2015年10月2日金曜日

石蓴

○石蓴(あおさ)

 アオサ科の緑藻であるアオサを乾燥させた製品。太平洋沿岸や朝鮮半島をはじめ日本各地の沿岸に生育している。ヒトエグサ、またはバンドウアオとも一般的に呼ばれている。食用にされることは少ないが、養殖もされており、三重県の伊勢志摩地域での生産量は市販製品の75%を占めている。沖縄県では「アーサ」とも呼ばれている。

【生 態】

 浅瀬の岩場に付着して成長し、海水に浮遊した状態でも育つ。穴の開いた円形の平たい海藻である。そのまま食用とするにはかたいが、大量に採取できるため、乾燥させて粉末状に加工して青粉、ふりかけ、海苔の佃煮の原料として利用されている。

 晩秋から初春にかけて採取されるが、特に3月頃が多い。大量繁殖し、沿岸に漂着したアオサは飼料などに利用される。三重県の伊勢志摩湾、千葉県の夷隅川、沖縄県などが主な産地である。

【栄養と機能性成分】

 βカロチン、ビタミンB2、葉酸、カリウム、マグネシウムなどが他の海藻同様に多い。

【保存と利用方法】

 湿気を吸湿しやすく、また、変色もしやすいので開封後は冷蔵庫保管が望ましい。特有の味と香りをもっているので、そのままお好み焼き、ふりかけ、海苔佃煮、酢の物、味噌汁などに利用される。

2015年10月1日木曜日

蕨粉

○蕨粉(わらびこ)

 山野に自生するイノモトソウ科のシダであるワラビの根からとった澱粉のこと。岩手県、秋田県、岐阜県、高知県の山間部でごく少量生産されたが、現在はほとんど生産されていない。和菓子のわらび餅などに使う。

2015年9月27日日曜日

レンズ豆

○レンズ豆

 マメ科の一年草であるヒラマメの種子を乾燥させた製品。中米や南ヨーロッパ、イタリア、西アジアなど、さまざまな地域からの輸入品が多く赤レンズ豆と青レンズ豆がある。インドのほか、世界各地でスープの中に入れるなどして日常的に食べられている。

2015年9月24日木曜日

餅とり粉

○餅とり粉

 コーンスターチ、小麦粉澱粉、片栗粉などの澱粉を混合した製品。餅つきをするときなどに、餅が手につかないようにするために使う。

2015年9月22日火曜日

麦焦し

○麦焦し(むぎこがし)

 イネ科の越年草であるオオムギを煎ってから粉にした製品。関西では裸ムギで製造する。地域によって異なる呼び名があり、関西では「はったい粉」、日本海側では「こうせん」などと呼ぶ。砂糖を加えたそのまま食べたり、水またはお湯で練って食べる。

2015年9月16日水曜日

干し湯葉

○干し湯葉(ほしゆば)

 投入を煮立て、表面にできる薄い膜をすくいとったのが生湯葉で、乾燥させた製品が干し湯葉である。湯葉の歴史は古く、いまから1200年前、最澄が中国から持ち帰ったといわれている。

 日本に最初に湯葉が伝わったのは京都の比叡山の天台宗総本山延暦寺で、精進料理の材料として使われ、坊さんにとても好まれた。江戸時代の文献「豆腐百珍」(1782年)には湯葉料理が記載されており、いろいろな種類が作られ一般庶民にも広まった、とある。

 保存性が高く、精進料理や会席料理ならではの食材として大豆加工品の中でも最高級品である。近年は和食だけでなく、洋食などにも健康的な食材として利用されている。

【名 称】

 豆乳の表面がしわになり姥の顔に似ているので「うば」と呼ばれた。また、豆腐の「うわもの」の音が濁って「ゆば」になった、ともいわれている。

【製造方法】

①ダイズをひと晩水に浸けて戻す。
②水を注ぎながら挽く。
③大釜で煮て、布でこして豆乳を作る。
④深さ5~10cmくらいの木枠で仕切った鍋に移し、微調整された火にかけ熱を加えて、じっくりと皮膜を作り上げる。
⑤皮膜を竹串でそっと引き上げる。引き上げは湯葉の張り具合や火加減を見ながら、早からず遅からず絶妙なタイミングで1枚1枚ていねいにそっと引き上げる。職人技である。
⑥半乾燥のところを切り、成形してから温風乾燥する。

【主な種類】

 干し湯葉には、さまざまな形に加工した製品があり、以下に紹介する製品のほかにも、小巻湯葉、結び湯葉、竹湯葉、平湯葉などがある。

●大原木湯葉

 真ん中を昆布で結んだ京湯葉。湯葉と湯葉の間にだしがしみこんで旨味をひきだす。

●巻き湯葉

 湯葉を幾重にもまいてつくる。水分を含むと広がってボリューム感が出る。

●蝶々湯葉

 蝶々のようなかたちに成形した湯葉。料理の華添えになる。

●京湯葉

 京都周辺で生産される湯葉。仕上がりが平たいので板湯葉として多く加工され、寺院、京料理店や土産物として販売されている。

●日光湯葉

 日光周辺で生産される湯葉。京都で作られていた湯葉は、日光開山のときに修験者たちによって日光に持ち込まれ、その消化吸収と豊富な栄養から、貴重なタンパク源として江戸時代に二社一寺に供え物として納められたという。日光湯葉は「湯波」と書くことが多い。

【栄養と機能性成分】

 湯葉は、豆乳からつくるので大豆加工品と同じ栄養価があり、消化吸収がよく少量でも栄養価が高い。鉄分のほか、亜鉛、カリウム、ミネラルなどが豊富で子供や高齢者の栄養補給に適している。

