2015年9月27日日曜日

レンズ豆

○レンズ豆

 マメ科の一年草であるヒラマメの種子を乾燥させた製品。中米や南ヨーロッパ、イタリア、西アジアなど、さまざまな地域からの輸入品が多く赤レンズ豆と青レンズ豆がある。インドのほか、世界各地でスープの中に入れるなどして日常的に食べられている。

2015年9月24日木曜日

餅とり粉

○餅とり粉

 コーンスターチ、小麦粉澱粉、片栗粉などの澱粉を混合した製品。餅つきをするときなどに、餅が手につかないようにするために使う。

2015年9月22日火曜日

麦焦し

○麦焦し(むぎこがし)

 イネ科の越年草であるオオムギを煎ってから粉にした製品。関西では裸ムギで製造する。地域によって異なる呼び名があり、関西では「はったい粉」、日本海側では「こうせん」などと呼ぶ。砂糖を加えたそのまま食べたり、水またはお湯で練って食べる。

2015年9月16日水曜日

干し湯葉

○干し湯葉(ほしゆば)

 投入を煮立て、表面にできる薄い膜をすくいとったのが生湯葉で、乾燥させた製品が干し湯葉である。湯葉の歴史は古く、いまから1200年前、最澄が中国から持ち帰ったといわれている。

 日本に最初に湯葉が伝わったのは京都の比叡山の天台宗総本山延暦寺で、精進料理の材料として使われ、坊さんにとても好まれた。江戸時代の文献「豆腐百珍」(1782年)には湯葉料理が記載されており、いろいろな種類が作られ一般庶民にも広まった、とある。

 保存性が高く、精進料理や会席料理ならではの食材として大豆加工品の中でも最高級品である。近年は和食だけでなく、洋食などにも健康的な食材として利用されている。

【名 称】

 豆乳の表面がしわになり姥の顔に似ているので「うば」と呼ばれた。また、豆腐の「うわもの」の音が濁って「ゆば」になった、ともいわれている。

【製造方法】

①ダイズをひと晩水に浸けて戻す。
②水を注ぎながら挽く。
③大釜で煮て、布でこして豆乳を作る。
④深さ5~10cmくらいの木枠で仕切った鍋に移し、微調整された火にかけ熱を加えて、じっくりと皮膜を作り上げる。
⑤皮膜を竹串でそっと引き上げる。引き上げは湯葉の張り具合や火加減を見ながら、早からず遅からず絶妙なタイミングで1枚1枚ていねいにそっと引き上げる。職人技である。
⑥半乾燥のところを切り、成形してから温風乾燥する。

【主な種類】

 干し湯葉には、さまざまな形に加工した製品があり、以下に紹介する製品のほかにも、小巻湯葉、結び湯葉、竹湯葉、平湯葉などがある。

●大原木湯葉

 真ん中を昆布で結んだ京湯葉。湯葉と湯葉の間にだしがしみこんで旨味をひきだす。

●巻き湯葉

 湯葉を幾重にもまいてつくる。水分を含むと広がってボリューム感が出る。

●蝶々湯葉

 蝶々のようなかたちに成形した湯葉。料理の華添えになる。

●京湯葉

 京都周辺で生産される湯葉。仕上がりが平たいので板湯葉として多く加工され、寺院、京料理店や土産物として販売されている。

●日光湯葉

 日光周辺で生産される湯葉。京都で作られていた湯葉は、日光開山のときに修験者たちによって日光に持ち込まれ、その消化吸収と豊富な栄養から、貴重なタンパク源として江戸時代に二社一寺に供え物として納められたという。日光湯葉は「湯波」と書くことが多い。

【栄養と機能性成分】

 湯葉は、豆乳からつくるので大豆加工品と同じ栄養価があり、消化吸収がよく少量でも栄養価が高い。鉄分のほか、亜鉛、カリウム、ミネラルなどが豊富で子供や高齢者の栄養補給に適している。

【保存と利用方法】

 常温で3ヶ月くらいを目安に保存する。強い紫外線に当たると酸化してしまうので、冷暗所で保管する。乾燥したままお吸い物に直接入れたり、弱火でゆっくり火をとおせばよい。その際、湯葉が吸う分、煮汁をやや多めにする。強火で火をとおすと身がかたくなるので注意する。

2015年9月15日火曜日

干し大根

○干し大根(ほしだいこん)

 アブラナ科の二年草であるダイコンを千切り、あるいは薄切りにして乾燥させた製品。冬場につくり、冬の生野菜が不足する時期が最需要期となる。保存食として長年親しまれている製品で、北から南まで日本各地でつくられており、地方独特の作り方や食べ方がある。秋の台風や気候条件で生産量が大きく変わるため、年間の価格が大きく相場に反映される製品である。

