末玉と呼ぶ。

 近年は中国大連郊外などで、日本の指導により干瓢を生産している。現在、日本で出回っている干瓢の多くは中国産である。その年の出来高で価格相場大きく動く。

【保存と利用方法】

 軽く水洗いし少量の塩を振って、両手で弾力の出るまで揉み洗いする。そののち、水かぬるま湯に5~10分浸して水気を切り、好みのかたさまでゆでる。保存は湿気が入らないよう、ポリ袋や缶などに入れて保存する。

2015年6月19日金曜日

乾燥舞茸

○乾燥舞茸(かんそうまいたけ)

 サルノコシカケ科のキノコであるマイタケを乾燥し加工した製品。生のマイタケと比べて栄養価は変わらないが、保存性は高まる。冬の鍋物などの具材として利用されている。

【生 態】

 天然のマイタケはマツタケに次ぐ高級品で、おもに秋田県などで採取される。現在では菌床栽培した製品が主流で、特に新潟県で栽培が盛んである。

2015年6月18日木曜日

芥子粉

○芥子粉(からしこ)

 香辛料の芥子粉には「和からし」と「洋からし」がある。ブラックマスタードの種を粉末にした「黒からし」が「和からし」とされてきたが、最近はカラシナの種を粉末にしたものを「和からし」と呼び、それを水で練ったものが「練りからし」として市販されている。

 「洋からし」はホワイトマスタードの種を粉末にしたもので、これに水や酢、小麦粉を加えたものがマスタードとして市販されている。天然の色素であるウコンを使用して鮮やかな黄色に着色している。

【生 態】

 カラシナはアブラナ科の越年草である。中央アジア原産といわれ、インド・中国を経て日本に伝わってきた。日本では北海道や東北地方で栽培されている。

【栄養と機能性成分】

 カリウムを多く含みカルシウム、リン、鉄などが豊富である。

【保存と利用方法】

 湿気を嫌うので缶に入れて保管する。ぬるま湯を加えてよく練り、10分ほどおいてから利用する。春野菜のおひたし、おでん、納豆などに利用できる。料理の範囲は広い。

2015年6月17日水曜日

勝栗

○勝栗(かちぐり:搗栗)

 ブナ科の栗の実を殻のまま干して、殻と渋皮を取り除いた製品。岩手県の一部では押栗とも呼ばれる。小ぶりなシバグリで作られることが多い。

 「勝ち」に通じることから出陣や勝利の祝い、正月の祝儀などに用いられてきた。現代では選挙、受験、競技などのときの演技担ぎなどに人気がある。

 日本では野生のシバグリが多くみられる岩手県、長野県、宮崎県などが主産地であるが、中国、韓国からの輸入も多い。

【製造方法】

 クリを生のまま天日で乾燥し、臼でついて砕き甘皮と渋皮を取り除く。

【保存と利用方法】

 湿気のないところで、袋か瓶で常温保存する。利用するときは、重曹を少々溶かした水に2~3時間浸けて、中火で豆と同じように煮る。

2015年6月16日火曜日

片栗粉

○片栗粉(かたくりこ)

 本来は、山野に自生するユリ科の多年草であるカタクリの地下茎からとった澱粉のこと。しかし、現在は、カタクリの地下茎が細く澱粉の抽出に手間がかかるため、生産は難しく、効率的でないのでほとんどが作られていない。ジャガイモの澱粉を片栗粉という名前で販売してもよいように商標登録されている。

2015年6月15日月曜日

柏の葉

○柏の葉(かしわのは)

 ブナ科の落葉高木であるカシワの葉をゆでてあく抜きした製品。新粉餅で餡を包んで蒸したものを、柏の葉でくるんだ「柏餅」は端午の節句(5月5日)につくられる供え物である。カシワはブナ科の植物で、新芽が出るまで古い葉が落ちないことから「子孫繁栄」、「子供が生まれるまで親は死なない」といういわれがあり、端午の節句以外の祝い事でも利用される。