【保存と利用方法】

 常温で3ヶ月くらいを目安に保存する。強い紫外線に当たると酸化してしまうので、冷暗所で保管する。乾燥したままお吸い物に直接入れたり、弱火でゆっくり火をとおせばよい。その際、湯葉が吸う分、煮汁をやや多めにする。強火で火をとおすと身がかたくなるので注意する。

2015年9月15日火曜日

干し大根

○干し大根(ほしだいこん)

 アブラナ科の二年草であるダイコンを千切り、あるいは薄切りにして乾燥させた製品。冬場につくり、冬の生野菜が不足する時期が最需要期となる。保存食として長年親しまれている製品で、北から南まで日本各地でつくられており、地方独特の作り方や食べ方がある。秋の台風や気候条件で生産量が大きく変わるため、年間の価格が大きく相場に反映される製品である。

 干し大根の中でも全国的に流通しているのは切り干し大根である。生産の中心は千葉県、愛知県の渥美半島、宮崎県と移動し、それにともない干し大根にむく青首大根も移植されてきた。切り干し大根は、江戸時代初期に凶作対策として開発された保存食であった。現在市販されているものは、宮崎県産が全体の90%を占めている。

【名 称】

 切り干し大根と関東地方では呼ぶが、千切り大根と呼ぶ地方もある。地方によって呼び名が異なる。

【生 態】

 大根は3世紀頃、中国から朝鮮半島を経て日本に持ち込まれたといわれている。中国の大根は大型で水分の多い華南系と、皮に色があり澱粉質が多く耐寒性のある華北系がある。この2系統とも日本に伝来し、時代とともに交雑が進み各地区の気候風土に合うさまざまな品種が誕生した。

 その中でも、干し大根に向くのは青首大根である。華北系の子孫であった愛知県の宮重大根を改良した品種であり、成長が早く病気に強い。また、澱粉質が多く水分が少なく、大根に鬆が入りにくいことから乾物加工に最適な品種である。乾物に加工する前の年の秋(8月後半~9月上旬)に畑を整地し、青首大根の種をまき、12月下旬~2月中旬頃に収穫する。

 宮崎県の北部地区、国富、西部、綾町、新富、宮崎市、尾鈴などで約80%生産されており、田野町、清武、木花地区でも約20%生産されている。山間部でも作付されているが、特に北部地区は平野部であるため作付面積が広く、風が強いため異物の混入が少ない。

 南部地区は切り干し大根以外につぼ漬大根も生産しており、材料であるダイコンの質が高いため干し大根の品質もよい。また、北部地区より約5℃前後気温が低いため乾燥作業の効率がよく、色が白く仕上がりダイコンの旨味が表面に出にくいため、よいものができる。

【製造方法】

 宮崎県で行われている天日干しの製造方法は次の通り。

①収穫したダイコンを洗い、青首と尾をカットする。
②千切りスライサーで3mmにカットする(地区によってサイズは異なる)。
③外気温が5℃前後の冬の寒い時期、霧島の寒風が吹く日に畑に木材を組んでその上にむしろを敷いてカットしたダイコンを広げ、日光と寒風で1~2日天日乾燥させて収穫する。

【おもな種類】

●ゆで干し大根

 ゆがき大根とも呼ばれる。長崎県の五島列島や西彼杵半島の西海市の特産品で、大蔵大根を太めの千切りにしてゆでて天日干しした製品。ソフトな食感と甘味があり、味、風味ともによく、保存性も高い。

●蒸し干し大根

 青首大根を蒸してから干した製品。ゆで干し大根同様、長崎県の五島列島や西彼杵半島の西海市で生産されている。

●花切り大根

 ダイコンを薄く銀杏形に切って干したもので、徳島県の特産品。

●割り干し大根

 ダイコンを太く縦に裂いて長く紐に吊るし、干した製品。岡山県では割り干し大根を小花切りにして、はりはり漬けなどに利用される。

●寒干し大根

 輪切りにしてゆでたダイコンを吊るし、干しあげた製品。寒い地域でのみ生産される。新潟県などでは薄い銀杏形に切って干したものを寒干し大根と呼んでいる。

●丸切り大根

 ダイコンを薄い輪切りにし、干した製品。西日本や瀬戸内などの特産品である。

●氷大根

 夜間氷点下になる地域で、縦に割るか輪切りにしたダイコンを軒下などに吊るし、凍らせて乾燥干しした製品。凍み大根とも呼ぶ。雪国独特の保存食品として、福島県や山形県、中部地方の山間部などでつくられている。

【栄養と機能性成分】

 生大根より水分が減った分、成分が凝縮されているので栄養価は高く、特にカルシウム、鉄分を多く含んでいる。また、現代人に不足気味の食物繊維、カリウムも豊富。乾燥によって独特の歯ごたえがうまれている。

【保存と利用方法】

 製造後長くおくと、褐色になってしまう。これは、ダイコンの成分であるアミノ酸(アルミノカルボニル)と糖が反応し酸化してしまうためである。梅雨時期や夏にかけて変質しやすいので家庭の冷蔵庫か冷凍庫などに保存する。また水戻ししたものをきつく絞って冷凍保存しておけば2ヶ月くらいはもつ。煮物も冷凍できる。切干し大根には独特の臭いがあるが、微生物が繁殖しているわけではなく、食べても害はない。

 干し大根は、水に軽く浸けるだけで簡単に戻る。ゆで干し大根や花切り大根は加熱してあるので、戻りも早く調理も簡単である。ほかの乾物とも相性がよく、一緒に煮炊きできる。干し大根に含まれる澱粉の甘味があるため、特にだし汁とあわせると汁のおいしさが増す。