 干し大根の中でも全国的に流通しているのは切り干し大根である。生産の中心は千葉県、愛知県の渥美半島、宮崎県と移動し、それにともない干し大根にむく青首大根も移植されてきた。切り干し大根は、江戸時代初期に凶作対策として開発された保存食であった。現在市販されているものは、宮崎県産が全体の90%を占めている。

【名 称】

 切り干し大根と関東地方では呼ぶが、千切り大根と呼ぶ地方もある。地方によって呼び名が異なる。

【生 態】

 大根は3世紀頃、中国から朝鮮半島を経て日本に持ち込まれたといわれている。中国の大根は大型で水分の多い華南系と、皮に色があり澱粉質が多く耐寒性のある華北系がある。この2系統とも日本に伝来し、時代とともに交雑が進み各地区の気候風土に合うさまざまな品種が誕生した。

 その中でも、干し大根に向くのは青首大根である。華北系の子孫であった愛知県の宮重大根を改良した品種であり、成長が早く病気に強い。また、澱粉質が多く水分が少なく、大根に鬆が入りにくいことから乾物加工に最適な品種である。乾物に加工する前の年の秋(8月後半~9月上旬)に畑を整地し、青首大根の種をまき、12月下旬~2月中旬頃に収穫する。

 宮崎県の北部地区、国富、西部、綾町、新富、宮崎市、尾鈴などで約80%生産されており、田野町、清武、木花地区でも約20%生産されている。山間部でも作付されているが、特に北部地区は平野部であるため作付面積が広く、風が強いため異物の混入が少ない。

 南部地区は切り干し大根以外につぼ漬大根も生産しており、材料であるダイコンの質が高いため干し大根の品質もよい。また、北部地区より約5℃前後気温が低いため乾燥作業の効率がよく、色が白く仕上がりダイコンの旨味が表面に出にくいため、よいものができる。

【製造方法】

 宮崎県で行われている天日干しの製造方法は次の通り。

①収穫したダイコンを洗い、青首と尾をカットする。
②千切りスライサーで3mmにカットする(地区によってサイズは異なる)。
③外気温が5℃前後の冬の寒い時期、霧島の寒風が吹く日に畑に木材を組んでその上にむしろを敷いてカットしたダイコンを広げ、日光と寒風で1~2日天日乾燥させて収穫する。

【おもな種類】

●ゆで干し大根

 ゆがき大根とも呼ばれる。長崎県の五島列島や西彼杵半島の西海市の特産品で、大蔵大根を太めの千切りにしてゆでて天日干しした製品。ソフトな食感と甘味があり、味、風味ともによく、保存性も高い。

●蒸し干し大根

 青首大根を蒸してから干した製品。ゆで干し大根同様、長崎県の五島列島や西彼杵半島の西海市で生産されている。

●花切り大根

 ダイコンを薄く銀杏形に切って干したもので、徳島県の特産品。

●割り干し大根

 ダイコンを太く縦に裂いて長く紐に吊るし、干した製品。岡山県では割り干し大根を小花切りにして、はりはり漬けなどに利用される。

●寒干し大根

 輪切りにしてゆでたダイコンを吊るし、干しあげた製品。寒い地域でのみ生産される。新潟県などでは薄い銀杏形に切って干したものを寒干し大根と呼んでいる。

●丸切り大根

 ダイコンを薄い輪切りにし、干した製品。西日本や瀬戸内などの特産品である。

●氷大根

 夜間氷点下になる地域で、縦に割るか輪切りにしたダイコンを軒下などに吊るし、凍らせて乾燥干しした製品。凍み大根とも呼ぶ。雪国独特の保存食品として、福島県や山形県、中部地方の山間部などでつくられている。

【栄養と機能性成分】

 生大根より水分が減った分、成分が凝縮されているので栄養価は高く、特にカルシウム、鉄分を多く含んでいる。また、現代人に不足気味の食物繊維、カリウムも豊富。乾燥によって独特の歯ごたえがうまれている。

【保存と利用方法】

 製造後長くおくと、褐色になってしまう。これは、ダイコンの成分であるアミノ酸(アルミノカルボニル)と糖が反応し酸化してしまうためである。梅雨時期や夏にかけて変質しやすいので家庭の冷蔵庫か冷凍庫などに保存する。また水戻ししたものをきつく絞って冷凍保存しておけば2ヶ月くらいはもつ。煮物も冷凍できる。切干し大根には独特の臭いがあるが、微生物が繁殖しているわけではなく、食べても害はない。