 餅に柏の葉を使用するのは東北、信越、関東地方が多い。山地は長野県から青森県に移動し、近年は韓国、中国などから輸入されている。収穫時期は春。関西、四国地方などでカシワが自生していない地域では、サルトリイバラ科の葉を代用しているところもある。

【保存と利用方法】

 利用前に下準備をする。水に浸してからゆでてあく抜きする。近年は利便性から塩漬けしたものや、ビニールでパックしたものが輸入されている。季節時だけ売れることから販売期間が短く、夏は気温が高くなるため、害虫が発生しやすくなる。葉は食べられないことはないが、おいしくないので食べない。

2015年6月14日日曜日

豌豆豆

○豌豆豆(えんどうまめ)

 マメ科の一、二年草であるエンドウの種子を乾燥させた製品。エンドウには、未熟なさやをサヤエンドウとして食べる品種もあるが、種子を乾物に加工する場合は乾燥実子用の品種を使用する。

【生 態】

 原産地が中近東地域で、冬に雨が多い地中海性気候であったことから、秋に種をまき、翌春に収穫される。夏は成長期ではない冬の寒さが厳しい東北地方や北海道では春まきして、初夏に収穫する。連作障害をおこしやすく、酸性土壌にも弱い。

【主な種類】

●青えんどう

 缶詰や煎り豆などの豆菓子。甘煮のうぐいす餡などに利用される。生のまま、あるいはゆでた上体で流通する場合はグリーンピースの名で呼ばれている。

●赤えんどう

 塩ゆでしたものがおつまみとして人気があったが、現在ではみつまめなどに使われるが需要はわずかである。

2015年6月13日土曜日

荏胡麻

○荏胡麻(えごま)

 シソ科の一年草であるエゴマの実を乾燥させて煎った製品。近年の健康志向の高まりにともない、リノール酸やオレイン酸を豊富に含んでいるとして、エゴマの種子から搾った荏油が注目されている。

 町おこしとして福島県、長野県などで製造販売しているが、生産量が少なく高価なため、まだ多くは普及していない。名前からしてゴマの仲間だと思われがちであるがゴマではなく、シソの近縁である。

【生 態】

 インド・中国の原産とされてる。「荏」、「十念」と呼ぶ地域もある。煎ってそのまま飾りとして利用したり、油をとるために栽培されている。韓国では葉を焼肉と一緒に食べるのが一般的である。長野県、岐阜県などでは、種をすりつぶし「荏胡麻味噌」として五平餅に塗って食べられている。ゴマと同様に使えるが、皮がかたいので煎ってから調理する。

2015年6月12日金曜日

浮粉

○浮粉(うきこ)

 小麦粉澱粉のこと。小麦粉に水と食塩を加えながら揉むとタンパク質はかたまり、小麦粉に含まれるデンプンは水と一緒に流れ出る。それをふるいで水と分離し乾燥させると、本葛粉に似たかたまりになる。これを製粉機で粉にしたものが浮粉である。葛餅などの和菓子のほか、関西ではかまぼこの増粘剤として利用されている。

2015年6月11日木曜日

隠元豆

○隠元豆(いんげんまめ)

 マメ科の一年草であるインゲン豆の種子を乾燥させた製品。原産地は中南米一帯で、紀元前から栽培が始まりメキシコを中心として広まっていったとされている。江戸時代初期に、明の隠元禅師が日本に渡来しもたらしたという逸話が命名のもとになったが、隠元禅師が実際になんの豆を持ち込んだのかは定かではない。

【生 態】

 非常に品種が多く、日本全国でそれぞれの土地に合う適正品種を選んで栽培している。得に北海道の生産量が多く、現在は国内生産量の約90%を生産している。

 また、豆類の中では大豆の次に輸入量が多く、輸入品は甘納豆や菓子に利用される。比較的成長が早く、年に3回も収穫できることから場所によっては三度豆などの呼び名もある。

【主な種類】

●大福豆

 白いんげん豆の一種。粒大きく味もよいことから需要が多く、最高級品とされている。甘納豆や煮豆、きんとんなどに利用される。

●手亡豆(てぼうまめ)

 白いんげん豆の一種。つる(手)がなく、枝に直接実るため「手亡」と呼ばれる。豆の大きさによって大手亡、中手亡、小手亡と呼び分けられてる。白餡の原料として利用される。

●金時豆

 種皮が濃い赤色の品種。いんげん豆の中で国内栽培量が最も多い。「福勝金時」「丹頂金時」など、さまざまな新種が開発されているが、北海道帯広の大正町で量産が始まったことからその名がついた「大正金時」が有名である。おもに甘納豆、煮豆などに利用される。

●うずら豆

 灰褐色の種皮に茶褐色の斑点模様がある品種。鳥のウズラの卵に似ていることからこの名がついた。本長、中長、丸長など、さまざまなかたちの種類がある。

●虎豆

 白い種皮に虎の皮に似た斑点がある品種。アメリカから伝来した。澱粉の粒子が細かく粘りがあるため、煮豆に最適とされている。

●紫花豆

 赤紫の種皮に黒い斑点がある品種。インゲンマメと同属だが、ベニバナインゲンというマメ科の多年生つる草の種子である。日本では江戸時末期に伝来した。赤い美しい花をつけるため、当初は観賞用に栽培されていた。大粒で食べ応えがあるため、甘納豆や煮豆に利用される。

 東北地方などの涼しい地域や、長野県や群馬県などの標高が高く冷涼に地域で栽培された紫花豆は「高原花豆」の名前で販売されていることが多い。

●白花豆

 ベニバナインゲンの一種。種皮や花が白く、白インゲン豆などと呼ばれることもある。

●紅絞り豆

 虎豆と金時豆の交配種。紅白の模様から縁起物として珍重されている。煮豆やスープなどの料理に利用され、煮るとピンクになる。生産量は少ない。

 このほか、パンダ豆、キドニービーンズ、ビルマ豆、カナリオビーン、カリオカ豆、クランベリービーンなど輸入品を含め数多くの種類がある。

【栄養と機能性成分】

 大豆に比べるとタンパク質と脂質が少なく、炭水化物が多い。ミネラルやビタミンB群、食物繊維が豊富である。

2015年6月10日水曜日

煎り糠

○煎り糠(いりぬか)

 生糠を煎った製品。玄米を精米するときに生じる副産物である生糠は、そのままだと雑菌が多く、発酵してしまったりするので保存性が悪い。これを煎ることで利便性を高めたのが煎り糠である。

 玄米を白米にすると約10%の生糠が出る。生糠は非常に脂肪分が多いため、抽出精製し米油として、あるいは化粧品などに利用されている。日本の漬物に欠かせない「糠床」や飼料用、キノコの栽培などに利用されている。

【製造方法】

 市販されている家庭用の煎り糠は、干し椎茸の粉、唐辛子、芥子粉、昆布などを配合して「味付け糠」として販売されている。また、糠独特の臭みを取るためにビール酵母菌などを配合したものもある。

【栄養と機能性成分】

 タンパク質やビタミンB1、ミネラルなどの栄養の宝庫だが、直接食べるものではないため、多く摂取することは期待できない。

【保存方法】

 糠を煎ったものではあるが、虫などが発生しやすいので缶に封入するが、早めに使うようにする。

2015年6月9日火曜日

芋茎

○芋茎(いもがら)

 サトイモ科の多年草であるサトイモの葉柄(茎)を乾燥させた製品。山形県、福島県、新潟県などで需要が多い。冬場の乾燥野菜として利用される製品である。葉柄の表皮をむいてから乾燥させることが多いが、表皮をむかずにそのまま荒縄でしばり軒先などに干して乾燥させたいもがらもある。

 サトイモは東南アジア、マレー半島などが原産地といわれており、中国を経て日本に伝来し、江戸時代には各地で栽培されるようになった。熊本城を築城するときに籠城を予見し畳の芯になる畳床として用いたことや、太平洋戦争のとき乾パンの原料に用いたという逸話がある。