 干し大根は、水に軽く浸けるだけで簡単に戻る。ゆで干し大根や花切り大根は加熱してあるので、戻りも早く調理も簡単である。ほかの乾物とも相性がよく、一緒に煮炊きできる。干し大根に含まれる澱粉の甘味があるため、特にだし汁とあわせると汁のおいしさが増す。

2015年9月8日火曜日

干し薇

○干し薇(ほしぜんまい)

 ゼンマイ科のシダであるゼンマイの新芽を摘み取り、煮てから乾燥させた製品。雪解けの山間地ではいち早く芽を出す山菜として法事やおせちなどに人気があり、保存食としても利用される。得に山形県、福島県、新潟県、長野県産の製品が太くてやわらかいため良品とされている。

 ぜんまいは、わらびと同様、山菜の代表的食材で人気があるが、山から採って加工、乾燥と手間がかかるため、近年は国産が少なく中国からの輸入品が多い。ワラビは原林や平地に生えるため天然の収穫量は多いが、ゼンマイは山間地に生えるため天然の収穫量は少ない。人工栽培も行われているが、時間と手間がかかるため高価である。

【名 称】

 くるりと巻いた胞子葉が丸い銭のかたちに似ていることから、「ぜんまい」と呼ばれるようになったという説や、細いぜんまいを織物や手毬の芯に使ったことから「繊巻」と書くようになり、それがなまって「ぜんまい」になったという説などがある。

【生 態】

 おもに山形県、福島県などの東北地方や、新潟県、長野県などの雪国の山間地に自生する。四国地方は、気候の関係で成長が早いので細いものが多い。

【製造方法】

 国産のほとんどが天然物で人工栽培はごく少量である。山間地で人の手によって採られている。

①収穫後すぐに綿毛を取り、大きな鍋に入れてサッと煮る。
②急速に冷やしムシロに広げる。
③天日干ししながら手で何回も何回も揉み、水分をとばす。揉むことにより繊維質の部分がほぐれひねりが加わり独特の食感がうまれる。
④天日でよく乾燥する。

【おもな種類】

 乾燥の方法によって、赤干し、青干しに分けられる。赤干しの製造方法は前述の通り。青干しとは、ゆでたゼンマイを網に広げて薪や松葉を燃やした火にかざし、煙の上で揉みながら乾燥させた製品である。赤干しは天日干ししたもので、もっともおいしいとされている。

【栄養と機能性成分】

 赤血球の材料となる鉄分が豊富で、カロテン、ビタミンKが多い。最も期待できるのは食物繊維で、動脈硬化の予防が期待できるリグニンが含まれている。

【保存と利用方法】

 湿気を嫌うので缶や瓶に入れて保存する。調理する前日から水に浸して戻しておく。多めに戻したときは冷凍すれば数ヶ月は保存できる。利用する前には、大きめの鍋に入れ熱湯をたっぷり注ぎ、フタをして2~3時間おく。赤い水が出るので捨てる。こうすることであくが抜け、やわらかく戻る。

2015年9月3日木曜日

干し椎茸

○干し椎茸(ほししいたけ)

 マツタメ目キシメジ科に分類されるシイタケを干した製品(ヒラタケ科、ホウライタケ科、ツキヨタケ科、ハラタケ目キシメジ科という説もある)。干し椎茸は乾燥により生のシイタケよりも旨味が増すため、味や香りがよい。また、天日干しすることによって、エルゴステロールという物質がビタミンD2に変化し、栄養価も上がる。

 現在、中国での生産が盛んである。中国産の干し椎茸は、日本産にくらべ乾燥しており比重が軽く、香りも弱い。近年、不正に日本から持ち出された日本国内の優良品種の種駒(椎茸菌を培養した木片)で栽培されており、安価な輸入品が増えている。これに対し日本が2001年にセーフガードを発動するなど貿易摩擦が起きたこともある。

 生のシイタケは世界各地で親しまれており、英語、フランスなどでもそのまま日本語のshii-takeと呼ばれる。フランスでは生のシイタケが一般流通しており、比較的簡単に手に入る。近年ではオランダでも栽培するようになり、やはりshii-takeの名で販売されている。

【名 称】

 名前の由来は「椎の木に多く発生する茸」だといわれている。香りがよい菌ということでかつては「香茸」とも呼ばれていた。

【生 態】

 野生では、おもにナラ、カシ、シイ類などのブナ類の枯れ木に、春と秋に発生し、高地では夏に発生することも多い。短い円柱形の柄の先に傘を開く。枯れ木の側面に出ることも多く、その場合には柄が大きく曲がる。傘の表面は茶褐色で綿毛状の鱗片があり表面は白色で、細かい襞がある。

 子実体の発生時期は初夏と秋で、適温は10~25℃と幅があり菌株によって異なる。発生時期によって名称が異なり、冬の寒い時期に発生したものを寒子、春に発生したものを春子、秋に発生したものを秋子、梅雨に発生したものを梅雨子、藤の花の頃に発生したものを藤子と呼ぶ。

 シイタケは日本、中国、韓国などで食用に栽培されるほか、東南アジアの高山帯やニュージーランドにも分布する。日本では、大分県、徳島県、鳥取県、熊本県、宮崎県、群馬県、栃木、静岡県、長崎県、岩手県、秋田県などで栽培が盛んである。その中でも、干し椎茸の生産がとりわけ多いのは大分県と静岡県。

 中国では石膏賞、福建省・湖南省などを中心として全土で生産されている。シイタケは日本中どこでも生育可能だが、基本的な条件は次の通り。

①直射日光が当たらない場所。
②冷えすぎず、温まる場所(冬期や早春には木漏れ日が当たる場所を選ぶ)
③水はけがよい場所。
④通風のよい場所。

【栽培方法】

 次の2種類の栽培方法がある。

●原木栽培

 ナラ、クヌギなどの広葉樹を伐採して枯らしたものを原木として使用する。原木に穴を開けて種駒を打ち込み、適度に日の当たるスギ林や竹林に設置する。収穫時期は、種駒を打ち込んで2年半経ってから、原木が朽ち果てるまでの5~6年間である。毎年収穫できるが、3年目くらいがおいしいとされる。

●菌床栽培

 のこ屑にふすまや米糠などを混ぜてかためてから椎茸菌を植え、屋内で培養する方法。1990年(平成2)頃に開発された。5~6ヶ月で採取が可能で、温度、湿度の管理を人工的に調節することができるため、年間を通じて栽培することができる。

 菌床栽培が広まっているのは、原木の伐採や運搬に労力がかかるうえ、栽培期間の長い原木栽培に比べて手軽に栽培できるためである。しかし、菌床栽培で育った椎茸は原木栽培したものに比べて香りが乏しい。

【主な種類】

 シイタケは発生後、生長とともに大きく厚くなり、傘が開いていく。傘の開き具合によって呼び名が異なる。次にあげる冬菇、天白冬菇、香信、香冬、ばれ葉は傘の開き具合や育った環境が異なるのみで、厚木や菌、産地などは変わらない。

●冬菇

 七分開きにならないうちに採取したもの。気温が低くなる晩秋から早春にかけて育った秋子や寒子に多くみられる。肉厚椎茸。気温が低く乾燥した天候が続けば冬菇のまま大きくなる。

●天白冬菇

 冬菇の中でも、肉厚な傘の表面に白い亀裂が入っているもの。気温5~8℃、湿度35%以下の環境で、30日かけてゆっくりと育った冬菇。花が開いたように見えるため人気があり最高級品とされ花冬菇とも呼ばれる。

●香信

 傘が七分以上開いており肉厚なもの。2~5月に成長する春子に多い。気温が急に上がって雨が降ると、いっせいに傘が開いて香信になる。

●香菇

 七分開きになってから採取したもの。冬菇と香信の中間に位置する。肉厚で大ぶり。

●ばれ葉

 採取の遅れにより、傘が開きすぎて肉薄になったもの。気温が急に上がって雨が降ると、いっせいに傘が開いて香信になる。低価格で水戻しも早く、日常の料理に便利。

【製造方法】

 生シイタケは傷みやすいため、採取したらすぐに乾燥させる必要がある。乾燥は機械で人工的に行われている。少しでも水分があるとカビや虫が発生してしまうため、天日でゆっくり乾燥させているうちに傷んでしまう。そのため、江戸時代も天日ではなく炭火で乾燥させていたといわれている。

 現在は40~55℃で15~20時間かけて熱風乾燥したのち、遠赤外線乾燥機を使って内部温度を80℃にして仕上げる。「天日干し」の名で販売されている商品は、機械乾燥ののち、天日に1~3時間干した製品である。

【栄養と機能性成分】

 微生物の子実体であるキノコは、動植物にはない成分を含んでいることが多く、なかでもシイタケは特に多い。特に注目すべきなのは、エルゴステロールという成分である。

 エルゴステロールは、太陽光(紫外線)を受けるとシイタケの中でビタミンDに変わり、それを摂取するとカルシウムの腸からの吸収を促すといわれている。冬菇10個で、1日分のビタミンDの目安量がとれる。機械乾燥品は紫外線をあまり浴びていないのでビタミンDは期待できない。