【名 称】

 生の葉柄を「ずいき」と呼ぶが、いもがらのことを「ずいき」と呼ぶこともある。葉柄が緑色のカラドリイモやハスイモ(葉柄専用種)などでつくった「青がら」、葉柄が赤紫色のヤツガシラやトウノイモなどでつくった「赤がら」がある。

 また、いもがらの葉茎を2~3つに割いて乾燥したものを割菜と呼ぶ。割菜は、生のまま湯がいて熱いうちに酢をかけて食べられている。

【生 態】

 サトイモは高温多湿を好むが、土質に適応性があるた青森県以南の全国各地でつくられており、それぞれの土地に適した品種が多い。11月頃から霜の降りる12月が収穫期であり、東北地方や徳島県、高知県、和歌山県、熊本県などが産地である。表皮をむくときにあくが出るため、下処理や干し作業など加工に手間がかかる。

【主な種類】

 特別な産地銘柄はなく、どの品種も製造が可能。よく原材料となるのは京都産のエビイモ、ハスイモ、カラドリイモなどである。

【栄養と機能性成分】

 血圧を下げる効果があるといわれるカリウムのほか、カルシウムや食物繊維が豊富。脂肪をほとんど含まない低エネルギー食品である。

【保存と利用方法】

 5月を過ぎるとカビや害虫が発生するので缶や密閉容器に入れて保存する。生でも食べられるので戻し方は簡単。よく洗い水に2~3分浸けるだけでよい。多少のえぐ味があるのを好む人もいるが、えぐ味をとるのは熱湯に浸けて、冷めたら水を取り替えるか煮るとよい。

 味噌汁やほかの野菜などと一緒に煮物や油いために利用する。また干瓢の代わりに紐のように結んだり、海苔巻きなどにする。

2015年6月8日月曜日

餡粉

○餡粉(あんこな)

 餡を乾燥させた粉末状の製品。昔は、米や麦の粉でつくった生地の中に包んだ中身を全て「餡」といった。いまでいう肉まんの中身をさしていたようだが、仏教で肉食が避けられ代わりに豆類が使われるようになっても、そのまま餡といわれたと伝えられている。

 豆は、吸水し、過熱されることで澱粉粒子をタンパク質が薄く包み、なめらかな餡状になる。したがって豆をそのまま乾燥したり、煎って粉にしても餡粉にはならない。豆に砂糖を加えて煮た餡は日本独特の食品であり、さまざまな菓子の食材として利用されている。

【製造方法】

 製造方法によって、さらし餡とこし餡にわけられる。さらし餡は灰汁の少ない味なので、高級菓子に使われる。こし餡は水さらしをしないため、小豆の濃い味が残っている。

●さらし餡

1.小豆を煮てすりつぶし、布で漉す
2.表皮を取り除く
3.水さらしをして水を切り、乾燥する

●こし餡

1.小豆を煮てすりつぶし、布で漉す
2.表皮を取り除く
3.水を切り、乾燥する

【主な種類】

●赤餡

 小豆や、そのほかの赤色の豆(金時豆、うずら豆、いんげん豆など)を原料として、赤色に仕上げた製品。

●白餡

 大手亡豆などの白色の豆(白小豆、大手亡、大正白金時豆など)を原料に白色に仕上げた製品。

【栄養と機能性成分】

 餡の原料は小豆である。

【保存と利用方法】

 水分は6%以下なので、包装資材に傷がなければ1年以上経過しても変化しない。しかし、白餡の豆は脂肪分が比較的多いので、1年以上経つと油臭くなる。湿気のない容器に保存すること。練り餡や生餡はそのまま使えるが、餡粉は鍋に水を加えてかき混ぜてから約30分間静かにおき、水を充分吸って生餡の状態に戻してから砂糖などを混ぜて加熱してから利用する。

2015年6月7日日曜日

○粟(あわ)

 イネ科の一年草であるアワの穂になる果実を乾燥させた製品。日本における五穀のひとつである。現在ではあまり食べられていないが、前後の食料不足に時は粟だけ炊いて粥にしたり、米に混ぜるなどして日常的に食べられていた。