 天日干ししたシイタケも空気にさらされることによって1ヵ月半ほど経つとビタミンDが半減してしまうという。しかし、利用する直前に傘の裏を上に向けて盆ざるなどに並べ天日干しすると、エルゴステロールがビタミンDに変化し、保存中に失われたビタミンDを回復することができる。生のシイタケを家庭で天日干しにしても同じ効果が得られるが、完全に乾燥させて干しシイタケを作るのは難しい。真夏の強い日差しに、乾燥した天候などの条件が揃ったところで数日干せばできるかもしれないが、乾燥する前に傷んでしまう可能性が高い。

 また、干し椎茸には100g中、41gもの食物繊維が含まれているので1枚(3g)5.5Kcalと低エネルギーである。食物繊維の大半は不溶性のセルロースやリグニンなどで、腸内の善玉細菌のエサとなってビタミンB2の生成を促し、免疫力を高める。

 そのほか、エリタデニンというシイタケ特有の成分があり、これは血中コレステロールを低下させる作用があるといわれている。加熱したり乾燥しても失われないが、干しシイタケを戻すとき、溶け出してしまうので、戻し汁も使うと摂取することができる。また、多糖類のひとつであるレンチナンも含んでいる。レンチナンは、がんなどの悪性腫瘍の発育を阻止する作用があるとされ、胃がんの治療薬に使われている。

【保存と利用方法】

 干し椎茸の賞味期限は約1年である。しかし、適切な環境で保存すれば2年ほどもつ。開封したら、湿気と直射日光を避け、密封できる容器に入れて冷暗所か冷蔵庫で保存すること。出し入れするときに湿気が入ってしまう可能性があるので、小さいパックにするとなおよい。ふくめ煮には冬菇だが薄切りにするなら香信でも十分。みじん切りにするならスライス製品でもよい。用途によって使い分ける。

 干し椎茸は水に浸けて戻してから調理する。芯までふっくら戻るまでにはひと晩かかる。戻している間に、栄養成分の上でも大きな変化がおきている。まず、シイタケに含まれている酵素が働き、香り成分であるレンチオニンと旨味成分のグアニル酸が生成される。そしてグルタミン酸、アラニンなど、旨味を増すアミノ酸がつくられる。急ぐ場合、電子レンジを使うとよいが、急激に加熱すると酵素の働きが失われてしまうため、香りや旨味が少なくなってしまう。

2015年9月1日火曜日

干し菊

○干し菊(ほしきく)

 食用キクの花の部分を蒸して海苔状にすいて乾燥した製品。菊海苔とも呼ばれる。現在食用とされているキクは60種。山形県では滋紅紫の「延命楽」、青森県では「阿房宮」という品種が生産されている。

【名 称】

 「延命楽」は「もってのほか」という通称でも親しまれる。

【生 態】

 青森県、岩手県、福島県、新潟県など東北北陸地方で栽培されており、青森県では主に「阿房宮」が生産されている。阿房宮という名前は、秦の始皇帝が長安北西に建立した宮殿の名前からとったもの。

 観賞用菊の「黄金球」からうまれた品種で、江戸時代に南部(青森県南部町)藩主が京都の九条家の庭に咲いている阿房宮を株分けし藩内に植えたのが、青森県での栽培の始まりだといわれている。南部町では10月中旬から霜の降りる11月中旬にかけて満開となり、収穫される。冷涼地で生産されたものは、特有の芳香、甘味、色彩が優れている。

【製造方法】

①キクの花を鎌で刈り取る。
②花びらをむしり、せいろの形に平均にならす。
③100℃近くの蒸気で蒸す。
④乾燥室に入れて約18時間乾燥する。

【主な種類】

 阿房宮は黄色の小輪種で八重咲きの品種。青森県、岩手県などが産地である。延命楽は明るい赤紫の中輪種で八重咲きの品種。山形県、新潟県などが産地である。

【栄養と機能性成分】

 食用キクはアルカリ性のため、コレステロールを除去するなど血液の流れをきれいにする作用がある。また、高血圧予防に効果があるといわれているカリウムも含んでいる。

【保存と利用方法】

 12月から春の彼岸頃が販売期であり、気温が高くなると変色し、虫がつくことがあるので乾燥した状態で保存する。さっと湯がくだけで鮮やかな彩りと味わいを取り戻す。酢の物はもちろん、大根なますとあわせて「菊なます」にしたり、刺身のつまの彩りとする。