【生態】

 東アジア原産で、穂は黄色く熟し垂れ下がる。生育期間が3~5ヶ月と短いため、ヒエとともに古くから庶民にとって重要な作物だった。日本には、縄文時代に渡来したと考えられている。温暖で乾燥した風土を好み高地でも栽培が可能な作物である。

 粳種と糯種があり、粟餅などの原料となるのは糯種、小鳥の餌などで市販されているのは粳種である。産地は熊本県、鹿児島県などが多く、ほかに長野県、青森県、岩手県、福島県、北海道などでも栽培されている。

【栄養と機能性成分】

 タンパク質、ビタミンB1、鉄分、ミネラルが豊富である。ほかの雑穀と比べてパントテン酸が多い。近年は健康志向から他の雑穀と合わせて五穀米、十穀米として市販されている。

2015年6月6日土曜日

アマランサス

○アマランサス

 ヒユ科の一年草であるアマランサス(ハゲイトウ)の種子を乾燥させた製品。近年の健康食品ブームから実を粉にして小麦粉と混ぜてパン、クッキー、うどんなどに使われたり、煎ってはぜさせたあと、牛乳や糖蜜を混ぜるなどして食べられている。

【生態】

 アマランサスは、約800種があるが、観賞用、野菜用、穀物用に栽培されているのはおよそ10種である。晩夏から初秋にかけて色付く。際゛はいの歴史は古く、紀元前5000年~紀元前3000年頃にアンデス南部でアステカ族が種子を食用とするために栽培していたとされている。それ以降、13世紀のインカ帝国に至るまで、トウモロコシや豆類に匹敵する重要な作物だったという。

 日本には、江戸時代に主に観賞用として伝来した。東北地方では小規模ではあるがアカアワの名前で栽培されるようになった。やがて全国に栽培が広まり、水田転換作物として九州地方などでも栽培され始めた。

【栄養と機能性成分】

 ほかの穀物に比べてタンパク質、カルシウム、脂質、鉄分などを豊富に含み繊維、カルシウム、リン、カリウムなどが多い。栄養価の高い食品である。また、必須アミノ酸も多く含んでいる。葉はクセがないのでおひたしにしたり、てんぷらにもできる。葉は野菜、種子は穀物、花は観賞用と三拍子揃っている。

2015年6月5日金曜日

小豆

小豆(あずき)

 マメ科の一年草であるアズキの種子を乾燥させた製品。昔はよく、農家が自家用に地豆としてアズキを栽培していた。いまは北海道が主産地であるが、ほかの雪国でも春の田植えが終わる頃にアズキの種をまき、秋の稲の収穫が終わる頃にアズキも収穫して「冬よ来い」と待ったものだった。

 瓢箪の中身をくり抜いて実と種を取り除き、囲炉裏で乾燥させて、その長い空洞の中にその年の種豆を入れて保存していた。そして、翌年の春にその種豆をまくのである。秋の収穫のときには、庭先にむしろを敷いて乾燥させていた。乾燥したら長い棹でたたいて莢と豆を分離し、唐箕にかけて風で豆と雑物を選別する。

 赤い小豆は祝の席には必ず登場する。正月の餡子餅、鏡開き、小正月の小豆粥のほか、田植えが終わると牡丹餅、お盆、秋の稲刈りが終わるとお萩、といったように小豆は一年中登場する。甘いものに不足していた時代に人々が心待ちにしていたのは餡子である。小豆がないときには金時豆で代用していたため、いまでもその名残りで、小豆を添えたカキ氷のメニューには金時の名がついている。

【生態】

 ダイズと同じく、昭和初期に北海道開拓政策の換金作物として奨励されたことにより栽培が盛んになった。北海道における畑作の主力作物として広まり、国内生産量の約75%以上が作られるようになった。北海道は、昼夜の寒暖の差が大きいためアズキの生育に適している。昼は温かく夜は冷涼であることから、アズキの糖分が高まり、その糖分が蓄えられるためである。

 豆類全般にいえることだが、連作ができないため輪作をする必要がある。3~4年の間栽培すると特定の害虫・病原体がつくため、収穫量が低下する。豆類の根には根粒菌が共生し、空気中の窒素を固定してアミノ酸や亜硫酸を植物に供給しているが、害虫・病原菌がこの根粒菌の働きを阻害することが収穫量低下の原因と考えられている。

 このような連作障害を防ぐため、イネ科の植物など豆類につく害虫が好まない作物の栽培を組み込んだ輪作が行われている。根粒菌の種類は豆によって異なり、ひとつの根粒菌が繁殖すると他の根粒菌は育たなくなる。そのため、ほかの豆類を育てることもできない。再びその土地で同じ種類の豆を作れるようになるまで採算が合いにくい。そのため広大な土地をもつ北海道が主産地となっている。地域によって異なるが5月中旬頃に種をまき、10月に収穫する。アズキは低温に弱いため開花時期の温度などによって収穫量が左右される。

【製造方法】
 完熟した種子を乾燥させたのち、唐箕にかけて風で石や雑物を除く。

【主な種類】

 粒の大きさによって、普通種と大納言に分けられる。大納言小豆という品種のもので各県農協で定めている自主規格を満たした製品のみが「大納言」の名で販売されている。

●普通小豆

 大納言小豆、白小豆以外の小豆のこと。寒さに強く、他の普通小豆に比べて粒が大きい北海道産のエリモショウズが最も多く生産されている。全国的に栽培されているが、北海道内で国内生産量の約70~80%が生産されている。餡や羊羹、赤飯に利用される。

●大納言小豆

 大粒でしっかりとした品種。北海道大納言や、兵庫県の丹波大納言などある。皮が破れにくく煮崩れしないため、それを生かして甘納豆やし鹿の子などの和菓子に利用される。

●白小豆

 種皮が白く高級白餡などに使われる。岡山県の「備中白小豆」などが少量であるが栽培されている。

●嫁小豆

 白い斑の入っている品種。福島県相馬市でのみ栽培されている。

【栄養と機能性成分】

 ダイズよりもタンパク質と脂肪が少なく、比較的炭水化物の占める割合が高い。インゲンマメと成分がほほ同じで、主成分は炭水化物であり、糖質、ビタミンB1などが含まれている。また、鉄、亜鉛のほか、アントシアニン、サポニンなどの機能性成分も豊富である。

【保存と使用方法】

 密閉容器に入れて涼しいところにおいて保存する。小豆は皮がかたいため長期保存にむいているが、2年目になると色が少し濃くなり渋みも少し強くなる。また、煮る時間も長くなるので、今年度製造された製品を選ぶ。

 小豆に火をかける前に、水につけて吸水させるのが基本だが、小豆は粒が小さく皮がかたいので吸水なしで、いきなりゆでてもよい。その場合は、吸水させた場合よりも20分ほど長く煮る必要がある。ただ新豆は皮が薄いので、吸水させたほうがゆっくり膨らみ皮が破れにくくなる。

 吸水の水温が高いと腐敗しやすいので、冷蔵庫などに入れて浸水するとよい。ゆでるときには鍋の中で豆が踊らないように、必ず落し蓋をする。沸騰したら水を取り替えて弱火にして、あくを取りながら煮るとすっきりと風味よく仕上がる。 

2015年6月4日木曜日

麻の実

○麻の実(あさのみ)

 アサ科の一年草であるアサの実を乾燥させて炒った製品。七味唐辛子やがんもどきを食べたとき、プツンと歯に当たる種が麻の実である。最近はがんもどきなどに入っていることは少なく、懐かしい食品のひとつである。

【生態】

 原産国は中央および西アジアである。アサはおもに繊維をとるために栽培されているが、実は食用にもされる。そのまま噛むと独特の香りがあり、軽く焼くとより香ばしくなる。実には少量の麻酔性物質があるため、日本ではアサの栽培をすることは禁止されており、販売されているものは発芽しないように炒ってある。近年はほとんどが輸入品である。